鍋を家族で囲んで
冬が近づき、寒さが厳しくなってくると食べたくなるのが鍋料理である。我が家も先日、この冬最初の鍋料理を食べたのだが、何鍋にするか迷うのであった。シンプルに水炊きにするか、オーソドックスの鳥だしか、はたまた豪華にすき焼きにするか。ご当地鍋もあるのだから、種類のバリエーションも多い。
普段から献立を考えるのが大変だと言う嫁は、この日もこんな事をもらす。
「アナタ達、何鍋が食べたいの?」
すると子供達は、素っ気なくこう回答するのだ。
「お母さんに任せるよ!」
すると、「一番困るのよねー」とすかさず答える嫁、その矛先を夫の僕へと向ける。家族から今夜の献立のプレッシャーを感じつつ、僕は笑いを取りに言った。
「ヤミ鍋!」
険悪なムードを和ませようと、僕の口から解き放たれた言葉はあっさり蹴散らされ、更に最悪な雰囲気になってしまったのだ。まさに〝身から出た錆〟とはこの事である。僕は必死になり、今度は真面目に本当に食べたい物を答えた。
「しゃぶしゃぶ」と・・・
すると今度は財布の加減で即却下されたのだ。食べ盛りの子供ふたりいる家庭に、しゃぶしゃぶはお肉が幾らあっても足りない。しかし父親の威厳もあるので、僕は牛しゃぶではなく豚しゃぶを提案し、嫁の反応を探ってみた。そしてこう言ってみたのだ。
「父親の威厳を鍋で示したい。豚ではあるが・・・」
泣きの声とも言える僕のお願いを観た子供達も、嫁にこう言った。
「父ちゃん、普段は頼りないけど。たまにはいいところもアルよな」
子供からの一声に母ちゃんもしてやられ、僕の威厳はなんとか保つことが出来たのだ。こうして平和に夕食にありつけるのも毎日、夕食を作ってくれる嫁と、支えてくれる子供達のおかげだと言うことを忘れず、今日も美味しい晩御飯が食べられそうだ。
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