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ドラマ『それでも愛を誓いますか?』初回感想/セックスレス5年目、30代夫婦のリアル

“求められている女”と
“求められていない女”は違う———

結婚歴8年、子どもなし、セックスレス5年目。
何かを変えるために8年ぶりに再就職して働きはじめた純(松本まりか)。
その夜に勇気を出して武頼(池内博之)を求めるが優しく拒絶され…

原作は未読ながら、ドラマは見始めたらあっという間に時間が過ぎた。え、もう終わりなの?ってぐらい。

前述したあらすじの通り、見る人の置かれた立場によって感想は変わってくるかもしれない。

僕も少し身につまされるところがあった。リアルだなぁって。心当たりのある夫婦なんかは見たほうが絶対いいと思う反面、そんな夫婦が2人揃ってこれを一緒に見るのは難しいだろうとも思う。

でもそれがリアルなんだよね。生々しさの正体はいつも他人事ではない心当たりのことだから。

「家庭でしよ、2人だって」
「背中見てたらわかるよ」

この辺のセリフが印象に残った。

拒絶の仕方も優しいのがまた切ない。

わかろうとしなくてもわかってしまうこと、わかりたいのにどうしたってわかり合えない溝、長い付き合いにおいてはそのどちらも存在してくる。見て見ぬフリの数が増え、気付かないフリが上手くなり、口を噤んだ先に出る笑顔は果たして誰のなにを守るための笑顔なのだろうか。

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少しずつ諦めることを重ねて、夢見た理想はいつの間にやら惰性を含んだ現実へと塗り替わる。

そんな夫婦の形が世の中にはたくさんあるのかもしれない。けれど総じてそれを不幸だとか歪だとか妥協だとかって決めつけることもしたくはない。当人たちにしか分からない内実というのが必ずあるから。

ドラマの主人公・純は葛藤の末にどんな形を見せてくれるだろう。何に惑い、何を選びとるのだろう。 

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松本まりかのナチュラルなお芝居がとても見やすい。詫びしさを抱えた家庭での場面と、適度な緊張感を持った職場での場面、気負いのバランスがちょうどいい。ヒステリックなお芝居をいくらでも上手くやれる彼女の、抑えた演技がテーマやシチュエーションをいっそう引き立たせている。

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純が新たな職場で出会ったのは真山(藤原季節)という少し偏屈で、思ったことを遠慮せず口にする歳下の男。清野とおるかってぐらい常にマスクをしていてまだ謎めいている。

最初から可愛げがあって人懐っこさのある後輩クン!って感じのキャラクターでないのが良い。そのてのキャラがすぐ純に惹かれるような描写があったら一気に既視感が出てしまう。彼も理由があってあんなふうに偏屈になったのか、何をキッカケに純に惹かれていくのか、興味が尽きない。

個人的にはこの藤原季節のキャスティングが最高だと思った。彼の存在感や雰囲気が作品を安っぽくさせないし、先の読めない掴みどころのなさを担保してくれる。

初めて彼を知ったのは映画『止められるか、俺たちを』だった。カリスマ性のある印象で「誰なんだこの俳優、知らないぞ」と驚いたのを憶えている。かつて松本まりかがお世話になった松田美由紀の事務所に所属する俳優だと知り、その唯一無二のオーラに納得した。松本まりかとの共演にはそんなご縁や意味があってまた素敵だと思った。

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ドラマ公式Twitterが載せてたこのツーショット写真めちゃくちゃ好き

2人の関係性がどのように発展していくのか気になる。ドラマ全体のトーンも落ち着きがあり、役者のアップのカットを仰々しく挟むようなこともせず遠目の画角で捉えるカメラ割りとかもけっこう好き。音楽もいい。

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前クールではテレビ東京の門脇麦主演『うきわ-友達以上不倫未満-』という多少近しいテーマのドラマがあった。あれもテーマのわりに無駄にドロドロせず、淡々とするところは淡々とし、夫婦ならではの葛藤とその先に導き出した答えに最後まで目が離せない傑作ドラマだった。

本作も期待しながら今後を楽しみたい。


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