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2/11 ストップ・メイキング・センス

最の高。

また見ちゃった。でも、これは4Kリストアなので、許して。
初めて見た時、この伝説のライブ映画の冒頭が、背景も雑然としていて、不安を覚えたものだ。ダンボールとか箱とかハシゴとかが置いてあって、ライブやる雰囲気でもない。細身のイケメンがギター一本持って歌い出す。ふぁふぁふぁふぁーふぁふぁふぁふぁふぁーふぁーべらー。ああ、知ってる、サイコキラーだ。しかし、こんな始まりでええのんか、と思ったものだ。
そこから徐々に盛り上がりを見せる。最初のクライマックスは、バーニング・ダウン・ザ・ハウス。家を燃やせ。家を燃やせ!!!家を!!!燃やせ!!!!

歌詞の意味は大概分からない。何か示唆していそうな雰囲気はあるのだが、詩的な婉曲に、意味を掴みかねる。それでも圧倒的パフォーマンスに、興奮せざるを得ない。
もうひとつのクライマックスは、Once in a lifetimeだ。自分があるところに住んで、美しい妻と住んで、時は流れていく、と歌ったその口で、唐突に、you may tell yourself, "this is not my beautiful wife"と歌う。はーーーー??????
ずっと我々はデヴィッド・バーンの書く歌詞の意味の分からなさに困惑しながら、その音楽的センスの良さに頭をヤラれる。

あと独特なファッションセンス


トーキング・ヘッズというバンドは、いわゆるニューウェーブと呼ばれるムーブメントの代表格と言われるが、では、ニューウェーブとは何だったのかというと、いまいちよく分からない。70年代に進歩的なロックと呼ばれるプログレッシブ・ロックがあった。これはインテリの参入とも言えるもので、既存のロックの既成概念であった、1曲数分で、楽器はギターとベースとドラムで、ボーカルが中心にいて、表紙は四拍子で、といった常識を覆すものだった。全部逆を行く。それが飽きられ、パンクという真逆の、単純で衝動的なムーブメントが出てきた後に、改めて、そのどちらでもない音楽性が70年代後半から80年代にかけて流行った。パンクほど暴力的でも単純でもなく、パフォーマンス性があり、とはいえプログレほど衒学的でもなく、それでいてリベラルな当時の風潮が、アフリカンビートや電子音楽をロックに引き込み、畢竟、インテリが大衆にも迎合しながら復権となった。結局、様々な作風の集合体に過ぎない。わたしはインテリなので、ニューウェーブがパンクよりも好みだし、ニューウェーブよりもプログレが好みである。
ちなみにトーキング・ヘッズは、その時代の寵児だが、その背後にいたのはブライアン・イーノである。プログレの時代、デヴィッド・ボウイと同様にグラム・ロックの枠で活躍し、電子音楽と融合してアンビエントなるジャンルの音楽を作り上げた創始者である。静かなクラシックとポップミュージックを融合させたような音楽は、いまだにインテリが好み続けている。結局唾棄された70年代の薫りが引き続き漂い続けた。
シアトリカルで、でもかっちょよくて、アフリカンビートに基づいたダンサブルで、イケメンで、ロックだ。
映像はジョナサン・デミ。あの当時、トーキング・ヘッズのファンだったのが、わざわざライブを撮りに行き、スタイリッシュに、とにかく魅せる。普通にこの撮り方したら、いまのアイドル好きからしたら怒るんじゃないか、という奇特なショットが盛りだくさんだ。
新文芸坐は馬鹿なので、これで強制スタンディングをやる。馬鹿(褒めてる)

★5


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