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読むラジオ「再会と雑談」#1.私が旅に出る理由

人との再会と雑談を通し、お互いの「今」の輪郭を探っていく記録です。

2022年9月15日PM16:05〜 
@かもめブックス(神楽坂)

風音(26):長野市在住2年目。ゲストハウスで働くうちにぬるっとフリーライターに。

みすず(25):新卒で入社した会社の同期。同時期に退職し、現在はリゾートバイトをしつつ国内を旅して回っている。

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みすず:ちょっと、このコーヒーすごいよ、飲んでみて。本当にビターチョコの味がする。

風音:私のはハイビスカスだよ。飲む? ん、おいしいね。私さ、最近やっとコーヒー飲めるようになってきたんだよね。

みすず:私、昔はコーヒー飲めなかった話したことあったっけ?

風音:そうなの? いつもブラック飲んでない?

みすず:大学生になるまで、コーヒー牛乳すら苦いと思ってたの。でも、ある日突然ブラックデビュー! 飛び級な女!

風音:(笑)

みすず:ていうか当時好きだった人がブラック飲んでたから、「あ、私もブラックで」とか言っちゃって。

風音:かわいい話じゃん。

みすず:そこからずっとブラックだよ。それにしてもさぁ、外に出れば出るほど、いろんな人がいるよね。風音ちゃんだってさ、外から見たらただ座ってコーヒー飲んでる人じゃん。けどさ、ちゃんとライターやってる一面もあってさ人は見かけによらないって思うよ。

風音:それ、ほんとに思うよ! それこそ私がインタビューをやり続けてるのは、「一見コーヒー飲んでる人」のもうちょっと先の、「キラキラしてていいなぁ」って流しちゃいそうになる人を、流さないためなの。

みすず:話すとわかることってあるよね。

風音:同年代でスキルがあって稼いでいるように「見える」、生まれ持った才能があるように「見える」、若いのに活躍しているように「見える」……。そういう人たちと、自分の間に線を引かないためにインタビューをしてる。

みすず:もともと風音ちゃんって線を引く人ではなくない? なんかさ、「いいなぁ」とはいうけど、勝手に羨ましがって終わらないというか。「人は人」ってスタンスじゃない? 

風音:人には人の人生と選択だよね。それを無限に確認したい。

みすず:飽きないよね、100人いれば100通りの人生があるからね。

風音:その人が「当たり前」だと思ってることが、他の人からしたらすごいことだったり面白かったりするわけじゃん。でも、人って結局自分しか見えないからそれがわからないんだよ。

みすず:風音ちゃんに取材される人、うれしいだろうね。みんな「いや私なんて」ってどっかしらで思ってるじゃん。でも風音ちゃんがそれをピックアップして、記事に書いて、ってすると、他人からのアウトプットになる。自分って外からはこう見えてるんだって客観視できる。すごくいいことだと思う。

風音:インタビューの仕事をしてるとね、「つまらない」人とか、「ふつう」の人っていないと思うの。そう思うのは、たぶん聞き手の問題。こっちの態度が悪くて話してくれなかったのかもしれないし。

みすず:「私はなんにもないから」って人、いるじゃん。でもさ、ちゃんと話をすると、しっかりしてるよね。

風音:ね。合う合わないはあるかもしれないけど、「つまらない」人なんていないんだよ。見えてない面があるだけ。

みすず:ちょっと違う話かもしれないけどさ、最近、友だちが新しい恋人を紹介してくれたの。その人がね、私の友だちに対して「この子の取扱説明書がほしい」って言ったの。

風音:取扱説明書?

みすず:そう。私から見えてるその友だちはね、めちゃくちゃわかりやすいし、嘘も言わないしはっきりしてるの。取扱説明書なんかいらないじゃん、って思ったんだけど、彼女の恋人が見てる友だちと、私が見てる友だちって全然違うんだなって。

風音:なるほどなぁ。

みすず:私が見てる風音ちゃんと、別の友だちが見てる風音ちゃんも、絶対に違うよね。同じ人間を見ているようで、見ているところは違うんだよ。

風音:私が、なるべく関わる人を増やすなり変えるなりしたほうがいいなって思うのはそれかも。コミュニティーが変わると、見られ方も変わるしできることが変わるよね。「自分らしさ」って言葉、みんな好きじゃん? でも、そんなものって実はないよね。

みすず:人間は決して平面じゃないから、いろんな顔がある。相手によって変わる部分は絶対あるよね。

風音:他者との関わりの中でしか、「自分」なんて生まれないんだよね。

みすず:だから、私はいろんなところに身を置きたいんだと思う。

風音:なるほどなぁ。私がTinderを好きなのは、それもあるかも。前情報ゼロで、私のことを全く知らない人と出会うことで、新しい自分に出会いたいの。

みすず:そうなの、私が旅に出たい理由もそれなの。いろんな人に会いたい。別に友だちになれなくてもいいんだけどね、いろんな人の話を聞きたい。人の話を聞くことって、映画っぽいよね。人の話を聞くことで、それが自分の身にもなっていくというか、その人の人生を歩んだ気になる。

風音:映画か、たしかになぁ。

みすず:だから私は、旅行とかでどっかに行っても、「場所」じゃないんだよね。大事なのはそこにいる「人」じゃん。

風音:私もそう思うよ。

みすず:福井の小浜に一人旅したときもそう。私、小浜では海辺で本を読んでただけで何もしてないんだよ。でも、ゲストハウスでオーナーと喋って、小浜好きだなって思ったの。「人」を大事にしたいよね。

風音:本当にそう。この間ね、私のインスタを見て青森から会いに来てくれた子がいたんだよ。せっかく来てくれたから、いろんな人を呼んで、いろんな人に紹介したの。

みすず:あらー、いいね。うれしいね。

風音:「長野来てよかった!」って帰って行ったけど、それもただ長野に来て観光だけしてたら全然違うよね。私とか、他の長野の人と出会ったからこその、「長野来てよかった」なんだよ。

みすず:「長野」が良かったわけじゃないんだよね。

風音:そうそう。人だよね。その子がきた時にさ、人を巻き込むのも一つの力だよねって話をしたの。

みすず:風音ちゃんさ、人を頼るのが上手だよね。すごいなぁって思うもん。

風音:ふふ、なんなんだろうね。適材適所の方が良くない? とは思ってる。

みすず:いい意味で、「自分一人じゃできない」ってわかってるのかもね。

風音:そうかもしれない。自分のことを信用してない。

みすず:頼り頼られっていうのが、ちゃんとわかってる。面によってはそれがよく転ぶし、悪く転ぶこともあるだろうけど。

風音:適材適所で言ったらね、私は写真があんまり得意じゃないんだよ。でも仕事によっては写真の撮影とか選定もやらなきゃいけなくて。もっと写真がうまい人に頼めるくらい、財力を持ちたいなぁと思う。

みすず:写真といえばさ、タケバちゃんの写真集が届いた! ちゃんと読んだら感想言おうと思ってるんだ。「良かった」を、自分で止めてちゃいけないの。回していかないと。良いものは、お金を回して応援しなきゃいけないし、良いと思ったら伝えていかないと世の中が回らない。

風音:ほんとに大事だよね。声に出さないといけないし、動いて、回さないといけない。

みすず:よくあるじゃん、コロナでお店が潰れるってなった途端、あとからみんな「好きでした、もっと行きたかった」っていうんだよ。たいして行ってもなかったくせにさ、あとだしジャンケンなの。

風音:私がゲストハウスの仕事やめるってなった途端、そんなに来てなかった人ほど「かなしい、行けば良かった」って言うんだろうなーって思うよ。

みすず:(笑)

風音:じゃあくれば良かったじゃん、って話だよね。会いたい人には会いたいうちにさ。いつでも会えるって思ってちゃいけない。

みすず:その時その時に、ちゃんと伝えないといけないし、会いに行かなきゃ。自分の中で止めてちゃいけないの。

風音:さっき話した青森から会いに来てくれた子はさ、「伝えて」くれた子なんだよ。私が、春くらいに会ったこともないフォロワーに粘着されて攻撃されて凹んでた時に、「もうインスタやめちゃおうかな」ってストーリーあげたら、「いつも青森から見てます、絶対バイト代貯めて長野まで会いにいくので、それまでやめないでください」って長文のメッセージくれたの。それでほんとに夏休みに会いに来てくれてさ。

みすず:へー!

風音:その子もさ、私みたいにストーリーをいっぱいあげる子なんだよ。それで、実際に会ってもたくさん喋るの。だから、周りの人に「わかった」気になられてなめられるんだって。

みすず:あー! なるほどね。

風音:それで、私もいろいろインスタに載せてるじゃん? 出してもいいんだ! って思ったらしいの。でもさ、その子もそうだと思うけど、どの面を出すかは選んでるじゃない?

みすず:そりゃそうだよ。

風音:なのに、それがわからない人は私のことを理解した気になるんだよね。確かに私はいろいろ書いて頻繁にインスタを更新してるけど、付き合いの長いみすずちゃんからしたらあんなの私のほんの一部でしかないってわかるでしょう?

みすず:全部出してるわけないじゃんね。

風音:選んでるよね、いろんな出来事の中で、出せる面を選んでる。

みすず:風音ちゃんがよくいうあれ好きだよ、「想像力が足りてないんじゃない?」ってやつ。

風音:それだ。浅いんだよね。私のインスタのストーリーなんて、「そういう芸風」をやってるだけなんだよ。まぁそもそもなんのためにそういう芸風をやってるんだ? って話になってきちゃうけど。

みすず:それはさ、ふるいにかけてるんじゃない? その程度の開示で、わかった気になる人を切るためのふるい。そういう人が出てきたら、蹴散らしていけばいいじゃん。

風音:そう、そうなの。「舐められた時、どうしてますか?」って青森の子に聞かれたの。私は、「この人、この程度で私のことわかった気になってるんだ、あはは、バイバイ」って思うことにしてるって答えたの。そもそも、人との会話を切り取ってるだけで私自身のことあんまり載せてないしね。

みすず:見てて思うよ。伏せてるよね、自分のことは。

風音:でもさ、なんで発信するのかって難しいよね。日記的な意味合いもあるのかも。私が生きて、こういうことを考えていたよっていう証拠。だって忘れちゃうもん。

みすず:残すって大事だよね。

風音:あとは、どうせなにを発信したって伝わらないじゃん?

みすず:うん、伝わらないよ。

風音:わかってほしいとは微塵と思ってないの。私の文章を読んだところで、私以外の人にはなにも伝わらない。伝わらないと思ってるからこそ、出せる。そうやって、どうせ誰もわかんない、って諦めながら出すことで、わかりはしなくてもなにかしら響く人はいるんだよね。なぜか共鳴して、会いにきてくれる人がいる。そして仲良くなれたりする。

みすず:その旨味があるからやってるだけだよね。

風音:そう、そっちが大事かも。そしてやっぱり、「いいな」って思って、実際に会って話さないとわからないことがさらにある。

みすず:伝え方と伝わり方かぁ。人のこと、全部受け入れなくて良いと思うんだよね。無理だよ。別に見たくないところは見なくて良いし、見せなくていい。

風音:どれだけ仲が良くても、全部を全部話すわけじゃないもんね。

みすず:別に話せなくはないんだよ。でも、あえて話してないことは絶対にある。私と風音ちゃんだってさ、隠し事はないし、話せないこともないけど、でも話していないことだってあるじゃん。

風音:あるある。親友だと思ってるけど、あなたのこと全部わかってるだなんて思わないもん。私さ、「風音ちゃんは〇〇だよね」とか「甘えて良いよ」とか「なんでも話して」とか言ってくる人のこと嫌いなんだよね。わかった顔されるのが嫌なのかも。

みすず:あ〜嫌い! めっちゃわかるそれ。

風音:「甘え」ってなんなんだろうね。わかりやすいベタベタした甘えを期待しているのかもしれないけど、そうじゃないじゃん? 私の「甘える」って、たぶん「黙る」じゃん。喋らなくなるよね。

みすず:うんうん、風音ちゃんは甘えたい時、考えるのをやめるよね。

風音:前に二人で松本のゲストハウスに泊まった時さ、ラウンジで他のお客さんたちと喋ってる中で、私が何も喋らなくなったじゃん。

みすず:あったね(笑)

風音:「お友だち、静かになっちゃったけど大丈夫?」って聞かれたみすずちゃんが、「この子こうなんです。こうなったら放っておくの」って答えたの聞いて、あぁ甘えさせてもらってるなって思った。

みすず:……ねぇ、全然違う話していい?

風音:いいよ(笑)

みすず:この間パパと久しぶりに会ってね、北風と太陽の話をしたの。うちの家は、ママが完全に北風で、パパは太陽なんだ。それでね、パパが言ってたのが、ママはガミガミ言って私を縛ろって言うことを聞かせようとするけど、どう考えたって、私は押されれば押されるほど引いていくんだから、言わなきゃいいのにねって。

風音:なるほどね。

みすず:親子じゃなくて、上司と部下でも恋人同士でも、どんな関係性だってそう。だいたい、押せば押すほど引いていっちゃうものなんだから、見守るしかないんだよ。でも、頼られた時は全力でサポートする。そのスタンスじゃないと関係は続かないよねって。でも、うちのママと妹はね、そんなパパのことをなんて言ったと思う?

風音:なに?

みすず:「人に興味ないよね」って。

風音:そういう捉え方するのか。

みすず:仕事辞めてリゾバしてたこと、話してなかったんだ。でも、ふと時間ができた時に、パパに会いに行こうと思って連絡して、いろいろ話すの。パパは、私が何言ったって聞かないのわかってるからなにも言ってこないの。でもそれはさ、パパが私に興味がないから聞かないわけじゃないじゃない?

風音:違うよね。

みすず:もちろん、心配は心配なんだって。でも、待っていれば向こうからくるから待ってるんだって。待てるって、すごいよね。

風音:うちもさ、お父さんがわりと放任主義でね。前提として、「子供は親の所有物ではない、それぞれ個人の人生」っていうのがあるんだよね。でも、私は長い間それを「お父さんは私に興味がないんだ」って思ってたの。

みすず:あぁ、それ前にも言ってたね。

風音:そうじゃないってわかったのはほんとうに最近なの。お父さんにさ、私が書いた記事を送るとすっごい長文の感想を送ってくれるんだ。興味ない人がそんなことするはずないんだよね。愛情の示し方とか、興味の示し方って難しいよね。

みすず:難しいね。

風音:私はあんまり人に興味がないがゆえに干渉しないし、だいたいのことを肯定するから「優しい」って言われたりするけど、それは優しさなのか? とかね。たしかに、寛容さと無関心って紙一重だよね。

みすず:優しさもね、難しいよ。でも、北風と太陽なら太陽になりたいよ。寛容でありたい。それから、手放しに人のこと羨む人にはなりたくないね。

風音:ほんとにね。そのためには余裕が必要だね。

みすず:うーん、こうやってさ、色々と思うことはあるけど、もっかい生まれるなら自分の人生がいいよね。そう思わない? 私は絶対に私の人生がいい。

風音:わかるよ。どっかに戻ってやりなおしたい、とかもないよね。下手にやりなおしてしまったらさ、「今」がないかもしれないじゃん。私たちも出会えなかったかもしれない。

みすず:ほんとうにね、そう思う。何一つ、無駄なことなんてない。全部大事。嫌なことも、大泣きしたことも、そりゃたくさんたくさんあるんだけどさ、それがなかったら「今」がないのもわかるしさ。

風音:バタフライエフェクトだよね。どこかがずれたら出会えなかった人ばっかりだよ。

みすず:どこかで交わってたかもしれないけど、違う道を歩んでいたかもしれないし。出会った人、みんなありがとう! って感じ。本当にね、後悔はしていない。しているのかもしれないけど、やりなおしたいなーとかはないの。

風音:後悔してもしょうがないもんね。自分で選んできたんだもん。いやぁ、いろいろ話したな。こうやって久々に会って二人で話してるとさ、なんか変な感じしない? 

みすず:わかるよ。ここどこ? って感じする。東京じゃなくて、パリかもよ。ニューヨークかも。

風音:(笑)。そろそろ行く? 地下鉄乗るか、歩くか、どうしよっか。

みすず:歩こう。一駅分でしょ? 坂道下ってこうよ。もうさ、空気が秋だね。風が気持ちいいよ。




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