懲役ダイアリー 2017年8月30日水曜日 『刑務所で富士登山』
本日37歳になりました。おめでとう自分。マイのバースデー。
大好きな芸人さん、出川哲朗さんならこうやって自分の誕生日に自分に向けておめでとうの言葉を贈るのだろうな。
刑務所で迎える初めてのバースデー。昨年は東京拘置所の独居房で迎えた。満期出所ならあと4回刑務所でバースデーを迎えることになる。東京オリンピックも見られない。あと4年・・・長いな。
でもそんなことは言ってられない。37歳の一年も後悔することのないようにバンバン目標を達成させていく。そして自分にとっても待っててくれている家族にとっても良い一年になるように生きて行く。
それにしても今日は早起きをしてしまった。まだ明るくなる前に起きてしまったから体感では5時くらいなのかな。
まるで子供の頃に歌った、南の島のハメハメハ大王みたいと一瞬思ったけど、彼は朝日の後に起きてきて夕日の前に寝てしまう生活だと思い出して、俺よりやばい奴だと認識。
早起きをしたので、今日のプレゼンのイメトレをした。何度も何度もイメトレしようとしてたら一瞬で起床を知らせる音楽が鳴り、練習を強制終了させられた。
午前中は他の受刑者のプレゼン。どんどん自分の順番が近づく。緊張してくる。うまくできるかな・・・白けさせないかな・・・。不安は募るばかり。
そして午後・・・とうとう順番が回ってきた。
プレゼンのタイトルは
『富士登山』
私が富士登山を過去2回経験していてその素晴らしさをプレゼンしようと思いこのテーマを選択した。
緊張し胸の鼓動が早くなる。指先も緊張で痺れてきた。そんな状態で53名の前へ。覚悟を決め、楽しむことを意識してプレゼンを始めた。
「みなさんこんにちは。funaimと申します。よろしくお願いします。」
受刑者から拍手が沸き起こる。
「突然ですがみなさんにお伺いします。」
「富士山という山」
「知ってるよー!っていう人は手を上げってもらえますか?」
ドッと笑いが起きほぼ全員の手があがる。
「ありがとうございます!みなさんの心が一つになりました!いいですね!じゃあ登ったことあるよーって方は手を下ろしていただけますか!」
手を上げていた全員が手を下ろした。
「打ち合わせでもしてたかのように綺麗に全員下ろされましたね!」
また笑いが起きる!
「この結果でみなさんおわかりいただけたと思いますが、日本人にとって物凄くなじみのある山富士山ですが、登ったことない方が多いんです。そこで、富士山に2度登頂している私の経験を踏まえて、富士登山についてお話させていただきますが、その前に・・・」
というような流れで、プレゼンを開始した。
みんな食いつくようにこっちを見てくれている。
結果・・・
大成功!
みんな笑顔で拍手がわき起こった。盛り上がった。ここは刑務所ではない、娑婆の空気が流れた感じがした。担当の刑務官もめちゃくちゃ笑顔だった。
一人で53名の観客をあの空気に持っていけたのは自分でも驚いた。
僕への質問のコーナーでも
「めちゃ面白かったです!」
「聞き入ってしまいました」
そんな言葉を投げかけられ心から嬉しかった。芸人をやっていた頃を思い出した。人が喜ぶ姿、笑顔になってくれる姿を見るのって最高。練習たくさんしてネタを何時間も練る。わずか8分間のプレゼンだったけど、最高の8分を過ごせたと思う。
37歳のいいスタートを切ることができた。ありがたい。
なんだろう・・・清々しくてビールが飲みたくなった。今日飲んだらさぞ美味しいんだろうな・・・。
全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。