見出し画像

タイポグラフィについて

※本記事は弊サイトで私が執筆して公開していたものを、加筆修正して転載したものです。

タイポグラフィ(typography)を一言で説明するのは難しいですが、すごくざっくり言うと、

フォントを効果的に組む技法の総称

です。何を持って「効果」とするのかは当然ながらケースバイケースで、その時その目的に合っていればそれでいいのでは、と個人的には思います。例えば書籍の本文とB1サイズのポスターでは、同じ組み方でいいはずがありません。その時々で効果を考えて書体を選び、それぞれの書体が効力を発揮するように組む事を考えるのがタイポグラフィです。

社交用の招待状やディプロマ(賞状類)など、ケースによっては厳格なマナーやルールなどが存在し、それに従う事が求められる場合もありますが、そのようなケースは余り多くはありません。また、殊にその書体の生まれた国や時代などのバックグラウンドを熟知していなければならず、そういう知識がなければタイポグラフィはできないと主張する人がいますが、そんなの非常にごく限られた一部の人が言っているだけで、全然そんな事はなく、基本的なルールを尊守すれば、あとは自由です。しかし、そういう国や時代の雰囲気を出したいという事であれば話は別で、それらの知識が必要になる事もあるでしょう。ですが、それもやはり最初に申し上げた通り、「効果を考えた上でのケースバイケース」の「ケース」のひとつでしかありません。その辺りを誤解しないで下さい。

用語の誤解が多いタイポグラフィ

SNSを見てるとロゴやレタリングのデザインを投稿し、「タイポグラフィを作った」とかいう表現が見られます。が、先に説明したようにこれは「技法」なので、「タイポグラフィを作る」の意味が解りません(笑)。

このように日本では「タイポグラフィ」の意味が広がりすぎているので、以下にちょっと解説させていただきます。

レタリング Lettering

文字を描く事。「書く」のではなく「描く」としている事に注意して下さい。つまり普通に手書きするのではなく、輪郭から描き起して文字を形作る事です。短い文、例えば書籍のタイトルや企業名などを、既存の書体を使用するのではなく、一から描き起していく行為を指します。

画像2

ロゴデザイン logo design

「ロゴ」にはマークと文字がありますが、ここでいうロゴデザインは、企業や商品などの名称を、個性的な文字の配列によって作成していくことです。日本では「既存書体を使うなぞもってのほか。レタリングによってオリジナルを描き起すべし」という風潮が非常に根強いですが、海外の企業を見ると、既存の書体を普通に組んで、ほんの少し手を加えただけというものもかなりあり、特に高級ブランドなどのロゴは、ほぼ既存書体そのままのものが多いです(もちろん組み方にかなり注意を払っていますが)。欧文書体は何万もの種類があるのに、なぜ新しく描き起す必要があるんだ、という合理的な考えです。まあ欧文ではたいていのアイディアは出尽くしていて、自分でオリジナルに描き起したつもりでも、似た書体がすでにあったという事はよくあります。

画像3

▲ Futura ほぼそのままのロゴ

日本にある欧文のロゴタイプで、あまりに変形していて文字として読めないものを時々見かけます。当たり前ですが、欧文でもネイティブの方々にとってはあくまで「文字」なので、間違いなく読める必要があります。見た目の面白さだけを追ってはいけません。某テレビ局が昔使用していたロゴは、「ネイティブが読めない」として有名でした(笑)。こんな笑えない事態に陥るぐらいなら、既存書体の中から良いものを選んで使う方がずっとマシです。個性を出したいというデザイナーのエゴよりも、クライアントの利益を考えてください。

画像1

▲読めないロゴの一例

※ロゴ(CI・VI・BI)について詳しくは以下の note を参照してください。

既存書体でロゴを作る
既存書体でロゴを作って問題ないのかという質問もよくありますが、JAGDA発行の著作権Q&Aによれば、問題ないとの事です。手を加えて変形させるのも可。ただし、まったく手を加えていないものは商標登録ができず、使用制限をかける事ができません。他者が同じ既存書体を使ってロゴを作っても、それをやめさせることはできないという事です。

タイプデザイン type design

いわゆるフォント・書体を開発する行為を指します。フォントとは今あなたが読んでいるこの文字、こういった文字がたくさん入った特殊なシステムファイルのことです(元々は活版印刷の頃、同じデザイン・サイズの活字一揃いのセットを「フォント」と呼んでいたそうです)。Windows のメイリオや Mac のヒラギノなどがそうですね。必要な記号類を含め、一字一字レタリングによって作っていきますが、様々な字の組み合わせに対応できるようにするのがレタリングやロゴデザインとの大きな違いとなります。例えば「Apple」のロゴを作る場合、この5文字だけをこの並びでデザインすればいいですが、タイプデザインではおよそ使用されると想定される文字をすべてデザインする必要があります。欧文でも大文字小文字で52文字、それ以外に記号類もあり、最低でも合計200文字ほど(Adobe Latin 1)、和文になると1~2万文字(Adobe Japan 1-7)と膨大です。

タイプデザインの真骨頂は本文用書体です。書籍のような長文を組んでも、誰が読んでも疲れず違和感ないようデザインするのは非常に難しい作業です。奇抜なデザインの書体(通常『ディスプレイ書体』と呼ばれる)の方がまだ楽に作れます。しかし本文用書体は、最も成功した時が最も目立たないというのが、ちょっと淋しい所ではあります。

フォント制作には専用のアプリケーションが必要です。昔は Ikarus というものが主流だったようですが、現在は FontLab や Glyphs などが用いられているようです。

カリグラフィー calligraphy

文字をペンや筆で書く事です。と言ってもただ普通に書くのではなく、特殊なペンと技法により、装飾的な文字を書く行為を指します。中世ヨーロッパで聖書を書写する事から発展してきました。現在ある文字の骨格やシルエットは、この頃に出来上がったものを踏襲しています。日本では「西洋書道」という呼び名もあります。

画像4

参考文献



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
18
フリーランスのグラフィック・Webデザイナー、Webデベロッパー、カリグラファー。欧文フォント好き。趣味はアイリッシュフィドル、レザークラフト、靴磨き。沖縄在住。 https://feoh.design/

こちらでもピックアップされています

デザイン
デザイン
  • 3本

自分の書いた記事の中でデザイン関連をまとめています。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。