纒向遺跡の三輪山眺望ポイント5選+1
纒向学[まきむくがく]研究センター(奈良県桜井市)の論文集『纒向学の最前線』の中から、僕が印象に残った論文を紹介するシリーズ。
今回のテーマは三輪山[みわやま]です。トップ写真の真ん中の山になります。
論文:三輪山の山景を生かした散策の企画
筆者:来村[きたむら]多加史氏(阪南大学国際観光学部教授)
(『纒向学の最前線』分割版3、p769-776、2022年8月)
この論文は奈良県の纒向遺跡の徒歩観光コースの提案です。三輪山の眺望ポイント5ヶ所から様々な山景を楽しめるガイドとなっています。眺望ポイントをGoogle Mapに落とし込んでみました。
以下は長くなりますが、論文からの引用です(順番は入れ替えてあります)。
現地を訪ねる意義:風景や景観への感動
来村さんの理論と経験に裏打ちされた、優れたガイドです。特に「発見」「体験」「臨場」「共感」「納得」の演出はどれも共感します。「風景や景観が人の心を動かす」というのは、現地でなければできない感動体験だと思います。
僕は遺跡・古墳・博物館めぐりをする時は個人で行動します。ガイドもお願いせず、まずは1人で回りたいタイプです。ガイドの語る蘊蓄[うんちく]は疑問に思ってしまうことがあるからです(ごめんなさい)。関西の博物館では「箸墓古墳は3世紀中頃」という解説が多いようですが、その根拠はどれも不十分だと思っています。
蘊蓄は書籍や論文で読めばいいわけです。
一方で、来村さんの述べる「風景や景観が人の心を動かす」というのは現地でなければ絶対に得られません。箸墓古墳が古代史において重要だと頭で知っているだけでは、古代史の研究はできません。僕は実際に箸墓古墳を見て、その美しさに感動したから、今こうやって古代史を勉強しています。
風景や景観は現地に何度も通っている人だからこそ知っていることが多いです。僕は千葉市昭和の森公園に毎日のように通っています。野生のイノシシ(出会いたくないですか?)や野うさぎ、タヌキに出会いやすい場所や時間がわかります。
同じように、纒向遺跡の風景や景観に感動できる場所や時間の情報は、やはり現地に精通したガイドでなければわからないと思います。纒向遺跡に午前中に行っても、三輪山も箸墓古墳も逆光できれいに見られません。来村さんは午後のスタートを提案しています。
逆に言うと、現地のガイドさんには風景や景観の眺望ポイントや一番いい時間こそ、自分の足で稼いでノウハウを蓄積してほしいです。
来村さんはそんな現地ガイドのマル秘情報を惜しげもなく公開してくれました。感謝です。今度、纒向遺跡に行ったときは、来村さんの提案コースを歩いて、古代人に思いをはせたいと思います。
額田王歌碑と渋谷向山古墳
恥ずかしながら、僕は纒向遺跡には1回しか行ったことがありません。その時はどれが三輪山なのかがわからず、念のため、地元の方に確認したことを覚えています(見当をつけた山で間違いありませんでした)。
来村さんの選んだポイントはどこも行ったことがありません。箸墓古墳は1周しましたが、三輪山を望むという発想がありませんでした…。
三輪山の眺望ポイントして、ネットなどでもよく見かけるのは、渋谷向山[しぶたにむかいやま]古墳近くの額田王[ぬかたのおおきみ]歌碑ですね。天智天皇とともに近江に向かう額田王が、最後に「もっと三輪山を見続けていたいのに、つれなく雲が隠している」と歌った場所とされています。
奈良県県民だより「万葉集を訪ねて」第5回(2012年2月号)
https://www.pref.nara.jp/koho/kenmindayori/tayori/t2012/tayori2402/manyou2402.htm
来村さんが額田王歌碑を論文のコースに含めなかったのは、来村さんの他の5ヶ所のポイントからは離れていて、少し距離が延びるからでしょうか(有名すぎるし)。
僕は箸墓古墳は女性的、渋谷向山古墳は男性的だと思っています。三輪山からの距離が箸墓古墳と渋谷向山古墳は同じぐらいで、二等辺三角形をつくっています。南から逆光にならずに見られますし、渋谷向山古墳もお勧めです。もちろん、体力に自信のある人は行燈山[あんどんやま]古墳、黒塚古墳、西殿塚[にしとのづか]古墳などに足を伸ばしてもいいと思います。
ちなみにトップ写真の三輪山は、東田[ひがいだ]大塚古墳の周辺から撮ったものです。東田大塚古墳がGoogle Mapに掲載されていなかったので追加を申請したところ、10分で承認されました。2024年6月までに閲覧が10万件に達したそうです。
そんなことを書いていると、早くまた纒向遺跡を訪ねてみたくなりました。
※2024年10月に纒向を再訪しました。来村さんのコースを実際に歩いてみました。レポートを投稿しました。
(最終更新2024/11/23)
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