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ふみのわ

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文芸部「ふみのわ」の文芸集です。 顧問のわたし、文(ふみ)先生が定期的に課題 "ぶんげぇむ" を出しますので、部員の皆さんはしっかりと課題に取り組んでくださいね! もちろん部員で…
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2021年1月の記事一覧

お母さんの愛はこれまでも、これからも

久しぶりの実家。 結婚して片道3時間かかる場所に住み始めたから、なかなか気軽に帰ることはできなくなった。 だからこそ、帰ってきた時は懐かしさと安心感を噛み締めることができる。 最後に来たのはちょうど一年前だったな。 整然として木洩れ陽が差す、静かで暖かな二階の部屋は、母の部屋。 部屋の隅に佇む衣装箪笥は、母の嫁入り道具。 母の歴史とも言える箪笥の引き出しを開けたその瞬間、私のタイムトラベルが始まった。 黄色の小さな、肩掛け鞄と帽子。 幼稚園生の頃はお母さんと離

ペーターとイチョウの木

これはもともと一枚の葉が二つに分かれたのでしょう? それとも二枚の葉が互いに相手を見つけて ひとつになったのでしょうか?  ゲーテ「銀杏の葉」より、井上正蔵訳 ペーターは、鞄の傷を気にしていました。 パパとママに買ってもらった、お気に入りの黒い鞄。 このあいだ転んだときに、傷がついてしまったのでした。 「もういいのよ。いつまでも気にしてもしかたないわ。」 ママはそう言います。 ペーターの家は、公園の向かいにあります。 あまり人の来ない、少しさみしい公園です。 公園

第2回文芸課題"ぶんげぇむ"発表します

みなさんこんにちは。文(ふみ)先生です。 記念すべき第1回目のぶんげぇむから2週間が経ちましたね。あっという間の2週間でしたが、その間にふみ先生はみなさんの作品に感化されて、『ハリー・ポッター』を読み直しはじめました(笑) ふみ先生は昔からあまり本を読む方ではないので、すごい進歩です!✨ さて我々文芸部『ふみのわ』第2回目の課題を発表します! ◆お題:「黄色」「鞄」「さみしい」 ◆執筆ルール:  ・お題に沿った作品を作ってください。  ・小説/エッセイ/詩 などの形式

『ふみのわ』入部制度について

みなさんこんにちは。文芸部『ふみのわ』顧問の文(ふみ)先生です。 2021年1月現在、文芸部『ふみのわ』は仮入部制度を導入しています。入部を検討されている方は、まずは仮入部をしていただきますようお願いいたします。今回は「仮入部」「入部」についてご説明していきます。 ※まだ「文芸部『ふみのわ』について」を読んでいない方はこちらからどうぞ!↓ そもそも『ふみのわ』に入部するとどうなる?まずは、『ふみのわ』に入部された際の活動についてご説明します。 文芸部『ふみのわ』に入部

【最初にお読みください】文芸部『ふみのわ』について

みなさんこんにちは。文芸部『ふみのわ』の顧問、文(ふみ)先生です。今回は、私たち文芸部『ふみのわ』についてお話していこうと思っています。 私たちの活動に興味がある方や入部希望の方、もちろん部員の方々も、ぜひ一度目を通していただけると幸いです! 1. 文芸部『ふみのわ』ができたきっかけ私たち文芸部『ふみのわ』の活動は、創作が好きなメンバーたちが「自由に、ただただ楽しく創作ができる場所が欲しい」という思いを口にしたところから始まりました。 「創作するのは好きだけど、誰かに見

第1回文学課題"ぶんげぇむ"まとめ

みなさんこんにちは。文(ふみ)先生です。 突如スタートした、文芸部『ふみのわ』による文芸課題、"ぶんげぇむ"。 予想以上にたくさんの方に楽しんでいただき、顧問・部員ともに大変驚いて(喜び勇んで)おります! さて、第1回文学課題を提出いただいた部員のみなさん、改めてありがとうございました!そして、本当にお疲れ様でした。 どれも個性豊かで素敵な作品に仕上がっていましたね。ふみ先生もとっても楽しく拝読させていただきました。 それではさっそく、第1回文学課題"ぶんげぇむ"に

The Sound of Silence

 こうなることは、どこかでわかっていた。そうは言っても、脳で理解するのと実際に目にするのとでは、わけが違う。布団の裾からはみ出たベージュピンクのネイルが、数時間経った今でも脳裏にこびりついている。あんな控えめな色を足に塗るなんて、どうかしている。よりによって、いつかのあの人と同じ色味。「接客業だから清潔感が大事なのよ」と、私に見せつけたあの疎ましい色。あいつの趣味もここまで来たのか、馬鹿野郎。「来ちゃった」と、安易に彼氏の家に行くものではない。でもさ、私の家でもあったのにな。

「雨の日のプレイリスト」

雨の日に選ぶプレイリストには 僕の好きな曲が少ない 雨が好きな 君の好きな曲ばかり 洋楽ロック 昭和歌謡 古い映画の挿入歌 異国のメロディー ピアノソナタ第8番第2楽章 ごちゃ混ぜの音楽が 雨の日の憂鬱を紛らして いつかの雨の日に 雨宿りした店で楽しそうにレコードを選ぶ 君のカラフルな指先を 思い出させる 雨の日は今も苦手で やっぱり少し憂鬱で でもあのプレイリストが聞きたくて いつの間にか僕は 雨が降るのを待ち遠しく思っているんだ

レコード

夏の日、僕と彼女は車で高原へ出かけた。 白樺と赤松の林を抜けると、湖があった。 車を停め、僕と彼女は散歩した。 高原の乾いた空気越しに光が降り注ぎ、反射する。 彼女は切り株に腰をかけた。 僕はその横に立ち、湖を眺めた。 彼女は切り株の年輪を見つめていた。 「これがレコードだったら、どんな音楽が鳴るかな。」 そう彼女は言い、ネイルの先で年輪をなぞった。 それが僕と彼女が会った最後の日だった。 僕は携帯電話を切り、自分の部屋で立ち尽くしていた。 書架に目をや

【短編小説】 染まる

私の視線に気がつき、イナモトさんは手を止めた。でもすぐに理由が分かったのか「ああ」と声に出す。 「カラー剤で染みちゃって。職業柄どうしても色がついてしまうんですよね。ネイルしているみたいってよく言われるんですよ」 自身の爪を見ながら「あはは」と笑う。 しまった。いつもはこっそりと見ていたのに、今日は気づかれてしまった。とっさに「へえ。そうなんですね。美容師さんも大変ですね」と知らないふりを装ったけれど、黒っぽく染まっているイナモトさんの爪を、私はずっと前から知っている。

第1回文芸課題"ぶんげぇむ"発表します

みなさんこんにちは。文(ふみ)先生です。 いよいよ首都圏だけでなく各地で緊急事態宣言が出されてしまいましたが、部員のみなさんはくれぐれも体調管理に気をつけて、一生懸命課題に励みましょうね! さて我々文芸部「ふみのわ」第1回目の課題を発表します! ◆お題:「レコード」「ネイル」「スマホ」 ◆執筆ルール:  ・お題に沿った作品を作ってください。  ・小説/エッセイ/詩 などの形式・ジャンルは問いません。  ・3つのキーワードを作品に登場させてください。ただし、文字そのものを