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2021年映画初め

パラサイト半地下の家族を観て過ごした元旦から、もう気が付けば5日も経っている。今年の年末年始は、観たかった映画やドラマなどを一気に楽しもうかと意気込んで準備していたのだが、休みだからといって思っていたほどの数の映画は観なかった。

私の場合は、時間がない普段の日常のほうが、映画などの作品に触れやすいのかもしれない。そのほうが集中力もあるし、無理をしてでも作品に触れようとするからだ。私にとって映画や小説などは、娯楽、というよりは「日常の中にあるもの」なのだと改めて実感している。

少し前までは、「映画は映画館でみるべき」とか、「自宅で集中できる鑑賞環境が重要」だと思いながら、スマホで2時間の映画をちょこちょこと細切れに観てしまう自分に罪悪感を感じてもいた。でも、今年はそれも「良い」と思うことにした。日常は、1年前と少し変わった。映画館や自宅の大きい画面よりも、スマホやiPadで移動時間や仕事の隙間時間を利用した作品鑑賞が確実に増えてきている。環境も大事だけど、映画から遠ざかるよりはいいかなと思っている。

一方で、だからこそ最近は、映画館で鑑賞するという行為のすばらしさにも気が付かされる。作品の良し悪しを超越した「映画体験」は、自分の脳内にしっかりと刻まれ特別な記憶として残る。今年は映画館にどのくらい足を運べるだろうか。私の家の近所のミニシアターも、昨年はクラウドファンディングで資金集めをしながら、なんとか運営してくれている。地方だし集客も決して多くないはずだが、これだけマイナーな映画を何十年も上映してくれている映画館こそ絶対になくなってほしくない。これからも通い続けて応援したいと思う。

そんなようなことをぼんやりと考えていた2021年元旦、Netflixに映画「パラサイト 半地下の家族」が追加されていたので観た。

私は昨年公開の時点で、映画館に足を運び鑑賞をしていたので2度目だったが、元旦の配信を知ってからずっと、必ず観ようと意気込んでいた。

案の定、最近の私にしてはめずらしく、2時間強の作品を途中で止めることなく、一気見してしまった。よい作品は、スマホではなく腰を据えてしっかりみたくなるものだ。やはり使い分けが重要なのかもしれない。

「パラサイト 半地下の家族」は、2回目もとても素晴らしかった。
観客を一度惹きつけたらもう最後まで離さない、そういう映画なのだと改めて感じる。2回目は、この作品がいかに完璧に計算つくされたもので、いかに美しいのか、ということにも気がついた。もう1回、次は同時配信されていた「モノクロバージョン」で観てみようか。新たな発見がありそう。


そういえば昨年、「2024年からアカデミー賞のノミネート基準は、多様性を配慮したものにする」という発表がされていた。

女性・人種・民族・性的マイノリティなどをテーマとしたストーリーラインで、かつ制作スタッフへの多様性も求められるらしい。もうここ数年はそれらがテーマの作品がますます増えているし、ここからさらに多くなるだろう。

でももしかすると、こういう流れがあるからこそ反対に「賞狙い」ではない、ある意味ぶっ飛んだ作品などもたくさん出てくることも同時に期待したい。個人的には、こんな時代だからこそクエンティン・タランティーノの「レアボア・ドッグス」みたいな作家性の作品が観たい気分でもある。

最後に、偶然ではあるが、この年末年始は女性へのメッセージが込められた作品に多く触れた。中でも素晴らしかった1作品を記しておこうと思う。

きっと性別に関係なく、多くの人を勇気づけるとともに、自分自身の人生をあらためて振り返ったり、何か新しくはじめようかと思っている人に、ぴったりだと思う。

映画「RBG 最強の85才」

2018年 アメリカ 97分
監督 ジュリー・コーエン、 ベッツィ・ウェスト

元アメリカ女性最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ(通称RBG)―アメリカで最も尊敬される85才(2018年当時)と言われた、彼女の人生とキャリアに迫ったドキュメンタリー作品。


「アメリカ史上最強のパワーウーマン」というとパワフルでハツラツとした女性像を思い浮かべるが、彼女は、小柄で華奢な風貌、昔から非常にシャイな性格だったと多くの知人が口をそろえて言っているのがとても、印象的だった。

確かに静かで控えめな話し方なのに、言葉のひとつひとつは力強く、なぜか惹きつけられる魅力がある。

ちなみに、昨年公開された映画「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」でも、主人公の女子高生モリーが、冒頭、自分の部屋にルース・ベイダー・ギンズバーグの写真を飾っていた。(モリーは史上最年少で最高裁判事になることが夢)若い女性からも絶大な支持を得ている。

もし、「あなたの尊敬する人は?」と誰かに聞かれたら、この日以降私も彼女の名前を上げようと決めた。2020年、87歳で亡くなる直前まで職を全うしていたそうだ。いつもファッショナブルで美しく凛としたいでたち、控えめな性格でありながらも、法廷では冷静かつ理路整然とした発言で自身の信念を貫く姿は、年齢や性別、国境を越えて尊敬される人格だったのだと思う。

彼女は人生に役立つチャーミングな言葉をいくつも残している。


『時々、耳が遠い人になりなさい』というアドバイスは、役立ちましたね。結婚生活でも、職場でも
“Every now and then it helps to be a little deaf...That advice has stood me in good stead. Not simply in dealing with my marriage, but in dealing with my colleagues.” 

RBGのように、強く、どんなときもユーモアを忘れずに、しなやかに生きていきたいものである。

また、今年は、昨年よりも映画の感想も積極的に書いていきたい。
2021年も、たくさんの素敵な映画に出会えますように。

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