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2022年9月 一箱本屋PLOW店主が読んだ7冊

今月は、本を爆買いしまくった1ヶ月であった。

積み本をテレビの横に積みすぎて、とうとうテレビの背丈を超えてしまった。そろそろ本棚を増やしたい。

というわけで、今月も読んだ本のご紹介、いっきまーす!

ツバキ文具店(小川糸)

鎌倉にある「ツバキ文具店」を営みながら、手紙の代書屋もしている、主人公の鳩子(ポッポちゃん)。

鳩子のもとには、絶縁状や借金のお断り状、恋文、いろんな依頼がやってくる。依頼に答えつつ、ご近所のみんなと交流を重ねていくうちに、代書屋の先代である祖母の思いを拾い集めていく。

小川糸さんの本は初めて読んだのだが、以前から雑誌「天然生活」などで小川さんのことはなんとなく知っていた。

エコのために洗濯を週1回しか回さない話が載っていたような気がする……(違ってたらすみません)。小川さんには、丁寧な生活を送っている印象をもっていた。



この本は、大きな事件が起きる話ではない。最初は、のんびりな空気に慣れなかったけど、実際、日常ってそんなもんで。ドラマチックな小説の世界と、日常を繋いでくれる一冊だった。

日々の小さな機微が丁寧に描かれている。普段の小川さんの生活との向き合い方が、小説にも表れているよう。

鎌倉の仲間たちがとってもにぎやかで、こんな関係性を作れる鳩子はとっても素敵な人なんだと思う。

「バーバラ夫人」「男爵」「パンティー」「QPちゃん」……ツバキ文具店を訪れる人たちのニックネームにほっこり、つい微笑んでしまう。

水上バス浅草行き(岡本真帆)

気になっていた、岡本真帆さんの歌集をとうとう購入!

本の遊び紙(表紙をめくって、タイトルの前にある紙のこと)から、短歌が載っている。遊び紙の色が表紙側と裏表紙側で異なっていて、遊び心を感じる装丁だ。

岡本さんの歌はぱっと見、ユーモラスな視点が目立つ。

Yeah!めっちゃポリデントって送ろうと入れ歯の絵文字探してた ない

「水上バス浅草行き(岡本真帆)」より

「Yeah!めっちゃホリディ(松浦亜弥)」のもじりですね。ハロオタなのでめっちゃ敏感。

こんなん、普通する?
ポリデントなんて送んないわ、と思いながらも、スマホの画面をじーっと見ながら必死に探す人を想像して、ふふふっと笑いを堪えた。


一方で、ときどき尖った歌もあって、ぐるぐると場面転換する。ギャップがおもしろい方だな、と思った。ひとつの歌を例に挙げたい。

暗闇で一つ結びはほどかれてまた暗闇で結わかれていく

「水上バス浅草行き(岡本真帆)」より

この歌、まぐわいの歌なんじゃないか。
暗い部屋に来て営み、そのままスッと帰っていく、そんなイメージが浮かんだ。主人公は、女子高生のような?

次に続く歌がこちら。

ツインテールをやめたあの子は押し黙る一角獣のような目をして

レントゲンには写らないものだけど君のたましいそのものだった

「水上バス浅草行き(岡本真帆)」より

一角獣=ユニコーン、急にファンシーでチープなキャラクターもののぬいぐるみを思い出した。

ああ、たましい抜かれちゃったのか、と思ったのだけど、もしかしたら逆で、たましいが灯ったのかも。それとも、見えないたましいにそっと触れられた、そんな描写なのだろうか。

ファンシーな子供の心からの脱却、そんな解釈を勝手にしてしまった。

こんな感じで、短歌は読み解いていく(たとえそれが正しくなくても)のがおもしろいなあ。

まっくろいたちのレストラン(島本理生・文、瀧井 朝世・編、平岡 瞳・絵)

イベント「読むしかできない」の一環で、主催者のakaneさんと交換させていただいた本。

まっくろいたちは、ぶきみな牙がコンプレックス。孤独だったまっくろいたちは、レストランをはじめる。ある日、うさぎのお嬢さまが来店し、いたちはうさぎに恋をする。そんなお話。

文が島本理生さんと知り、びっくり。絵本も書くんだね。ドラマチックなストーリーで、まさに大人が読みたい絵本。

ちなみにわたしは「さかなくん(しおたにまみこ)」を贈らせていただきました。一見、ふわふわした世界観で、さかなくんの日常を描いているんだけど、多様性というテーマが裏にあるのかな。深読みしたくなる絵本である。

旅のつばくろ(沢木耕太郎)

沢木耕太郎さんといえば「深夜特急」なんだろうけど、あえてここから読みはじめたわたし。

この本に関しては、まさかの巡り合わせがあった。詳しくは下のnoteを読んでいただきたいのだが、知らない間に、この本の一部を読んでいたのだった。

特に印象に残ったのが「点と線と面」の話。

たとえば、ある子供が、自分の住んでいる家というひとつの「点」から、もうひとつの「点」である学校に通うとすると、そこに一本の「線」が引かれることになる。放課後、その学校から遊び場である近くの公園に寄るとすると、点と点を結ぶもう一本の線が引かれる。そのようにして引かれることになった無数の線が交錯して「面」ができるようになる。

「旅のつばくろ(沢木耕太郎)」より

旅行で一度訪れただけでは、その土地を点としてしか知らない。
そこから、他の地点に向かうと線ができ、面ができていく。

面がたくさんあると、人生が豊かになっていくのではないか?という問いかけである。本当にその通りだと思う。

土地に根付いていくってそういうことだよなあ。

今のアパートに住んでちょうど3年目。引っ越ししたてのときは、この土地のことをまったく知らなかったのに、今は自分の庭のように、悠々自適に暮らしている。

ということは、わたしも少しずつ面を作れているのだろうか。

べつに怒ってない(武田砂鉄)

「マチズモを削り取れ」の武田砂鉄さんの短編エッセイ集。

街で見かけたちょっとした光景や、会話、お店の対応、テレビの話など、日常で広げられた疑問を黙々と考察している。

こういうのって、わかる!わかる!共感!って思うけど、自分では全然拾いきれないので、日々の気になること、ひとつひとつに向き合う武田さんはすごい。

123本収録されているけど、きっとネタをもっとたくさんもっていそうだし、ボツになったネタもたくさんあるんじゃないだろうか?
ネタ出しのコツが知りたい。この本を何度も読んだら、ネタ探しのヒントになるだろうか。

見開き2ページでひとつのエッセイが完結するので、電車や隙間時間に読むのにピッタリであった。表紙もかわいいから、電車の中でも出しやすい。

プラネテス(幸村誠)※再読

小学生の頃、アニメを見たのがきっかけで手に取った、プラネテス。SFが苦手な人にこそ読んでほしいSF漫画である。

デブリ(宇宙廃棄物)回収船で、日々デブリの回収に勤しんでいる、主人公のハチマキ(八郎太)は、自分の宇宙船を持つことを夢見ている。

木星往還船計画が始動し、ハチマキは参加を決意する…というストーリー。

SFってファンタジー要素が多い作品もあるが、プラネテスの世界観は、地に足がついているというか、企業で働くサラリーマンのような。人間同士の交流や生き様が軸にあり、宇宙戦争のようなバトルもなければ、超能力を使うようなキャラクターもいない。

事件や事故、ハチマキのスランプ?もあるのだが、話はあくまでどこか淡々と進んでいく。どんなにいろんな技術を身につけても、人間の本質は変わらないのだと気づかせてくれる。

このマンガのラストが好きすぎて、何度も読み返してしまうのだった。(これを書いている途中にも一度読み返した。笑)

地図にない場所(安藤ゆき)

「町田くんの世界」の安藤ゆき先生の最新作。
ずっと気になっていて、3巻が発売されたのでまとめ買い。

三兄弟の真ん中で、優秀な兄とイケメンの弟にはさまれ、中学校でも居場所を見つけられない、土屋悠人(ユート)。ある日、バレリーナを引退した宮本琥珀(コハク)が帰国し、隣の部屋に引っ越してくるところから話は始まる。

コハクの家を訪れたのがきっかけで、2人は仲良くなっていき、一緒に「地図にない場所イズコ」を探し始める。


バレエ一筋で生きてきたコハクは、家事もできなければ部屋の片付けすらままならない。バレエで活躍するということは、幼少期にバレエ以外のことを全然できなかったということでもある。

天才と呼ばれる人でも、血の滲むような努力を重ねていて、引き換えに失った日常や子ども時代の経験もたくさんある。

それを取り戻すかのように、「地図にない場所イズコ」探しに熱を入れるコハクがなんだか切ない。

ユートも、自分で自分の思いに気付けていないコハクを心配したり、一緒に行動したりしていくうちに、コハクに惹かれているようだけど。

ドラマティックになりがちな要素を、フラットに描いている。だからといって、コミカルにも転ばない。わたしが安藤ゆき作品が好きなのは、これが理由だと思う。

絶妙な距離感が心地よい。

10月に読む本がすでに待ち構えている

昨日、図書館に予約していた本を取りにいった。しかも、「隙間時間(小谷実由)」のサイン本も注文中、そろそろ届くはず。

すでに、10月に読む本がわたしを待っている。
未来を予約している気持ち。わくわくするね。

そのうちnoteで書こうと思っているけど、アラサーのわたしは、裸眼で本を読めるのはあと10年ぐらいだろうと予想している。歳をとると集中できなくて本が読めなくなるという話も聞く。

そう、わたしたちは読みたい本を前に、手をこまねいている暇などないのだ!来月もたくさん読もうね!



★お知らせ★

10/9(日)「千石ブックメルカード 一箱古本市 in 千石2022」に出店いたします!

本好きの人たちが集まって、ひとりひとりが店主となって、古本市を開きます!みかん箱一個分のスペースがひとりの持ちスペース。個性的な本屋さんがたくさんあつまります!

時間:2022年10月9日(日)11:00〜16:00
場所:都営三田線「千石駅」、JR「巣鴨駅」から徒歩10分以内のエリア

・童心社 (千石 4-6-6)
・風のやすみば (千石 4-5-2)
・わでかくらぶ(千石 4-39-7) & ユニークスキッズ(千石4-40-23)
・文京子育て不動産 (千石 1-27-12)
・巣鴨大鳥神社 境内建物 2F (千石 4-25-15)
場所は5箇所に分かれます

本屋PLOWは、大好きなマンガをメインに、こころがほっと休まるような小説、エッセイなどをお持ちします。
ZINEはここで初お披露目!
店主が独断と偏見で選ぶ〇〇セットも……!?

巣鴨大鳥神社 境内建物 2Fにおりますので、ぜひお立ち寄りください!


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