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ものかきのおかしみと哀しみ

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すれ違った人たち
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#断片

冷凍マネキンその後

冷凍マネキンその後

「北大阪海流と南大阪海流がぶつかる道頓堀は餌のプランクトンも豊富で、昔から豊かな漁場として知られています」

クルーズ船のアナウンスを聞きながら、僕は冷凍したマネキンの捨て場所をぼんやり考えていた。

そもそもマネキンを凍らせるといいと教えてくれたのは叔父だ。

エアコンが苦手な叔父は、夏になると部屋に何体もの凍らせたマネキンを置いていた。

「こいつらのおかげで涼しいんだ。電気代もかからない」

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月を焼く

月を焼く

月を見て、美味しそうだなと思うことがある。

時節柄、あ、月見バーガーだねと思われるかもしれない。残念だけど、それじゃない。

それにしても「月見バーガー」で本気のお月見してる人はどれぐらいいるんだろう。1200人ぐらいはいるかもしれない。お供えの台(あれ、なんて言うんだ?)に月見バーガーをピラミッド状に積んで月を愛でるのだ。風流。

ちなみに、どうでもいい情報だけど「月見バーガー」が初めて登場し

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小さきことのために

小さきことのために

本当は、みんなそれぞれの日常にあったと思う。小さな、ささやかだけれど大事なことが。

だけど、いまはそれが難しかったりする。仕方ないこともわかってる。

慣れた部分もあるし、慣れないものをなんとか呑み込んでる部分もある。まあ、それも人それぞれだ。

だけど、ひとつだけ慣れないのは「小さなこと」より「大きなこと」のほうがあたり前に大事だという価値観と行動。

社会全体の福祉とかそういう次元ではなく(

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靴のはなし

靴のはなし

電車の中で向かいあった人たちの足元をじっと見る。

電車でスマホをあまり触らないものだから、どうしてもそうなる。あまり真顔で前の人を凝視するわけにもいかない。目線を外すと足元になる。

そのうち、いろんな靴たちが会話をしているのが聞こえてくる。

やぁ。どうだい。久しぶりじゃないか。
ああ。そっちこそずいぶんくたびれちまって。
まったくさ。俺ももうダメだね。箱から出してもらったばかりのときは、

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何が足りてないんだろう

何が足りてないんだろう

これはほんとに読まなくてもいい駄文noteなんだけど、相変わらずいろんなものと戦ってる。戦う。全然、好きな表現じゃないけどそうとしか言いようがなくて。

何かに勝つとか負けるとかではないのだけど、自分で気分よくいられる状態にはしたい。あ、ダウナー状態ってわけじゃないです。

気分って大事。

べつにすごくハイテンションとかじゃなくても、なんだろう。アイドリングの音が一定で気持ちいい感じ。アクセル入

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