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短編小説(ショートショート含む)

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短編小説(ショートショート含む)を まとめてみました。よければ是非。  ※更新頻度は不定期となります。
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#超短編小説

短編その8 ワタセくん

短編その8 ワタセくん

文字数:2,200字程度
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 幼い頃、私は毎年の夏休みに、叔父の家を訪れていました。
 叔父は畑をやっていました。人参にトマト、ピーマンにきゅうり…とにかく沢山、育てているようでした。
 叔父の家に行くと、私はいつも畑の手伝いをさせられました。でも、悪い気はしませんでした。都会っ子の私としては、虫や植物と触れ合うのは新鮮で、

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短編その5 きになっちゃうおばけ

短編その5 きになっちゃうおばけ

文字数:2,200字程度
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 ——やあ!僕は、きになっちゃうおばけ!
「わ!びっくりした」
 突然私の目の前に、それはふわりと現れた。
 ——ミカちゃん、はじめまして!僕は、きになっちゃうおばけだよ!
 「おじゃる◯」に出てくる、貧乏神のような。逆三角形の位置に黒い穴三つ、真ん中に鼻という、典型的なハニワのような顔をしたそれ

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短編その3 草まんじゅう

短編その3 草まんじゅう

文字数:3,800字程度
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 古めかしい門構えをくぐり、妻と境内に入る。
 中は雑多な参拝客で溢れかえっていた。近所にあるその寺は、知名度から普段より賑わっている。三が日を終えた平日であっても、それは変わらなかった。
「天気が晴れて良かったね」
「ああ」
 隣で歩く妻が、にこにこと笑顔を浮かべている。二日前までの天気予報では

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短編その2  未来予知

短編その2 未来予知

文字数:2,600字程度
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 俺には未来予知がある。

 突然言われても、「何を馬鹿なことを言って」と笑われることは分かっている。しかし、事実なのだから仕方がない。

 ただ、俺の持つこの能力は使えそうで使えない。

 これまでいくつもの未来を予知した。中高と部活でレギュラーになれない予知。受験で第一志望の大学に落ちる予知。

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短編その1 よくあること

短編その1 よくあること

文字数:1,800字程度
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「私、昔ミニバスやってたんだけどさあ」
「ん?何、急に」
 日曜日の正午過ぎ。ソファに座って『新婚さんいらっしゃい』を観ていたその時。横にいる彼女が、徐ろに話し出した。
「いや、幼い頃の話。何だかふと思い出して」
「ふーん。何々、話してみてよ」
 そう催促すると、彼女は「うん」と強く頷

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