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アトレティコに見た、コーナーキック守備戦術

コーナーキック守備戦術
~アトレティコ・マドリードより~

 今回は、セットプレーの局面であるコーナーキック守備において、アトレティコ・マドリードを分析します。
 まず、アトレティコのコーナーキック守備時のベースとなる守り方は「マンツーマン」です。これを分析することで、マンツーマンの守備に対する個人的な見解と、それに対する有効な対抗策を考察していきます。


アトレティコ マドリードの
コーナーキック守備

① ベースとなる配置
 アトレティコはコーナーキック守備時、下図のような配置となる。
 説明すると、ボール周辺のエリアに1枚、前方のエリアには人を配置せず、ゴール前のエリアに残りの9枚を配置し、基本的に全員で守備組織を形成する。ここで、全体の配置を「ボール周辺 - ゴール前 - 前方のエリア」の順で「1-9-0」と表すこととする。

コーナーキック守備時の配置#1
※ラ・リーガ23-24 第6節 vs レアル・マドリード
コーナーキック守備時の配置#2
※ラ・リーガ23-24 第6節 vs レアル・マドリード

 ただし状況によっては、ゴール前の人数を1,2枚削る代わりに、ボール奪取後のカウンターに備えて前方のエリアに1,2枚配置し、「1-8-1」や「1-7-2」となることもある。


② ボール周辺
 ここから、それぞれのエリアにおいて分析する。
 まず、ボール周辺のエリアでは、基本的に1枚が立ち、敵のショートコーナーの受け手に対していち早く寄せられる位置かつ、直接コーナー時のニアサイドのこぼれや、ペナルティエリア外にいる敵へ直接ボール渡った場合などに対応できる中間地点に立つ。

ボール周辺のエリアでの立ち位置
※ラ・リーガ23-24 第6節 vs レアル・マドリード
ショートコーナーに対する対応
※ラ・リーガ23-24 第6節 vs レアル・マドリード


③ ゴール前 
 次に、ゴール前のエリアでは、ベースとしてマンツーマンとなる。

マンツーマンをベースとした守備#1
※ラ・リーガ23-24 第6節 vs レアル・マドリード
マンツーマンをベースとした守備#2
※ラ・リーガ23-24 第6節 vs レアル・マドリード
マンツーマンをベースとした守備#3
※ラ・リーガ23-24 第13節 vs ビジャレアル

 ただし、図の通りエリア内に上がってくる敵はせいぜい5~6人であり、マークにつくのは5~6人で2~3人が余る。そこで、特に空中戦の強い選手(ヒメネス・モラタ・エルモソなど)が2~3枚、ゴールエリア内のニアサイドや中央をゾーンで守る。この狙いは、ヘディングの強い選手がフリーでボールを弾き返すことができるようにするためだろう。

ヒメネス、モラタ、エルモソがゴールエリア内でゾーンで対応する
※ラ・リーガ23-24 第6節 vs レアル・マドリード
ヒメネス、モラタがゴールエリア内でゾーンで対応する
※ラ・リーガ23-24 第6節 vs レアル・マドリード
ヒメネス、モラタがゴールエリア内でゾーンで対応する
※ラ・リーガ23-24 第13節 vs ビジャレアル


④ 前方のエリア
 
最後に、前方のエリアについては、アトレティコは基本的に「1-9-0」の配置となり10人全員を守備に戻すため、ここのエリアには配置しない。しかし、試合の状況によっては、カウンターで決定的な仕事ができる選手(または、コーナー守備ではあまり戦力として期待できない選手)を前方のエリアに配置することもある。

前方のエリアでの配置
※ラ・リーガ23-24 第13節 vs ビジャレアル

 これにより、カウンターアタックの可能性を高めることはもちろん、敵にその選手をマークせざるを得なくすることで、敵の攻撃に送り込んでくる人数を削ることができる。


 今回は、アトレティコのマンツーマンをベースとしたコーナーキックの守備について分析しました。
 私の考えでは、マンツーマンによる守備は個人の能力に依存するところが多く、コーナーキック守備であれば、競り合い、ヘディングの技術、体格差などに自信のある選手を要する場合は非常に有効だと思います。
 ではここで、マンツーマンの守備に対するコーナーキック攻撃について、有効な対抗策を考えます。敵がマンツーマンであるということは、こちらが動けば相手もそれを追わなければならないため、攻撃側が意図をもって「相手を動かす」ことができます。つまり、攻撃側が流動的に動くことによって相手を動かし、スペースとフリーマンを作り出すことができるのです。
 例えば、中央に6人が密集した状態から、ニアサイド・ファーサイド・後方のエリアへ2人ずつが動き出し、空いた中央のスペースに後方から本命のターゲットを1~2人送り込むといった方法があります。これは非常に有効です。
 ただし、1つ言えることは、どんな相手にも通用するパターンは存在しないと言うことです。自分たちの戦力を前提とし、そこに相手を弱点を突くような方法を都度考える必要があるでしょう。

 


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