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荘園の歴史を持つ地でつくられる、自由な精神を持ったスピリッツ


リトアニアの首都・ヴィリニュスから北西へ200km弱行くと、リトアニア第4の都市・シャウレイがあります。人口は10万人ほどと、それほど大きな都市ではありませんが、有名な観光スポットがあります。

それがこの「十字架の丘」。おびただしい数の十字架が立ち並ぶ景観に圧倒されます。

約5万ともいわれる十字架が立ち並びます

ユネスコの無形文化遺産のひとつにもなっているこの「十字架の丘」は、リトアニアがロシア帝国の領土下であった1800年代に、ポーランドと共に起こしたロシア帝政に対する蜂起が発端と言われています。
2度の蜂起はいずれも失敗。犠牲となった兵士の家族が、遺体の代わりに十字架を持ち寄り、死者を祀ったことが始まりだそう。

それ以降、リトアニアの人々にとってこの場所は、自国への愛と独立への強い想い、カトリック信仰の現れ、平和に対する願いを込める特別な地になっています。

ポーランド人初のローマ教皇であったヨハネ・パウロ2世が1993年にこの地を訪れたことで、さらに多くの人々にとって聖地となりました。

再び注目を集める「荘園」の街

そんなシャウレイに、パクルオイスという街があります。1500年代に生まれたとされているこの街は、16世紀以降、荘園(マナー)として様々な領主と共に、戦争・進歩・崩壊を経ながら歩んできました。

中でも19世紀初頭から最も長い間この地を支配したフォン・ロップ領主は、芸術品や発明品、西洋建築の技法など多くを荘園に伝え、街の発展に大きな影響を与えます。
そのひとつが醸造や蒸留の技術でした。そのため、リトアニアで最も古い蒸留所のひとつが、ここパクルオイスに設立されたのです。

フォン・ロップ氏の肖像画(左)と、現在はホテルになっている邸宅

パクルオイス・マナー・ハウスは大規模な修復を経て、今再び、バルト海沿岸エリアの中で最も有名な文化発信地・観光地のひとつとなりました。ホテル、レストランのほか、邸宅の見学ツアーや花祭り、光の祭典など、さまざまなイベントも開催され、国内外の観光客で賑わっています。一歩足を踏み入れると、まるで貴族や当時の人々の歌声が響く邸宅だった時代にタイムスリップしたかのよう!

パクルオイス・マナーの風景。ため息が出るほど美しい・・・まるで絵画のよう。

新たな命を吹き込まれた蒸留所

その一角にあるのが、今回ご紹介するスピリッツを製造しているパクルオイス・マナー蒸留所
パクルオイスの蒸留所は、もともとは、高名な薬剤師・クヌート氏により、マナー内の薬局施設の一部として16世紀初頭に建設されました。当時の薬といえばチンキ剤。かつての蒸溜所では、地元のハーブや蒸留酒を使った様々なチンキ剤が作られていたそう。その後、高品質な飲料なども製造されるようになり、地元の人々に愛され、大切に育まれてきました。

2018年の終わりに蒸溜所を蘇らせたのは、ウイスキーの輸入販売やバーの経営といったキャリアを持つサルナス・カラリウスさんです。

歴史ある蒸溜所を現代に蘇らせたサルナス。

周囲の自然に育まれる味わいと香り

パクルオイス・マナー蒸留所のスピリッツは、その土地の恵みと伝統を生かして、周辺の森や畑で採れる植物・食材を原料に作られています

蒸留所から20km離れたところには小さなハーブ農園もあり、そこで多くのハーブを栽培しています。一番人気のリキュールに使われているタイムというハーブは、蒸留所の近くの畑で自分たちで育てています。

ボトルも薬瓶みたいでかわいい!さすが薬局に併設された歴史を持つ蒸溜所。

その理由をサルナスはこう話します。
「私たちが地元の食材を選ぶ理由はとてもシンプル。なぜならそれが最も純粋で、最も香り高くて、最も自然な食材だと信じているから。
そしてすぐ近くにあるということは、成長をいつも見守りながら絶好の収穫タイミングを選べるという利点もあるんだ。」

ハーブを見る眼差しも優しい。どれだけ大切に育てられているかわかりますね。

本来、地元の食材を旬のタイミングでいただくことが、体にも環境にも一番いいことはわかっていますが、とはいえ実際にやるとなると大変なこと。
それでも彼らは、それがナチュラルでベストであるというシンプルな信条を貫いて、愚直に自然と向き合いながらスピリッツを作っています

「温故知新」で蒸留酒をもっと自由に

地元の伝統や歴史を重んじる一方で、彼らは挑戦も忘れません。
「蒸留にはかなり古い蒸留釜を使用していて、薪の火で蒸気を作っていましたが、現代の蒸留器も導入して、ジンに使用してみることにしました。将来は新旧の技術をミックスして色々とトライすることを楽しみにしています。」(サルナス)

蒸溜所の内部。歴史あるものと現代の設備が融合しています。

植物由来のスピリッツを作るには、時間も手間もかかりますが、彼らは常識やカテゴリーにとらわれず、自由な発想とインスピレーションで様々な材料からユニークなレシピを開発し、国際的なアワードや品評会で多くの賞を受賞しています。

彼らは、愛と誇りを込めて自社商品をこう呼んでいます。
「Spirits for free spirits(自由な精神のためのスピリッツ)」

ホースラディッシュやスモークベーコンといったユニークなフレーバーも!自由!
猫のボトルが可愛いジン。世界最高峰のジン品評会「World Gin Awards 2023」で国別最高賞を獲得!

さらには、樽熟成も始めたそうで、ウイスキーをはじめとする樽熟成酒も登場する予定なんだとか。サルナスの挑戦と好奇心はとどまるところを知りません。

最後にサルナスから日本の皆さんへメッセージ。
「私たちのドリンクには、リトアニアの文化がたくさん詰まっています
南部の家庭で作られるスープからインスピレーションを得たものや、私たち自身が森で摘んできたハーブを使用したワイルドな自然を表現したものもあります。
日本の皆さんにも、私たちのドリンクを飲みながら、まだ知られていないリトアニアの味や文化に触れていただけたら嬉しいです。」


パクルオイス・マナー蒸溜所の酒類は現在、ヨーロッパ8カ国と韓国、台湾で販売されています。日本での販売はまだ少し先になりますが、ぜひお楽しみにお待ちください!

待ちきれない!という方は、ぜひパクルオイス・マナー現地に行ってみてはいかがでしょうか?おおらかな敷地全体で、リトアニアの文化と歴史を感じられますよ。

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※法人の方に限らせていただきますのでご了承ください。

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