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絵画の様式論

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#福沢一郎

絵画の様式論(三)

絵画の様式論(三)

本稿においては、画家が採用するいくつかの表現形式を様式と呼ぶ一方、その奥底に通底する本質的な核心を「様式」と言いたい。その具体的な事例として、藤田嗣治と福沢一郎にとっての「様式」が陰にあることは、すでに見た。だが、結局のところ、陰とは何なのか。なぜ両者による絵画には、程度の差こそあれ、それぞれ陰が顕在化していたのか。陰とは、いったい何を意味しているのだろうか——。陰という「様式」の具体的な内実を探

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絵画の様式論(二)

絵画の様式論(二)

時代を象徴する様式ではなく、美術家の本質を示す様式——。つまり絵描きにとっての様式について考察を深めるようになったのは、その後、阿部展也と福沢一郎の回顧展を続けて鑑賞したことが大きい(「阿部展也——あくなき越境者」は埼玉県立近代美術館で11月4日まで、「福沢一郎生誕120年」は富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館で11月11日まで、それぞれ開催)。前者は1913年生まれであり、後者は1898年生

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