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差別の引き継ぎしちゃうおじいちゃん 映画『ラストシフト』 名作かと 〜映画感想〜

ラスト・シフト(2020年製作の映画) The Last Shift 製作国:アメリカ
上映時間:90分
監督 アンドリュー・コーン
脚本 アンドリュー・コーン
出演者 リチャード・ジェンキンス  シェイン・ポール・マッギー


『扉を叩く人』『シェイプ・オブ・ウォーター』のリチャード・ジェンキンスだ。



どうりで素晴らしい演技なわけだ。

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この映画、なかなかの名作なのでは?



すごい良かったですけどね。

パッと見、コツコツ働いて清貧の暮らしを粛々と続けてきた白人おじいちゃんのスタンリーは主役として好感の持てる人物。

「愚直」と言えば褒め言葉だけど、単純に「愚かしい」と言えるエピソードも語られていく。
(中古自動車周辺や施設の母親を迎えにいくくだりなど)

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翻って黒人の若者ジェボンは、前半は反社予備軍みたいな存在だが次第にマジメさが強調され、
終盤では短絡的な行動に出るスタンリーと比較してまるでジェボンの方が老人メンターなようなオーラを出してくる。

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中間管理職の黒人女性チャズも重要な役。

職場の立場では前出の2人より上だけど 
社会差別構造の中では白人男性、黒人男性より立場の弱い黒人女性である。

ジェボンとチャズは生まれた時から人種差別、性差別に遭っているが
狭い世界で生きてきたスタンリーはそれを理解しない。

女性の社会進出、黒人の権利平等を白人のスタンリーは脅威に感じている。

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ラストシフトってのはつまりは〝引き継ぎ〟のこと。


新しいバイトに仕事を引き継がなきゃいけない。

老人スタンリーからすると10代のジェボンは2世代下の若者。

仕事は引き継がなきゃいけないけど、
〝差別〟は引き継いじゃいけないわけよね。

ここで断ち切っておくべきこと。
しかし愚かなスタンリーにはそれができない。
若者を導くのが老人の〝仕事〟だろうに。

しかも「ラスト」だったのに。
60年くらい生きてきた人間がする行動とは到底思えない。

ジェボンの人格や人生や未来を軽んじている。

スタンリーが主役だからなんとなく見れてしまうけど、これジェボンが主役だったらスタンリーは救いようのない愚かな悪役ですよ。

だけどパッと見、そうは見えない。
「ま、仕方ないよね」的な空気が出ている。

それがこの映画のミソ。

割と名作だと思います。
次作に期待大!!

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