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"有害な男らしさ"完全否定 !! 映画『パリタクシー』 ネタバレあり〜映画感想〜

パリタクシー(2022年製作の映画) Une belle course/Driving Madeleine
上映日:2023年04月07日
製作国:フランス
上映時間:91分
監督 クリスチャン・カリオン
脚本 クリスチャン・カリオン
出演者 リーヌ・ルノー ダニー・ブーン

観た直後の感想

主役2人とオールディーズにねじ伏せられた感もあるけど素晴らしい演技(人間力)と音楽になら正しいねじ伏せられ方かと。
2人の顔が素晴らしくて、顔だけで人生讃歌になっちゃう。
昨晩2時間くらいしか寝れなかったのもあって冒頭は眠気と戦いましたけど、、まさかの事件が勃発してからは目ランランだしまだまだ終わって欲しくなかった。
でも90分で終了!クール!カッコイイ!セボンッ!
ダニー・ブーン がとにかく渋かった。。。
『ミックマック』youtu.be/aTJJpaTJ5rQ のイメージだったけど、こんな深みと慈愛に満ちた男を演じられるようになってたなんて。。
立ち耳の何が悪いんだと。
立ち耳って可愛いじゃんね。
あ、男にしては可愛く見えちゃうから〝立ち耳〟はいまいちってことかな?だとするとテーマと近いのか。


『パリタクシー』の構造は単純に言うと「男性が女性の話を聞く」というもの。

しかもその話というのは、
上映時間のほとんどが女性の話を聞く時間な訳ですから(実際は回想の映像という形で)、
"長い"話なわけです。

女性の話は長いだの回りくどいだのと揶揄され続けてきたし、
ニュース番組の多くは「中年男性司会者の話を若い女性が聞く」というシステムのものが多かった。

それがここ数年変化してきています。
「話が長いのは男の方だ」という研究結果があったり
ニュース番組でも真ん中に女性が座っているというのも本当に多くなってきていると思います。

そこに来て『パリタクシー』は「男性が女性の話を聞く」構造。

****

最初は違和感がありました。


主役の老女は男性によって苦しんだ人生を送ってきた人なわけです。
その彼女がなぜ男であるタクシー運転手にペラペラと自分の人生を語ったのか。
こんなにいきなり喋るかな、と。

そうしないと映画が進まないってのもあると思いますけど、、、、
ダニー・ブーン演じるタクシー運転手が「有害な男らしさを持たない(が少ない)」男性だったからでは?と推測します。

****

人生の窮地に立たされているこの運転手は冒頭はとてもイラついていました。

しかし老女の話を聞くうちにどんどん柔和になっていく。
それに呼応するように老女もさらに心を開いていく。

"有害な男らしさ"の前では実現し得ないこと。

***

しかも彼女が語る過去の話は、
ひたすらに〝有害な男らしさ〟について。


フランスでさえも50年前はこんなだったのか、、と。
彼女はなかなか壮絶な闘いの半生を語ります。

それを聞いているのは男(運転手)。
女性同士で語り合っているわけじゃない。



ネタバレは以下に


マドレーヌは過酷な半生を経て、女性の権利向上の活動に後世を費やし一般的にもその名を知られるほどになった。

演じたライン・ルノー自身もHIVの研究を支援する団体を設立した人物。

ラスト。
老人ホームに入って自動ドアに阻まれる二人は良いシーンでしたね。
あれもとてもロマンチックでしたが
恋愛的な印象はなく、友情、友愛の気持ちに見えましたね。

彼女の人生は壮絶で、
単純に考えるならマドレーヌは「男」を憎み、嫌悪し、敵とみなして生きてきたと考えてもおかしくない。

なのに、
マドレーヌは男であるシャルルに自分の人生を開示し、
ラストでは101万ユーロ(約1億5千万円ですよ!!)を残した!

↑ま、これは寓話ですよね。リアリティよりもおとぎ話感でふわっと着地させたのでしょう。
(あと、あの豪邸ですから、まだまだ他にもたくさん寄付したんだと思いますよマドレーヌは。)

にしてもなぜシャルルを選んだのかっつったら
次の時代の新しい男性、優しくて話を聞ける男性に
「よろしくね」ってな感じで未来を託したのかな、と。


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