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『ピアノ・レッスン』の恐怖再び 映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画) The Power of the Dog 上映日:2021年11月19日 上映時間:125分
監督 ジェーン・カンピオン
脚本 ジェーン・カンピオン
出演者 ベネディクト・カンバーバッチ キルスティン・ダンスト ジェシー・プレモンス


 

「大丈夫だ。お前の未来に何の障害物もない。」


顔がほぼマット・デイモンのジェシー・プレモンスと
顔がほぼウィノナ・ライダーのコディ・スミット=マクフィー。

この二人はほとんど交流ないのですが。


大自然なのに閉鎖的で息苦しい空間

『ピアノ・レッスン』もニュージーランドのジャングルの中のピアノが印象的でしたが、
今回も自然の中にピアノが現れます。

ピアノってのはおそらく「文明」とか「快楽」みたいなイメージなのでしょうね。
人間なんて寄せ付けないような自然とピアノとの対比が面白い。

今回は、モンタナ州の広大な牧場の中のピアノ。
牧場つったって荒野で遠くの山に360度囲まれているような自然真っ只中の状況。

自然の中でおいしい空気の中のびのび、、、なんてできない閉鎖的な少人数の人間たちによる息苦しい人間関係が、『ピアノ・レッスン』と『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の共通点。

嬉しいですよ。『ピアノ・レッスン』を再び見れるんだぁ、と喜びましたよ。


そしてその喜びよりももっと素晴らしく広がりのある苦しい人間ドラマでした。

カンバーバッチが支配的な男の役なのですが、彼自身の繊細さが滲み出ているので、「男ってもんは強くあらねばならぬ」ってのに囚われて(憧れて)しまっている悲しく寂しい男性像を演じていて、素晴らしかったです。

彼の愛の向く先がどこなのか、誰なのかが気になって気になって。
どうやってこの男に綻びが生じてくるのか。
どんな破壊が待っているのか。

素晴らしい展開でしたよ。
イヤなやつがイヤな目に遭うだけの浅い展開ではなかったですよ、さすがですよ。
どんどん先へ先へと観客を導いてくれる展開。

ウィノナ・ライダー似のコディ・スミット=マクフィーがファムファタルと言ってしまうと単純なんですが、、かなりの策士で面白かったですね。


ネタバレは以下に。


ピーター(コディ・スミット=マクフィー)が見つけた牛の死体。

その牛から剥いだ皮をフィン(カンバーバッチ)にあげた。ピーター「あなたに憧れて」

ピーターとフィンが一夜を過ごした後、フィンは体調を崩してしまう。そのまま死亡。

その牛が炭疽症だった?それがフィンの死因?

ローズとジョージはフィンの支配から逃れることができたが。


***

ラストがちょっと、、「こうなって、ああなって、そうなって、こうなりました」と箇条書きのような、説明シーンを重ねていくだけのように感じて、そこがちょっと惜しかったな。

もしかしたらわざと?

フィンの死を劇的な、エモーショナルなものにわざとしなかったのかも。

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