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図書館員流「何かおすすめの本、ない?」という難問への答え方

レファレンスカウンター(本の相談窓口)にはいろいろな相談が来ます。

たとえば、「○○という雑誌の2002年5月号に掲載されている、××という著者の△△という論文を入手したいが、文献複写依頼は可能か」というような具体的な相談内容なら話は早いです(入手困難な文献だったりすると別種の難しさはありますが)。

また「※※について調べたいが、どうすればいいか」くらいでも対応の仕方はある程度決まっています。

問題は「何でもいいんですけど、何かおすすめの本ってありますか?」という、ふわっとした相談です(今まで何回か経験しました)。
ただでさえ、人にものをすすめるのは勇気が要ります。万人にとっての良書など存在しませんし、私が好きな本でも先方のニーズに合わないかもしれません。相手が子どもであれば年齢別におすすめ本リストがあったりするようですが、大人だとそれも難しいです。

私が実践しているのは以下のとおりです。

①まず既存のおすすめ本コーナーを案内する
図書館ではもともとこういった質問を想定して、「今月の新刊」「図書館員のおすすめ」「テーマ展示」などのコーナーを設けているので、そこを見てもらう作戦です。
しかしカウンターで質問するような人には「もうそこは見た」と言われてしまうことも多いので、次の手を考えねばなりません。

②隠れたニーズを掘り起こす
「抽象的な質問はできるだけ具体化する」のがレファレンスの鉄則です。一見ふわっとした質問に見えても、裏には具体的なニーズが隠れていることも多いからです。そこで利用者に質問をして、検索の手掛かりになるワードを引き出そうとします(レファレンス・インタビューといいます)。
そこで「好きな作家名」「最近読んで面白かった本」「ミステリー系?」「動物が出てきて、ほっこりする感じ」とかが引き出せれば、それに沿っておすすめを考えます。
それでも「いえ、本当に何でもいいんです。あなたがおすすめのもので」という「頑固にあいまい」な人もいるので、そうなると最後の手段です。

③「本を紹介する本」を紹介する
「ブックガイド」「書評集」などですね。日本十進分類法では「019(読書)」がこれにあたるので、その棚を案内したり、良さそうな1冊を選んで渡したりします。
さらにジャンルを特定したブックガイドは各分野の棚にあるので(たとえば写真集に特化したブックガイドなら写真の棚とか)、好きな分野があればそこから選びます。
また参考図書のコーナーでは「書誌」といって本の情報を大量に集めた事典のようなものがあるので、そこから選ぶこともできます。

④えいやっと適当に選んでしまう
いよいよ何も引き出せなかったり、閉館まぎわで時間がなかったりすると、もう腹をくくって、本当に自分が個人的に好きな本とか、パッと思いついた本をすすめてしまったこともあります。
後になってその対応で良かったのか一抹の不安もよぎりますが、今のところ「おまえがすすめた本がつまらなかったじゃないか!」という苦情が来たことはありません。フィードバックがないとなかなか検証ができませんが、ある意味おみくじを引くような感覚でランダムな出会いを求めているだけなら、それはそれでいいのかもしれません。

最近では本をすすめてくるサイトもいろいろありますし、書店員さんが客に好みを聞いて本を選んでくれるサービスもあるようですが、正解のないものだけに「人に本をすすめる」という仕事はそれだけ難しく、発展途上でもあるのでしょう。
自分でもふだんからなるべく書評などに目を通したり、新しく入った本にブックガイド的なものがあればチェックするようにしています。



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