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2022年7月に移転オープンしてから約1年が経ちます。
移転時に大きく変化したものの一つとして、CT、MRI導入による脳神経外科外来の拡充です。

脳神経外科専門医による診察とCT、MRIが同時に受けられるクリニックはあまり多くないため、今後も患者さんの負担軽減を図れるように尽力していきます。

当院脳神経外科では物忘れ外来を行っているため、認知症や物忘れ、記憶障害など認知機能の低下を訴えられる方が多くおられます。

認知症は年々増加傾向にあり、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるという推計があります。※2017認知症疾患診療ガイドライン

認知症には種類があります。
・アルツハイマー型認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭型認知症
・脳血管性認知症
これら以外にも認知症のような症状が出る疾患はありますが、認知症というと、この4つの内のどれかという場合がほとんどです。

アルツハイマー型認知症は最も聞き馴染みがあると思います。
脳が全体的に萎縮する変性疾患です。

レビー小体型認知症は幻覚などの精神症状やパーキンソン病のような症状が特徴的な変性疾患です。

前頭側頭型認知症は特徴的な人格変化や行動異常があり、脳の前頭葉や側頭葉といった限局した場所に変性を認めます。

脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血など脳卒中が原因の認知症であり、認知症全体の約20~30%を占めていると言われています。血管の病気でもあるため生活習慣病の治療や予防が重要になります。

これらが混合している場合もあり、臨床での症状だけでなく、MRIなどの画像診断もとても重要になります。


上記の認知症治療はご存じの通り、病気自体を完全に治せる治療法がありません。そのため疾患自体の治療というよりは、症状のコントロールが重要です。

認知症の症状には中核症状行動・心理症状(BPSD)があります。

・中核症状
脳の障害によって起こる記憶障害や見当識障害を指し、認知症患者であれば必ずみられる症状です。
・BPSD
中核症状に付随する二次的な症状であり、徘徊や幻覚、妄想、不潔行為やうつ状態、不眠などがあります。

BPSDは症状の有無や程度の個人差が大きく、中核症状と比べて、より生活に支障をきたし、介護の負担が大きくなることが特徴です。

このBPSDをしっかりコントロールすることが認知症治療の上では重要になります。


認知症に対して改善に向けて効果のある治療法はないと言いましたが、症状の進行を抑えられる可能性はあります。

まずは運動です。
脳血管性認知症の場合は特にそうですが、脳の血流不足が挙げられます。全身の血流を上げたり、循環を良くする場合には運動がとても有効です。
血流を上げる目的であれば有酸素運動がお勧めです。
有酸素運動は全身に酸素を送る能力を高めることができるため、脳への酸素供給という意味でも効果があると言えます。

また認知症になると生活や行動範囲が狭くなるため、体力や筋力など身体機能が低下していく傾向にあります
特に体が硬く、動作が不安定なり転倒や骨折なども増えます。
柔軟性を維持したり、筋力を維持することは、認知症の進行を遅らせる以外に安定した生活を送るために必要なことです。
デイサービスや訪問リハなど介護保険のサービスを利用することが理想的です。

2つ目は題にもあるように食事、栄養です。
これば冒頭に紹介した過去の記事にも書いてあります。

この記事では腸内環境を整える方法を書いています。
それ以外に注目されているものを紹介します。

DHA・EPA

DHAやEPAは脂肪酸の1つで、体になくてはならないものです。
特にDHAは記憶や学習といった脳機能を維持するためにとても重要な働きをしています。

さまざまな研究がありますが、アルツハイマー型認知症の方の脳では、海馬という記憶を司る領域のDHAが半分以下だったという結果もあり、DHAの重要度を示しています。
脳血管性認知症についてもDHAの欠乏が示唆され、補充をすることにより症状の改善を認めたいう報告もあります。

DHAは青魚の他に、サケやウナギなどにも含まれています。
食事から摂取することが理想ですが、難しい場合はサプリメントでも摂取することができます。


亜鉛

亜鉛の摂取が少なくなり欠乏状態になると記憶障害や貧血、免疫力の低下などの症状が出る可能性があります。
人間の体を正常な状態に維持するためには、ホルモンや酵素などの働きが必要です。亜鉛はこれらの働きをスムーズに行うための栄養素であり、脳も例外ではありません。

亜鉛欠乏は高齢者に限らず、健常成人でも不足しがちな栄養素です。
特に高度に精製、加工された食品は亜鉛が少なくなりやすいため、注意が必要です。

亜鉛はサプリメントの他にも、お薬として処方できる場合もありますので、診察時に一度相談されてもいいかもしれません。


ビタミンB群

ビタミンB群などは摂取した栄養素をエネルギーに変換してくれる働きがあるため、多くのエネルギーを必要とする脳にとってはとても重要です。

また最近ではホモシステインとアルツハイマー型認知症の関連が注目されています。

ホモシステインはアミノ酸の一種です。
ホモシステインから必須アミノ酸であるメチオニンが作られますが、その際にビタミンB群が必要になります。特に葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12が重要であり、これらが欠乏すると血中のホモシステインの濃度が高くなります。
ホモシステインの濃度が高くなると動脈硬化を引き起こすことが知られており、脳梗塞や心筋梗塞などの原因となります。
そのため脳血管性認知症などと関連している可能性もあります。
またホモシステインの濃度が高い場合、脳萎縮の進行が早くなるとの研究結果もあり、アルツハイマー型認知症との関連も示唆されています。

ビタミンB群は、一見認知症などと直接関係がないようにも思えますが、身体は様々な栄養素を使い、生体を維持しているため、思いもよらない場所に影響がでる場合があります。

その他にも脳や認知症に効果のある栄養素はたくさんありますが、これだけを摂っていればいいというものは存在しません。
基本的にはバランスの取れた食事を摂取することが一番大切ですし、食材や調理方法などを工夫することで、十分補うことができます。
自然の摂理から考えても、食物から摂取することが最も合理的と言えます。


しかし高度に精製、加工された食事などが増えた現代の食生活ではそうはいかないかもしれません。

その際に手助けしてくれるものがサプリメントです。


当院では、原材料や品質がいいサプリメントを提供しています。

市販の物と比較すると、やや値段が高くなりますが、原材料の品質や栄養素の含有量などを保証するためには必要と考えています。

内科、脳神経外科に関わらず、食事や栄養に関してわからないことがあれば、管理栄養士による栄養指導やサプリメントアドバイザーの資格をもった医師による説明なども実施しております。

診察時にお気軽にお問い合わせください。



今回は認知症に関連する栄養の話を行いました。

どんな病気も、食事が整っていなければ治療はうまく進みません。
生命の基本でもありますので、正しい知識を得て、行動に移していきましょう。