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慢性腎臓病(CKD)について

慢性腎臓病は日本の成人の約8人に1人が罹患しており、高齢化により今後さらに増加すると予測されています。

慢性腎臓病は腎臓の働きが健康な人の60%以下に低下するか、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を言います。(日本腎臓病学会)

年齢と共に腎臓の機能は低下していきますので高齢になれば慢性腎臓病は多くなります。

慢性腎臓病は心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を引き起こす危険因子になっており腎臓を守ることで、心臓や他の臓器を守ることになります。

慢性腎臓病は腎臓の働きが低下した状態と言いましたが、腎臓の働きについて改めてみていきましょう。

まず一つ目に腎臓は体の老廃物を除去してくれています。
血液が腎臓の中に入り、必要な栄養素と水分が再吸収されます。この時余分な水分や老廃物などは尿として膀胱に溜まり、排泄されます。
つまり血液をきれいにろ過してくれている臓器です。

二つ目に水分と共にミネラルの調整を行っています。
ミネラルとはナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムなどの総称であり聞いたことがあると思います。
このミネラルには適度な濃度がありこの濃度を調整してくれているのが腎臓です。腎臓病の場合このバランスが崩れやすいためむくみが出たり、不整脈が出たり、時には生命の危機に関わることもあります。

三つ目に体液の㏗(酸アルカリの度合)を調整しています。
人の体液の㏗はほぼ中性に保たれています。
一方体の中では食事摂取によりエネルギーを作る過程で大量の酸が作られます。この酸を排泄してくれているのが腎臓です。
また中性にするため腎臓から重炭酸イオンというアルカリ性の物質を放出します。この二つの機能で体はほぼ中性に保たれています。
つまり腎臓の働きが悪くなると体が酸性になり、この状態が続くと、免疫力が低下したり、疲労感や脱力感などの症状が出ることがあります。

四つ目にホルモンを作る役割があります。
代表的な物としては血圧を調節する『レニン』というホルモン
血液を作るために必要な『エリスロポエチン』というホルモン
さらに骨を丈夫に保つ『活性型ビタミンD』を作っています。
腎臓病によりこれらのホルモンの産生が低下すると、血圧が高くなる、貧血になる、骨がもろくなるということは想像できると思います。

このように腎臓の機能は多岐に渡り、体の状態を自動的に調節してくれているありがたい臓器です。
多様な機能があるため腎臓病になってしまうと、体のさまざまな機能が低下し多くの症状が出現します。

そのため腎臓を機能をできるだけ落とさない努力が必要です。


慢性腎臓病が悪化する原因の多くは生活習慣病です。
特に高血圧、糖尿病、脂質異常症などがあります。

先ほど腎臓は血圧を調節しているといいました。
それは血圧を調節することで腎臓の血流やろ過を円滑に行うためです。
高血圧の状態が続くと腎臓に過度の負担がかかり、動脈硬化が起こります。
すると腎臓に流れる血液の量が減ってしまい水分の排泄やろ過ができなくなるため腎臓の機能が悪化します。

また糖尿病により高血糖の状態が続くと、腎臓の糸球体という組織が障害されます。この部分が障害されると尿からたんぱくが漏れ出てしまうたんぱく尿が出るなど、ろ過機能が低下します。

脂質異常症の場合もコレステロールなどが血管の壁に溜まり、動脈硬化を引き起こすためやはり高血圧や糖尿病などと同じく腎臓の機能を低下させる原因となります。

このように生活習慣病が慢性腎臓病を深く関わっていることがわかると思います。

ではどのように改善していけばいいのでしょうか。

生活習慣病の治療は食事、運動、薬です。

その中でも一番大切なことは食生活の見直しです。

バランスの良い食事とよく言われますが、たんぱく質(肉、魚、大豆、卵など)、脂質、糖質、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどをまんべんなく摂取することが重要です。

また最近は腎臓病と腸内環境の関連が注目されています

運動に関しては有酸素運動や筋力トレーニングなどをバランスよく行うことが大切です。


慢性腎臓病について簡単に解説してきました。
慢性腎臓病の患者さんは増加傾向にありますが、まだまだ知られていない病気でもあります。
まずは知ることが大切ですので、少しずつお伝えできればと思います。