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【追悼】アントニオ猪木死す

尊崇するアントニオ猪木の死をまさか自分が朝日新聞デジタルのコメントプラスで追悼するとは想像もしていなかった。同時代の幼少期から青年期にかけて最も影響を受けた偉人の一人である。 アントニオ猪木のプロレスラーとしての功績は多岐にわたる。師匠・力道山が切り開いたプロレスを街頭テレビの文化から、格闘技文化としてショービジネスとしてTVコンテンツとして確立させ、日本文化に定着させたこと。 異種格闘技戦を中心に、プロレスから格闘技の垣根を越えて、ボクシングや柔道、空手など様々な格闘技と戦い交流することで、後のグローバルな総合格闘技への道を拓いたこと。 さらには日本国内にとどまらず、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、ロシアなど世界中のレスラーや格闘家とのネットワークを構築し、世界と交流するパブリックディプロマシーのプラットフォームを作り上げたこと。 何よりもアントニオ猪木自身の戦いを通じて、「闘魂」「ストロングスタイル」など思想を確立し、プロレスとは思想でありイデオロギーであること、肉体を通じたコミュニケーションであり、リング上のドラマツルギーであることを体現した。それを継承したものが前田日明であり、長州力でありその他数多くの弟子たちである。 政界に進出後も、グローバルに活躍した。湾岸戦争に直面して人質となった在留邦人の解放を実現させた。恩師にゆかりのある北朝鮮とも交流し平壌でのプロレスイベントを成功させ国交正常化を追求した。 そして人生の最期を、病との戦いとして、闘病生活までYouTubeで公開した。死ぬ直前まで戦う姿を人々に見せつけた。 アントニオ猪木の人生の戦いを、ブックだショーだといくらでも批判はできるだろう。しかし上記に挙げたような越境的で挑戦的でグローバルな活動をこのアプローチで実現できたものが他に日本にいるだろうか。その偉大な功績をここに讃え、追悼の言葉として残したい。長い人生の戦い、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。 (※この投稿は朝日新聞デジタルのコメントプラスを転載したものです。)

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