モンスター・イン・キャッツ・クロージング

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モンスター・イン・キャッツ・クロージング◆#エピローグ◆

「新しい舎弟はどうだ、ビホルダー=サン」
 トコロザワ・ピラー内、シックスゲイツ専用休憩室。新聞を読みつつ寛いでいたビホルダーに声を掛けたのはアースクエイクである。新聞に目線を落としたまま、ビホルダーは「まずまずだな」と応じた。
「反抗心が無いのでな。伸びが良い」
「それは何よりだ」
 アースクエイクはセンス良く設えられた質の良いソファに腰を下ろしながら、手に持っていた本を開いた。
「ケチなコソ泥

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モンスター・イン・キャッツ・クロージング◆#5◆

「ニンジャ……?」
糸の切れたジョルリめいて、カガシは床にへたり込む。
「ニンジャ、ナンデ……?」
激しいニンジャ・リアリティ・ショックの発症は無い。脳の許容限界である。しかし、それを差し引いたとしても、目の前にニンジャがいるという事実ですら、今のカガシにとってはさほど重要ではなかった。
父の中からニンジャが出て来た。では、父はどうなった?理解したくないが、理解しなければいけない。理解しなければい

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モンスター・イン・キャッツ・クロージング◆#4◆

 カガシの実の父はハギヲの弟だ。兄とは正反対、違法行為に及んで実家から勘当されたゴロツキだった。母には身寄りが無かったようだ。カガシを出産したのは正規の病院ではないらしく、今となってはどこから来て、どう父と知り合った女なのかもわからない。
どうしようもないマケグミだった二人は、現実逃避の果てにダウナー系違法薬物の中毒者へと成り果てた。カガシが物心付く頃には、もう両親の関心が彼へと向けられることはな

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モンスター・イン・キャッツ・クロージング◆#3◆

 ハラコ・ストリートからやや離れた場所にある安アパートの一室。平べったいフートンの中で、カガシは起床時刻を迎えた。
 停止させた目覚まし時計を手に取り確認する。就寝時間は遅かったものの、概ねいつも通りの時間だ。体調も悪くは無い。寝不足という感じもそこまで無い。
 養父を勤め先の社長に持つカガシだが、現在はこのアパートで一人暮らしをしている。プライベートの時間を互いに気兼ねなく過ごせるようにとのハギ

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モンスター・イン・キャッツ・クロージング◆#2◆

「火の用心!火の用心!」
 ハラコ・ストリートは中小企業のオフィス街に隣接する飲み屋街である。繁華街と呼ぶには活気が無く、通りに並ぶのは疲れ切ったサラリマンが酒で己を癒すためにあるような店ばかりだ。そのような静かな通りで、今は焦燥感を煽る警告合成音声が耳触りに響いている。遠くからはファイアベルの音も届いていた。
「また火事ですか」
「最近多いですね。怖いです」
 近くで会話するサラリマンの視線の先

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モンスター・イン・キャッツ・クロージング◆#1◆

(静かな廊下だ。足音が吸い取られるようだ)
一歩一歩、音を立てぬよう足を運びながら、男は思った。やけに薄暗い、とも思ったが、それについては不安から来る錯覚だろう。実際、天井に並ぶ蛍光灯は他のフロアの物と全く同じだし、確認できる限りそのどれもが真新しい。
当然だ。マケグミ企業のオフィスビルならいざ知らず、ここはトコロザワ・ピラーの中階層。ソウカイニンジャ達が邪悪なワザマエを磨くトレーニングフロアの中

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