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Your Own Book~第48回Book Fair読書会~

Book Fair読書会、無事に今年初開催できました!

2023年もよろしくお願いします!

それでは、本と帯の紹介をどうぞ!
(ニックネーム横の数字は、参加してくださった回数)

ヤマハさん(3):朝井リョウ『少女は卒業しない』集英社文庫

○○からの卒業

ヤマハさん

かえちゃんさん(7):加藤千恵『春へつづく』ポプラ文庫ピュアフル

懐かしい気持ちと再会して
      春に向かって歩き出す

かえちゃんさん

こーせーさん(40):伊藤洋志『ナリワイをつくる 人生を盗まれない働き方』ちくま文庫

小さな居場所を
  たくさんつくる

こーせーさん

平山さん(2):エルトン・ジョン『ME エルトン・ジョン自伝』ヤマハミュージックエンターテイメントホールディングス

僕の歌は
 君の歌

平山さん

まさやさん(初):ヨハン・ノルベリ(訳:山形浩生、森本正史)『OPEN 「開く」ことができる人・組織・国家だけが生き残る』ニューズピックス

歴史が証明する
  OPENの重要性

まさやさん

かなさん(13):山田詠美『ぼくは勉強ができない 改版』新潮文庫

あなたはどんな人でいたい?

かなさん(が影響を受けた、こーせーさんの帯)

nakanoさん(3):小川哲『君のクイズ』朝日新聞出版

nakanoさん

ごきげんさん(2):李琴峰『生を祝う』朝日新聞出版

自分で決めた人生だから
辛い時も生きていける?!

ごきげんさん

ふっかー(48):地球の歩き方BOOKS『世界のカレー図鑑』

華麗なるスパイステクニック、カレー界のメッシを探せ!
1月22日は「カレーの日」です
🍛

ふっかー

◆2023年は朝井リョウが熱い!?

新年一冊目、ヤマハさんの『少女は卒業しない』でスタート。卒業と廃校が同時に訪れる、高校生活最後の日々を描いた7話の連作短編集です。

「高校時代以来、10年ぶりくらいに読み返しました。あの頃は登場人物と同じ目線で共感する〈あるある〉が多かった。今読むと、何故こうしたのか、こう言ったのかと、俯瞰するように読んでいました」

「改めて思ったのは、朝井さんは女子の心理を描くのが上手いなと。女性アイドルが主人公の『武道館』もそうですが、観察力のすごさを感じました。身近にいたら、めっちゃ観察されそう・・・

「帯は、少女たちは学校と同時に、友人や恋人、今まで自分が抱えていたものからも卒業する物語であることを表しました。ただ、タイトルは”卒業しても、自分の中身は変わらない”という意味なのかな、とも思いました」

今年は本作と、『正欲』(第42回であまねさんが紹介)が映画化。おそらく賛否両論吹き荒れるかと思いますが、朝井リョウさんが”熱い”一年になるのは間違いなさそうです。

◆純粋な願い

続いて、かえちゃんさんも「卒業」がテーマの青春小説を紹介。こちらは中学校が舞台の『春へつづく』です。
作者は、朝井リョウさんと一緒にラジオパーソナリティーもしていた加藤千恵さん。カバーイラストは『失恋ショコラティエ』の水城せとなさんが描いています。

「卒業式の朝だけ、願い事を叶えてくれる“あかずの教室”。〈もし入れたら、何をお願いする?〉 そんな会話から始まる、8つの掌編たちです」

願いを持っているのは、中学生だけではありません。彼らの周囲にいるコンビニ店員や、学校司書の”重め”な事情も明かされます。
眩しい子どもと現実的な大人、どっちの気持ちがわかる今読むからこそ、いいなと思える作品です」

そんなかえちゃんさんの”すごく好きな一文”は、竹部真織という女子に想いを寄せる男子のつぶやき。

【竹部の一挙一動を気にしはじめる自分がいた。まおり、という名前も、どんどん可愛いものに思えてきた。初めて聞く名前が彼女のもので、本当によかったなどと考えていた】
めっちゃピュア・・・。

雑談パートでは、作中で親子の会話に出てくるミュージシャン・岡村靖幸さんの話題で盛り上がりました。ちなみに私は『住所』『マクガフィン』など、クセ強めなコラボ曲が好きです。

◆ちょこちょこは力なり

こーせーさんが薦める本は『ナリワイをつくる』です。

「昔の人たちは集落の中で家を建てるとき、 全員が大工でなくとも一人が指示を出して、みんなで家を建てるということをやっていました」

今は、ついお金を出して"やってもらう"生活になりがち。そういったことは、なかなかできなません。でも…
お金をかけなくても生きていく術はいろいろある。この本では、そういう体験をちょこちょこ作っていくことが、ナリワイや自分の居場所作りになると言っています」

「著者は、自家栽培などで生活コストを少なくした上で、その分モンゴルに行っていろんな体験をしようとか、みんなが楽しめることを集めていこうとしています」

こーせーさんがこの本をオススメしたくなった理由は、読書会も同じ構造だと感じたから。

みんなの居場所を作りながら、自分たちの居場所になっている面も大きいんです。 これからは読書だけでなく映画も、土日だけでなく平日も…というように、そういう場をもっと増やしていきたいですね」

2023年、こーせーさんのテーマは「小さなイドコロを増やす」。そこから生まれるつながりを、楽しみにしています!

◆自分を閉じないベテランたち

2回目の参加となった平山さんは、この日も複数冊を用意してくださいました。
その中でも、帯を書いてくださったのは『ME』。世界的に知られるシンガーソングライターでありピアニスト、エルトン・ジョンさんの自伝です。

「彼は70年代からいくつもの依存症に苦しみ、治療などによる活動休止と復活を繰り返していました。00年代に入ると、映画監督の男性とパートナーシップを結び、その後2人の養子を迎えます。
子どものサッカーの送り迎えをしている時、若い頃には得られなかった幸せを感じたエルトンは、育児に専念するためツアー引退を表明します」

エルトンで私が好きなところは、後輩の面倒見の良さ。例えば、マドンナと曲調が似ている、と批判されたレディー・ガガを擁護し、後に養子の名付け親になってもらうほど親交を深めました。
また、薬物依存と闘っていたエミネムとコラボシングルを出し、売り上げの多くを彼の援助に回してもいました。デュア・リパをグラミー賞に引き上げてもいます」

そして、”若手のキャリアを助ける大物”という共通点で、平山さんはオール巨人さんの『漫才論』を取り上げます。

「昨年までM-1グランプリの審査員を務めていたオール巨人師匠は、YouTubeで自分より40歳下の芸人を研究している。M-1で2回戦に進出したコンビに関しては、劇場にもなるべく足を運んで、ネタに目を通しています。
(エルトンと同じく)地位を築いた後も若手をヘルプしながら、自分の成長にもつなげていくことが好きなのかなと思います」

エルトンに話を戻すと、この自伝を読んでから楽曲を聴くことで、歌詞の意味も変わってくるのだとか。『I'm Still Standing』『Rocket Man』などの曲や、伝記映画『ロケットマン』と併せて読むと、より楽しめる一冊でしょう。

◆白目がある動物は、人間だけ!

他者に対し「開く」こと。その重要性は、個人のみならず国家・文明単位でも同じようです。
歴史好きだという初参加のまさやさんが、スウェーデンの歴史家による『OPEN』を通し解説してくださいました。

発展する国や文明は、他の国の人や文化に対して開放的で、受け入れている。逆に、海軍をやめて万里の長城に頼っていた時代の中国のように、クローズしてしまえば発展は止まり、落ちていく」

「私がいちばん好きなくだりは、人間には白目があるけど、オランウータンやチンパンジーにはない(という記述)。
野生動物として生きる上では、自分が何を見ているかはバレない方がいい。でも白目があるから、アイコンタクトでコミュニケーションが取れる。つまり人間は、生まれながらにして、社会性を持ち誰かと関わるようになっていると書かれていて、なるほどなと思いました」

「一方で、人にはコミュニティの中で”敵を作る”本能もある。2つの本能がどちらに振れるかで、生き方も変わるし、社会が発展するかしないかが決まる。そこも面白かったです」

会場では「人に話したくなるエピソードが多そう」「読んでみたい」との声が多数寄せられました。

また雑談パートでは、「白目」から発展し、他の参加者さんから”恋のサバンナで生き残る”ための貴重なアドバイスがありました。

◆クイズって、競技なんだ

nakanoさんは、今年の本屋大賞候補でもある『君のクイズ』に、読者への”クイズ”としての帯を付けてくださいました。

その問題とは、作中で本庄絆(「脳に世界を格納している」とまで言われる東大生知識王)という人が、クイズ大会の決勝戦で成し遂げた”ゼロ文字解答(問題文が読まれる前に正解する)”の可能性について。

「この本が面白いのは、クイズプレイヤーの思考回路が見えるところ。彼らは問題を聴きながら〈確定ポイント〉を見つけ、頭の中で答えを絞り込んでいくんです。百人一首にも近い感覚ですね」

「それが”ゼロ文字解答”となれば選択肢は無限にあるわけで、他のプレイヤーたちも〈やらせだ〉〈大会を汚した〉と紛糾します。
その謎を解くヒントは、表紙に書かれた英題が"YOUR QUIZ"ではなく"YOUR OWN QUIZ"、つまり”君自身のクイズ”になっていること。最後は、そんな展開になるのか!と驚きました」

「人生で何度か、脳に電流が流れる瞬間、言わば火事場の馬鹿力が働いて頭の回転がすごく早くなることがあると思いますが、この本ではそれを20回は体験できます。クイズって競技なんだ、とも思いました」

クイズ番組の見方が変わりそうな一冊に、紹介後の雑談も盛り上がりました。他の参加者さんからは『頭脳王』がオススメ!との声も。

◆気になるシーンが読みたくて

第44回以来の参加となるかなさんは、その時こーせーさんが紹介していた『ぼくは勉強ができない』を読んできてくださいました。
(今回、紹介してくださったのは、新潮文庫の[改版])

「主人公の秀美が、年上の彼女(桃子さん)が家で別の男性といると察する場面で、〈あっ、こーせーさんが読書会で言ってたところだ〉と思いました」

「その後、実は元彼と会っていた桃子さんが、問い詰める秀美に対して〈あの夜のことを後悔していない。(関係をどうするかは)あなたが決めて〉などと答えた場面も、〈これも、こーせーさんが言ってたシーンだな~〉と思いましたね」
(言っただけで、僕はしてませんからね!笑byこーせーさん)

印象的なシーンの”確認”を楽しんだかなさんですが、主人公のスタンスには思うことがあったようです。

「秀美くんは勉強ができない、だけど顔が良くて人気者。だからかいつも斜に構えていて、勉強ができるクラスメイトに〈でもお前モテないじゃん〉とか、理論的にはおかしいのに言い負かしてしまう。同級生は周りに流されているけれど、自分の価値観は他とは違うと思っている。確かに学生時代って、こういう感じあったなって」

「この本の感想やレビューを見ると、高校生の頃に読んで、秀美くんに影響を受けてしまった人がいたようで・・・自分も「俺モテるし」という態度を取った結果、めちゃくちゃ痛い目に遭ったと書いてあって、〈読んだのが大人になってからで良かった〉と思いました」

◆「生まれたくない」と言える世界

「あまり事前情報を入れず買ったのですが、昨年読んだ中でもベスト10に入るほど面白かったです!」

4年ぶりに参加してくださったごきげんさんは、朝井リョウさん(またもや登場!)も帯コメを寄せた『生を祝う』を推します。キーワードは「合意出生制度」。

「この小説の舞台となる未来の日本では、検診の技術が進み、胎児に”生まれたいかどうか”を問えるようになりました。
また安楽死も有料サービスとして普及し、人が”生まれる権利”と”死ぬ権利”の両方を手に入れた世界線になっています」

「この時代は、人口半減によって外国からの移民が大量に入ってきて”ダブル”がスタンダードになっています。さらに、あらゆるパターンの家庭で子どもを迎えられるよう、国の制度が整っている時代です。主人公の女性にも同性のパートナーがいて、どちらが妊娠するか、と話し合ったりもしています」

「一方、妊娠ができても胎児の”合意”がなければ産むことはできません。主人公の子どもは産まれてきてくれるのか?そして、自分で〈生まれたい〉と決めた人生なら、辛い時も生きていけるのか?私の帯には、主人公の言葉をそのまま書きました。」

雑談パートでは、他の参加者さんが挙げた、”親の記憶を持つ胎児”が登場する劉慈欣さんの短編SF『人生』との比較も交え、「合意出生制度」の設定をより深く掘り下げました。

◆ムーでも、ジョジョでもなく。walk this curry way.

読書会と同じくらい、その後のアフターカレーが待ち遠しい某主催者は、濃厚な情報量を誇るカレー本を〆に持ってきました。
(もちろんカレーでなくても、参加者の方とご飯行くのはとっても楽しいです・・・念のため)

何故なら、当日1月22日は「カレーの日」だったから!

この本は、世界101の国と地域のカレー(を中心としたスパイス料理)を、オールカラー&写真満載で紹介しています。

また、世界史と密接に結びつく香辛料の知識や、日本で本格的なスパイス料理を味わえるお店の情報も網羅!旅行本の需要が落ち込む社会情勢においても、『地球の歩き方』編集部さんの底力を感じます。

読むとカレーが食べたくなる、でも眺めているだけでも楽しい。充実の一冊となっております。

参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました!







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