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挑戦者求む!マニアック川柳「型」指南!

 2013年に第1回が開催され、10周年を迎えた「マニアック川柳」。
今や復刊ドットコムサイトの恒例行事ともなりました。

マニアック川柳とは、「特定の趣味や職業など、その道に精通する者には理解できるが、それ以外の人にはイマイチピンとこない川柳」のこと。ありがたいことに毎年多くの作品の応募があり、年々ハイレベルな戦いになってきています。

そして、今年もまたマニアック川柳の季節がやってきました!

読者のみなさんの「マニアック」な部分を、5・7・5の旋律に乗せて、ぜひ表現してみてください。なお、入選作品には5,000円分のQUOカードが贈られます。さらに、応募者全員にもれなくT-POINTがプレゼントされますので、T-POINTの利用手続きもお忘れなく!

興味はあるけれど、自分は「マニアック」と言えるほどの趣味も趣向もないな……というあなたへ。大丈夫です!自分にとっては普通のことが、他の人にとっては案外マニアックだったりするもの。とはいえ、自分のことほど自分では分からないということもありますよね。

そこで、本記事では過去10年間の作品をタイプ別に分け、入選作品をお手本に、いくつかの切り口をご紹介します。題して、マニアック川柳「型」指南!

さらに、それぞれの「型」では、過去惜しくも入選、佳作から漏れてしまった作品を蔵出し初公開いたします。長らく日の目を見ることのなかった素敵な作品の数々を楽しみながら、ぜひオリジナルな川柳を作るヒントにしてみてください。

その一、 お疲れ様です!お仕事あるあるの型

マニアック度:★

ある職業では当然の共通認識となっていることや、その職業を極めるがゆえに癖になってしまっていること、ありませんか?寄せられた句を読んでいると、どんな仕事にも”職人”技があるのだなあ、と感じると同時に、知られざる苦労もまた多いものなのだとしみじみ考えさせられました。マニアック川柳の中では比較的取り組みやすい「型」と言えます。

《お手本》
『生徒との 話合わせる 新アニメ』(2022年入賞 無題 さん)
塾講師の方から寄せられた句。先生はこんなところにも気を遣っているのですね…切実さが伝わってきます。

《初出し!名作選》

『あのフォント ゴシックMB ボールドだ』(2014年 たなちゅう さん)
フォントはデザインの要、細部までこだわるデザイナーさんの職業病ですね。

『不審な手 万引きじゃなくて 痔の薬』(2019年 なで肩 さん)
万引きGメンを悩ます不審な動き…。

『美術館 絵より気になる 温湿度』(2020年 大海の真珠 さん)
『配管が 絵より気になる 美術館』(2021年 山宗雲水 さん)
それぞれ別の方から寄せられた句ですが、偶然にも、美術館で絵より気になってしまうことがあるようです。

『貯金箱 銀行にはない 缶切りは』(2020年 銀行員1号 さん)
そんな人いるの…?と思ってしまいますが、世の中色んな人がいるようですね。家で開けてから来てください!!

『「これ美味しい?」 聞かれる 答えはひとつだけ』
(2022年 スーパー店員 さん)
こっちの方が美味しいですよ。なんて言ったら怒られてしまうでしょうか…。

その二、 地元民直伝、ご当地情報の型

マニアック度:★★

TV番組などで取り上げられることも多い「ご当地あるある」ですが、マニアック川柳にも数々の句が寄せられています。知っている人が自ずと限られてくるという点で、マニアック川柳との相性も抜群!しかしその分、情報のインパクトや面白さなど、ライバルと差をつけるのが難しい「型」かもしれません。

《お手本》
『もうじきに 冷やしシャンプー はじまるか』
(2015年入賞 ところてん さん)
山形の理髪店で目にする夏の定番「冷やしシャンプー、はじめました」。郷愁ただよう光景が目に浮かぶようです。

《初出し!名作選》

『香川では はじめましたは 冷やしかけ』(2019年 くろにゃん さん)
日本各地の「冷やし〇〇」を集めたら面白いかもしれません…!

『秋田では 安否CM あたりまえ』(2017年 まぐまぐでゅう さん)
誰の安否かというと、なんと修学旅行中の生徒たち!「現在昼食中です」とリアルタイムな情報も流れるとか。連絡帳もメールやネットになりつつある昨今、変わらず放送されているのでしょうか。

『静岡の コンビニにある 卒塔婆が』(2020年 中込友也 さん)
静岡県の中でも一部の地域で見られる光景のようです。墓参りに卒塔婆を持って行くという独特の風習があるとか。

『「くらそうか」 プロポーズじゃなく 果たし状』
(2021年 にじのいろ さん)
『「来ちゃった」は 「来られました」と 同じ意味』
(2022年 広島県民 さん)
どちらも方言を題材にした作品です。「くらす」は博多弁で「殴る」のことだそう。探せば色々と出てきそうな切り口ですね!

『生粋か 上毛かるたで 相手知る』(2022年 さく さん)
上毛かるたは群馬県の県民かるた。郷土かるたは各県のみならず、市単位で存在したりもするようです。

その三、 マニアならわかる、羅列の型

マニアック度:★★★

ある事柄について、相当深く知っていなければ出てこないのが、この羅列の「型」。十七音の中に情報や知識をキリよく納める工夫も必要です。読者からすると、投稿者のコメントがなければ、解読するのに一苦労。何を指しているのか、謎解き感覚で読んでみるのもマニアックな楽しみ方ですね!

《お手本》
『 1 3 4 14 16 34 』(2014年入選 HOJO さん)
王貞治、長嶋茂雄、黒沢俊夫、沢村栄治、川上哲治、金田正一…ジャイアンツの背番号の永久欠番が、五・七・五に収まった奇跡のような句です!

《初出し!名作選》

『美園・武蔵・東・西・南・北・中・浦和』(2021年 hide さん)
浦和と付く駅名を羅列した句。埼玉県民の筆者は、美園・武蔵ときたところでピンときましたよ!

『西舞子 吉川美南 小田栄』(2021年 鉄子の部屋 さん)
人の名前かと思いきや、こちらもやはり駅の名前。人名のような駅名は、他にも色々ありそうですね。

『東MONO 静岡keep 西Radar』(2022年 山宗雲水 さん)
消しゴムといえば、この商品。普通の人ならどれか一つしかピンとこないかも?

『虎パンダ うずらにひよこ 鶴の子も』(2014年 厨坊主 さん)
これはどれも豆の名前だそうです。考えてみると、豆の名前ってあまり知らないかもしれません…。

その四、 マニアならでは!目利きの型

マニアック度:★★★★

ごく小さな判断材料だけで分かってしまう、イロイロなこと…。
ここまでくると、マニアック度はかなり高くなってきます。自分では共感できなくても、マニアならきっとそうなのでしょう!となぜか納得させられてしまうのがこの「型」。マニアの頭の中が垣間見えて、興味深い句が多い印象です。

《お手本》
『相撲取り お尻の形で 名が分かる』(2018年佳作 アッシャー さん)
ついつい目がいく力士のお尻。筋肉のつき方や肉感に、たしかに個性が出ています。ネットで検索するとしばらく見てしまう、これは沼の入り口かも…?!

《初出し!名作選》

『ハッケョーイ 行司の声を 聴き分ける』(2019年 うしゴン さん)
こちらも相撲マニアからの投稿。行事さんの掛け声も各人さまざまなアレンジがされているようです。

『芝だけで 分かってしまう 野球場』(2021年 トライオン さん)
芝の違いってどこに現れるのでしょう。色?刈り込み…?

『夜の街 テールランプで 車名当て』(2015年 しょうた さん)
『エンジン音 あれは2スト これ4スト』(2016年 ポニー さん)
車、バイクのマニアから寄せられた句。もはや反射的に見分けていそうですね!

『目を見れば 原画師判る 萌え絵かな』(2021年 エロゲソムリエ さん)「目」の描き方に特徴がよく現れるのだとか。うーん、細かい!

『ラーメン屋 排気でわかる 店の味』(2022年 うーちょこぴー さん)
これはぜひ嗅ぎ分け方を伝授してほしいですね!町中で漂ってくると、ちょっと避けて通りたくもなりますが…。

その五、 これぞ王道!?漫画・アニメ・ゲームを語る型

マニアック度:★×∞

おまたせしました!マニアといえば、まず思い浮かぶのがこの切り口かもしれません。マニアックすぎて、「ぽかーん…」となる句が多発する切り口でもあります。界隈では「わかるわかる」と頷けるけれど、門外漢には分からない、そのバランスを特に大切に川柳を作ってみましょう!

《お手本》
『腹が出て 安彦立ちに 見える父』(2013年入選 夏舟 さん)
「安彦立ち」とは、アニメーター・安彦良和氏による独特の画風で、頭から足先まで緩いS字を描くようにおなかを突き出したアニメキャラの立ちポーズのことです。意味がわかると一気にその画が浮かび出す、素晴らしいマニアック川柳ではないでしょうか。

《初出し!名作選》

『マヤよりも 月影センセの 歳にちかづく』(2016年 乾パンマン さん)1976年の連載開始から半世紀近く、未だ完結しない『ガラスの仮面』はあまりに有名。「マニアック」というよりは、もはや国民級の関心事かもしれません。

『52年 7月20日で 不老不死』(2021年 ニャンツ さん)
プレイステーションのゲーム『ボクサーズ・ロード』の主人公の生年月日を1977年(昭和52年)7月20日(※)に設定すると不老不死になり、最強のボクサーに育成できるという裏技を読んだ句。まさに知る人ぞ知る、ですね!※正しくは9月20日のようです。

『ジブリでは こころうごくと 風が吹く』(2015年 ナウシカ さん)
いくつもの作品を何度も見たからこそたどり着いた演出への言及、あっぱれです!筆者も次は風を気にしながら見てみようと思います。

『モスラ観て いもむし語る 虫マニア』(2018年 いもむしラブ さん)
モスラの目の位置や動き、体型まで気になってしまうという、かなりマニアックな句。共感のほどはいかに…?!

ちなみに、この型に分類される句の中でも特に多いのが、『サザエさん』を題材にしたもの。さすが、老若男女に長年愛される国民的作品!名作をまとめてご紹介します。

『サザエさん タマの他にも 猫がいる』(2015年 ミー さん)
『磯野家の 庭の花見て 季節知る』(2022年 猫田しろ さん)
『「帰る」って 言ったことある イクラちゃん』(2020年 ニャンツ さん)『タラちゃんの 未来の妹 ヒトデちゃん』(2014年 海物語 さん)

おわりに

 ここまで5つの「型」をご紹介してきました。これなら自分にも川柳が作れそう、という「型」はありましたでしょうか。今回はご紹介しきれませんでしたが、他にも、雑学知識を題材としたもの、懐かしい時代を振り返るものなど、類型をあげればきりがないほど、たくさんの作品を投稿していただいています。また、マニアック川柳の初回開催から10年という年月のなかで、時代の変遷を読み取れる句も多い一方で、趣味趣向は時代を経ても変わらないなと感じる句もまた多くありました。マニアにとって、歴10年というのはまだまだ序の口、ということかもしれません。

 最後に、この記事を書くにあたり過去の応募作品数百句以上を読んだ筆者が、最も共感した句を紹介させていただこうと思います。

『「ら」を抜いて そっと味わう 背徳感』(2016年 まゆだま さん)

普段から正しい日本語を使おうとする中で、話し言葉ではあえて「ら」抜き言葉を使ってみるときの背徳感。「いや、この使い方は間違いだ、って分かってはいるんですけどね…」と、心の中で言い訳をする気持ち、とてもよく分かります。意識はしていませんでしたが、筆者はどうやら日本語マニアのようです。

マニアック川柳を通じて、自分がいつも何に関心を寄せているのか、どんなことにこだわっているのか、考えてみるのも楽しみ方のひとつ!案外見えていなかった自分自身の姿が浮かび上がってくるかもしれません。

さて、第11回マニアック川柳がいよいよ開催です。たくさんのご応募、お待ちしております!

<応募ページ>

<募集期間>

第1回募集:2023年5月30日(火)~2023年6月12日(月)18:00締切
第1回発表:2023年6月16日(金)予定

第2回募集:2023年6月12日(月)18:00~2023年6月23日(金)18:00締切第2回発表:2023年6月30日(金)予定

入選・佳作の審査対象はT-POINTの利用手続き済みのアカウントのみとさせていただきます。応募者全員にT-POINTが30ポイント付与(各回毎、最大60ポイント)されますので、必ずT-POINTの利用手続きをお済ませくださいますよう、お願い申し上げます。

キャンペーン詳細は、復刊ドットコム「マニアック川柳コンテスト十一」ページにてご確認ください。


■この記事を書いた人
Akari Miyama

元復刊ドットコム社員で、現在はフリーランスとして、社会の〈奥行き〉を〈奥ゆかしく〉伝えることをミッションとし、執筆・企画の両面から活動しています。いつか自分の言葉を本に乗せ、誰かの一生に寄り添う本を次の世代に送り出すことが夢。
https://okuyuki.info/
Instagram:@okuyuki_info

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