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中山七里「護られなかった者たちへ」

仙台市の保健福祉事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。
三雲は公私ともに人格者として知られ、怨恨が理由とは考えにくい。
一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。
三雲の死体発見からさかのぼること数日、一人の模範囚が出所していた。
男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。男の目的は何か。
なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか? 誰が被害者で、誰が加害者なのか。
本当に“護られるべき者"とは誰なのか
怒り、哀しみ、憤り、葛藤、正義……
万般の思いが交錯した先に導き出される切なすぎる真実――。

佐藤健さんの主演で映画が公開になっており、話題にもなっているこの作品。


震災からの復興を見せつつある仙台を舞台に、テーマは生活保護と社会保障を扱う社会派のミステリーです。


当然、社会保障を全ての人が納得する形で実現することなんて不可能なんだろうけれど、それでも救えない人の行き場のない怒りや、それを通り越した悲しみ、絶望を感じずにはいられず、ただただ苦しい。


ラストには「苦しみの声を上げろ!」と強いメッセージに対して、全くどうすることもかなわない震災の犠牲者が対照的に写し出されて、この世の不条理をまざまざと感じさせられました。




苦しいけれど、知らずに生きていたくはない。


そんな問題を突き付けられる良い物語でした。



「あなたにこの物語の犯人はわからない」と作者が言う通り、誰が悪人だったのか、「護られなかった者たち」は誰なのか、その命を奪ったのは一体誰なのか。
















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