変な話『へな話』

 ある晩の情事の後だった。深夜一時を回っていた。
「明日も仕事だから」と素っ裸の彼女は、そそくさと服を着ようと、ベッドから立ち上がった。ベッドには、数分前までの情熱が、よれたシーツと共に温もりを残している。僕は、彼女の白い背中に永遠の愛を感じていた。
 背中を丸め、床に落とされた下着に手を伸ばした時、彼女が屁をした。





 ある晩の情事の後だった。もう深夜一時を過ぎていた。明日も仕事だった私は、服を着ようとそそくさとベッドから立ち上がった。
 満足げにベッドから向けられる彼の視線に、体温の減少を感じていた。気づかないふりをしながら、床に投げられた下着に手を伸ばした。
 その時私は、放屁した。
 私を気遣ったのか、彼も続けて放屁をした。
「これでおあいこだよ!だから大丈夫!」と笑って私を庇った。私は、顔を燃え尽くすような羞恥から、彼の笑顔を見る事はなかったが、彼はそのまま部屋出て行った。私は、その時の彼の寒々とした背中だけは、どうしても忘れられなかった。
 


 幸い、彼女のその時の屁には臭いは無かった。ところが誤魔化すために無理矢理力んだ屁からは、別のモノまで出てしまっていた。
「これでおあいこだよ!だから大丈夫!」とヘラヘラと笑った。彼女が真っ赤に染めた背中をこちらに向けている間に、僕は平然と部屋を出た。
 トイレに隠れ確認すると、出てしまってはいたが、決して多くは無かった事に安堵した。
 部屋に戻り、体の熱い彼女を抱きしめキスをした。


 しかしその後、彼女はその日の事を理由に別れを告げた。
 放屁に勝る優しさなど、ないのであった。

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