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新卒が就職ガチャで当たりを引く方法~最適なキャリアを組み立てる戦略とは?<後編>

前回は、「就職はガチャ」という前提のもとで、「どうすればハズレ企業を引いてしまう確率を下げるか」を解説しました。
前編はこちら

今回は、新卒採用の段階からキャリアを中長期で考える方法を解説します。

キャリアは半世紀も続く

中長期を考える上で最大のポイントは、「キャリアは半世紀も続く」という絶望的なロングスパンを考慮することです。

4年制の大学を学部で卒業した場合、今の若い世代は50年以上働くことになるはずです。健康寿命が延びるのに、年金の給付額は減るからです。70歳超まで働くなんて、めまいがするほどのロングウェイです。

気が遠くなるほどキャリアが長いことを考えると、ペース配分と方向性が重要です。普通の人が半世紀もアクセルベタ踏みで働き続けることはできませんし、方向性が定まらなければ費用対効果が悪くなるからです。

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つまり、ピカピカのキャリアを目指そうと意識を高く持つことは悪いことではないのですが、「キャリア人生50年」という理不尽なロングスパンを凡人が走破するためには、「できるだけ努力せず、可能な限りダラダラしながら懐に入るカネを最大化したい」という発想を持つことも大事なのです。凡人には凡人の走り方があるのです。

「お金は額に汗して頂くもの」などとぬかす昭和のアホは無視してオーケー。楽して稼げるのがいいに決まってます。時代錯誤な人は放っておいて、「いつどこでアクセルを踏むか?」をしたたかに考えましょう。

ちなみに、「まったくアクセルを踏まない」も考えられますが、お勧めできません。どこでも頑張らないヒモみたいな人生を幸せのまま逃げ切れる人は、めったにいないと思うので。

いつアクセルを踏むか?

さて、「いつアクセルを踏むか?」は各人の個人的な事情によるので、「いま!ここ!」という万能の答えは残念ながらありません。ただし、それを見極めるヒントならあります。

次の図は、企業の属性を大まかに座標で表現した図です。横軸は、仕事を通じて得られるもの(能力・経験・お金・人脈など)の多寡を示し、縦軸は、仕事に対する取り組み方の度合いを示します。

つまり、図の右上ほど「アクセルを踏む」、左下ほど「アクセルを踏まない」ということになります……ちなみに、企業の多様な属性をムリヤリ2次元に圧縮した乱暴な図ですので、極論に偏りがちな点を差し引いて読んでください。

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まず、「ブラックなブラック企業(激務を強制されるのに得られるものが少ない)」は論外です。運悪くこのガチャを引いてしまった人は、速やかに逃げましょう。

例えば、「営業の研修」という名目で、品川駅前で通行人と名刺交換させられている若い人を見るたびに、おっさんの胸はキリキリと痛むわけです。どこからどう見ても「水を飲まずにウサギ跳び」的な虐待……嗚呼、真珠の涙が一粒、悲哀ここに極まれり。

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次に、「ホワイトなホワイト企業(ぬるい働き方なのに得られるものが多い)」は、原則として存在しないことに注意しましょう。何の成果も出さずにブラブラしていると能力も伸びず、経験も蓄積せず、給料ももらえないのは当然ですね。

例外として「優れたビジネスモデル(総合商社など)に便乗する」「規制業種(銀行・インフラなど)に潜り込む」といった裏技があります。ただし、お金はもらえますが「まったくアクセルを踏まない」ことになりますので、ロングスパンを考えるとやはり最適ではありません。

そうなると、極論すれば、ブラックなホワイト企業(働き方はぬるいが得られるものも少ない)か、ホワイトなブラック企業(働き方は激烈だが得られるものも多い)かのいずれかを選ぶことになります。

もっと身もフタもない言い方をすれば、仕事においては「安定してるけど退屈で成長感もないし、給料も安い」か、「やりがいはあって給料も良いけど、今後どうなるかわからん不安との戦い」か、どちらかを選んだ上で退屈・不安に対する耐性を鍛えるしかないのです。

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どちらを選べばよいかは、もちろん個人の志向・能力に依存します。ただし、自分ではコントロールできない外部の要因にも依存することを覚えておく方がよいと思います。

例えば、最も体力があり学習能力も高い20代や、能力・経験によって生産性が最も高くなる40代で、前者のような環境にぶら下がるのは不合理です。

また、生まれたばかりの子どもがいる30代や、体力も頭の瞬発力もガタがきた50代で、後者のような環境に身を置くことは難しいでしょう。最初に「ペース配分が重要」と書いたのは、これが理由です。

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さて、これを逆にすると、若者の「いつアクセルを踏むか」という疑問に対する答えはすでに出ていますね。

そう、「いつ踏むの? いまでしょ!」です。

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合理的に考えれば、体力があって失うものがなく、頭が柔軟で経験の蓄積が早い20代に、本質的な仕事に対して出すべき成果に強くフォーカスして、思い切りアクセルを踏むことが最適なんです。

そして、先の図の左側にある企業(ブラックなブラック企業、ブラックなホワイト企業)を運悪くガチャしてしまった若者は、ただちにガチャをやり直し、早い段階で右上(ホワイトなブラック企業)に移行しましょう。

ただし、目の前の仕事が本質的な仕事かどうか(ウチの会社は右側か左側か)を判断するためには、仕事そのものに対してある程度習熟する必要があります。そういう意味で、若いうちから毎日身を粉にしてがんばることが重要なんですね。

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どこでアクセルを踏むか?

「どこでアクセルを踏むか?」という問いに対しては、前編で答えを出してしまいました。つまり、儲かっている業界に属する、儲かっている企業で、儲かる職種に就いてアクセルを踏みましょうということです。

この3つの条件を満たす企業は、「ホワイトなブラック企業」(右上)になりがちです。なぜなら、(1) 事業の成長に対して人員補充・組織力の強化が追いつかないから、または、(2) 少数のエリートを使い倒して利益を上げるビジネスモデルを採用しているからです。

上記(1)は、伸び盛りのベンチャー企業が典型例であり、上記(2)は、コンサル・投資銀行などが当てはまります。

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最近、若手の優秀層が大企業を避け、ベンチャーに飛び込むトレンドがありますが、実に合理的な選択だと感心します。社会の変化はどんどん激しくなるので、「本質的な仕事を自分で取りに行ける環境」でなければ将来の見通しが悪いことを理解しているのです。

一方で、日本の大企業では、バブル入社組を中心とした中高年のリストラがいま絶賛大流行中です。「活き活きチャレンジ制度」と称しておっさんを切りながら、浮いた人件費を原資にして前途有望な若者を中途で採用しようという目論見でしょう。

さて、そんな大企業は、向上心豊かな若者を叩き上げる環境を提供できるのでしょうか?「使えない中高年を捨てて人件費を軽くし、平均年齢を下げて組織を活性化させたい」という手前勝手な魂胆でしかなく、若手をナメているとしか思えないのは私だけでしょうか。

後編まとめ

最後に無慈悲なちゃぶ台返しをします。

このエントリーの内容は、すべて忘れてください
なぜなら、「あなたのユニークネス」を一切考慮しない「最適なキャリア戦略」には何の意味もないからです。

このエントリーでは、前後編をとおして以下の2つを「最適なキャリア戦略」として解説しました。
(1)儲かっている業界に属する、儲かっている企業で、儲かる職種に就く
(2)若いうちに「ホワイトなブラック企業」でアクセルを踏む

そこそこの大学を卒業するホワイトカラー志望にとって、この戦略は確かに合理的です。華々しい経歴で活躍するビジネスパーソンは、だいたいこのパターンをたどっていると思います。

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しかし、この合理的なキャリア戦略が「あなた個人の幸せ」に寄与するかどうかはまったく別の話です。

私の知り合いに、一流大学を卒業して外資系コンサルに就職した女性がいます。彼女も上記(1)および(2)を満たす「バリキャリ」の王道パターンを進んでいましたが、自分の人生に疑問を抱いてドロップアウトしました。

しばらく考えて、自分は手先が器用で美容に興味があることに気づき、ネイリストを養成する専門学校に通い始めました。いまでは地方でネイルサロンを開業し、毎日常連のお客さんの爪をピカピカにしています。

もちろん、生涯年収は激減したでしょうし、「バリキャリ」よりこの先のキャリアは見通しが悪くなったと思います。けれども、彼女は毎日生き生きとして働いており、「あのままコンサルとして働き続けた未来を想像すると、ぞっとする」とまで言い切っています。

要するに、合理的に考えた結果として、万人にとって最大公約数的な解答例はありますし、その王道をたどる人生もあり得ます。しかし、それは「あなたにとって」最適になるでしょうか?

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東大の法学部を出た人が大手商社などに入社するケースは多いと思いますが、もしかしたら、マグロ漁船に乗って遠洋漁業に乗り出す方が幸せになれるかもしれませんし、公園で大道芸を披露する方が毎日が充実するかもしれません

つまり、「あなたにとっての最適」は、上記(1)および(2)から全然外れたところにあるかもしれないのです。

それを考え抜くことなく、トレンドに乗って小利口に生き延びることを考えるのは、自分の人生に対する答えを、他人の人生に求めることと同じです。これは明らかにまずい。

「最も有利なキャリアを進みたい」などと能書きをたれるより、「自分にしかないユニークな価値を出すためにはどうすればいいか?」について、真剣に悩み続ける方が健全です。

生き方が分からなければ、古典を読みましょう。昔の人は、身を切るくらいに自分の人生に悩み苦しんできました。それが若者が持つべき誠実さだと思います。ペラペラのビジネス書など燃やしてオーケーです。

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もちろん、このエントリーも無意味です。「ほうほう」と感心しながら最後まで読み切ってしまった人は反省しましょう

以上、出たとこ勝負でここまで生きてきたおっさんが書いた、インターネットのゴミでした。「最適なキャリア戦略」というタイトルで煽っておきながら、この無慈悲なオチ。嗚呼、またひとつ、世の中にゴミを増やしてしまった。

→ 読者からのブーイングを受けて、場外乱闘編を書きました。もうひとつ、世の中にゴミを増やしてしまった。

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