見出し画像

新卒が就職ガチャで当たりを引く方法~最適なキャリアを組み立てる戦略とは?<場外乱闘編>

取引先での特殊な縁であったり、自分の趣味で作ったコミュニティによる人脈であったりなどで、いわゆる新卒~第二新卒と呼ばれる若者と話す機会がよくあります。

彼ら/彼女らに前作(前編後編)を読ませたところ、たいへん不評でした。

「言いたいことは理解できるが、結局どうしていいかが余計に分からなくなった
「ユニークネスを考慮するとは具体的にどういうことか」
「『最適なキャリアの作り方』とタイトルに付けておきながら、最後に『何の意味もない』と突き放すのはいかがなものか

なるほど。君たちがよく分かっていないことが、実によく分かった。
というわけで、前編後編の付録として、「場外乱闘編」をお届けしたいと思います。

1. 不評の原因と無慈悲な結論

前編後編を読んでいない人のために両編の内容をまとめると、次のとおりです。

若者にとってのキャリア構築では、以下の2つの条件を満たせば有利である。
(1)儲かっている業界に属する、儲かっている企業で、儲かる職種に就く
(2)若いうちに「ホワイトなブラック企業」でアクセルを踏む

ただし……と、最後に若者たちを困惑させるちゃぶ台返しが待っています。
(3)上記戦略はあくまで「最大公約数的な解答例」に過ぎず、「あなた個人のユニークネス」を一切考慮していないため何の意味もない

彼ら/彼女らによる不評は、上記(1)および(2)でファイナルアンサーを得られたと考えた後に、上記(3)で全部否定されたことによります。要するに、先に示された条件とちゃぶ台返しとが矛盾しているではないかと。

画像1

自分で書いたエントリーを眉間からつま先まで真っ二つにすれば、その真意が伝わると考えていたのですが、確かに言葉足らずでした。

「最適なキャリアの作り方」というタイトルもミスリーディングでしたし、「何の意味もない」と極論に煽ったのもよくなかった。「ユニークネスを考慮する必要があるよ」くらいが妥当だったかも。正直スマンかった。

いろいろと誤解を生んだかもしれませんが、実は「最適なキャリア戦略」など金輪際存在しません(もうどうしようもないちゃぶ台返し)。

……無慈悲な結論に対するシラーっとした空気を感じながら、その理由を3つあげます。
(理由1)そもそも仕事の定義に反しているから
(理由2)キャリア選択の良否は事前には分からないから
(理由3)自分の思いどおりにいくことなど、世の中にはほとんどないから

順番に説明しましょう。

(理由1)そもそも仕事の定義に反しているから

仕事は「自分以外の誰かのためにするもの」です。その誰か(お客さん)がその仕事に価格以上の価値を体感した場合、お客さんからその価格分のお金がもらえます。当たり前です。小学生でも知っている。

なので、商売を実践している人は「何がお客さんのためになるか?」を日々真剣に考えています。例えば、
・お客さんにもっと便利にウチの商品を使ってもらいたい(研究開発)
・お客さんにウチの商品の良さを知ってもらいたい(広報)
・お客さんにウチの商品を使って喜んでもらいたい(営業)
・そもそも僕たちの商品を最も喜ぶお客さんってどこの誰だっけ?(マーケティング)

など、とにかく徹底して「自分以外の誰か」のことを考え抜くのが商売です。そして「自分以外の誰か」に対して、その商売のなかで自分が果たす役割を「仕事」と呼びます。

画像2

さて、「最適なキャリア戦略」といった場合、それは誰のことを考えているでしょうか?

……はい、そうです、もちろん「自分」のことを考えています。つまり、仕事のことを考えているはずなのに、なぜか「自分以外の誰か」のことではなく、思い切り「自分」のことを考えてるんです。すごい勢いで矛盾してますね。

つまり、「最適なキャリア戦略」は、「仕事」の本質から見れば最初から論理的に破綻しているのです。もう身もフタもない。

(理由2)キャリア選択の良否は事前には分からないから

仮に、あなたがグーグル、マッキンゼー、ゴールドマンサックスの3社からトリプル内定をもらったとしましょう。悩みますよね。はたしてどこに行くのが最適だろうかと。

画像3

しかし、それが事前に分かるはずがありません。当たり前ですけど(未来予知できる超能力者であれば分かるかもしれませんが)。

では、上記3社に加えて「遠洋漁業の漁師」という選択肢が増えたらどうでしょうか?東大卒の学生なら「遠洋漁業wwwwねーわ!!www」と笑うかもしれません。

しかし、これも事前には分かりません。なぜなら、グーグルでも、マッキンゼーでも、ゴールドマンサックスでも、求められるセンスが全然なく、「使えないポンコツ」になるかもしれない一方で、漁師としてのスーパーセンスを開花させ、水を得た魚(遠洋漁業なら主にマグロですかね)のようにイキイキと働けるかもしれないからです。

要するに、そのキャリアを選択して良かったか悪かったか、その仕事に対してセンスがあったかなかったかは、選択した後にどれほどの成果を上げたかによって事後的に決まるのです。

画像4

グーグルに行こうが、マッキンゼーに行こうが、ゴールドマンサックスに行こうが、センスがなければ成果は出ない、成果を出せなければ「仕事」になっていない、したがって誰のためにもなっていないので、その選択はあなたにとって「失敗」です(キャリアに箔は付くかもしれませんが「仕事になっていない」という点で同じです)。

遠洋漁業の漁師になろうが、コンビニのバイトリーダーになろうが、キャバクラの呼び込みになろうが、センスがあれば成果が出る、成果を出せれば「仕事」になる、したがって誰かのためになっているので、その選択はあなたにとって「成功」です。

このように、目の前に複数のオプションがあったとき、「自分にとって何が最適か?」「自分に適性があるか?」「そこで成果を出せるか?」を事前に知ることはできません。これも当たり前です。小学生でも知っている。

なので、「最適なキャリア戦略」も論理的にあり得ません。やっぱり身もフタもない。

(理由3)自分の思いどおりにいくことなど、世の中にはほとんどないから

難関の上位大学を卒業し、これから社会に出ようとする優秀な若者は、これまで挫折することなく自分の思うとおりに世の中をわたってきたかもしれません。

でも、複雑なリアル社会では、残念ながら、自分の思いどおりにいくことなどほとんどないんです。いろいろな人がいろいろな考えを持ち、全員が他人との利害関係を抱えて生きているからです。

なので、自分の人生の一部であるキャリアを「計画しよう」とすることは、ある意味で社会の摂理に反しています。どれほど入念に計画を立てたところで、できないものはできない、その実現にいくら努力しても、報われないときは報われない。

画像5

優秀な若者ほど「ピカピカのキャリアプラン」を持ちたがり、それに向かって努力しようとしますが、優秀でないおっさんの私に言わせればバカバカしいにもほどがある。人間、なるようになる、ならないようにはならない、ただ、それだけです。

なので、「最適なキャリア戦略」もバカバカしい。どう考えても身もフタもないのですが、これが現実だと(私は)思います。

2. できれば失敗したくない

このように「最適なキャリア戦略」など絶対に存在しません。まともな大人なら、当たり前のこととして受け入れている事実です。

とはいえ、「自信がない!未来が怖い!できれば失敗したくない!」という気持ちは痛いほど分かります。そこで、前作では「とりあえずこうしておけば、大失敗する可能性はいくらか小さくなるのではないか」という方向性を示しました。再掲しましょう。

(1)儲かっている業界に属する、儲かっている企業で、儲かる職種に就く
(2)若いうちに「ホワイトなブラック企業」でアクセルを踏む

しつこく繰り返しますが、これは最大公約数的な解答例(1つのモデル)に過ぎず、「あなた個人の幸せ」に寄与するかどうかのファイナルアンサーではありません。だから、後編の最後で自分で書いたエントリーそのものを「ゴミ」と真っ二つにしたんですね。

画像6

そして、これも繰り返しになりますが、上記(1)および(2)を満たしたとしても、ダメなときはダメ、できないものはできない、ハズレならハズレ、そしてそれを事前に知ることはできません。

じゃあ、どうすんの?
簡単です。ダメならとっとと次に行くだけです。

ただし、ダメだったときは「ああ、ダメだったな」で終わらせず、なぜダメだったかを追求して次に生かしましょう。人間、そうやって紆余曲折を経て、なんとなく人生が進んでいきます。そこに「最適」など存在しません。

3. 自分のユニークネスを考えよう

ふらふらと紆余曲折を経ているうちに、なんとなく自分の傾向・性質・意志・欲望のようなものが見えてくると思います。それが「ユニークネス」です。

そうか、自分はこういうことが得意なんだな。なるほど、自分はこういうときに幸せを感じるんだな。なんと、自分にはこういうことが大事だったのか。ああ、結局、自分はこういうことがしたかったのか。などなど。

そして、ユニークネスは、長い期間にわたって、日常的にアンテナを立て、自分に正直に生きなければまったく見えません

私のベスト・オブ・ファンタジーである「はてしない物語」(ミヒャル・エンデ著)で、その本質が語られています。少し長いですが抜粋・引用します。

画像7

===
「あなたさまが真に欲することをすべきだということです。あなたさまの真の意志を持てということです。これ以上にむずかしいことはありません」
グラオーグラマーンはいった。

「ぼくの真の意志だって?」
バスチアンは心にとまったそのことばをくりかえした。
「それは、いったい何なんだ?」
「それは、あなたさまがご存じないあなたさまご自身の深い秘密です」

「どうしたら、それがぼくにわかるだろう?」
「いくつもの望みの道をたどってゆかれることです。一つ一つ、最後まで。それがあなたさまをご自分の真に欲すること、真の意志へと導いてくれるでしょう」

「それならそれほどむずかしいとも思えないけど」
バスチアンはいった。
「いや、これはあらゆる道の中で、一番危険な道なのです」
グラオーグラマーンは答えた。
「どうしてだい?」
バスチアンはたずねた。「ぼくは怖れないぞ」

「怖れるとか怖れないとかではない」
グラオーグラマーンは声を荒らげていった。
「この道をゆくには、この上ない誠実さと細心の注意がなければならないのです。この道ほど決定的に迷ってしまいやすい道はほかにないのです」
===

「いくつもの望みの道」をたどって「あなたさまご自身の深い秘密」を見つけよ。ただし、それを見つける過程は「この上ない誠実さと細心の注意」を要する「一番危険な道」であり、「決定的に迷ってしまいやすい道」である……いろんな意味で胸が痛いです。

今回のキャリアの話に当てはめれば、「仕事に自分を合わせるのではなく、自分のユニークネスに合った仕事を選べ」ということです。そして「自分に嘘をつきながら仕事に自分を合わせていると、いつの間にかユニークネスを見失ってしまう」のです。怖いですね。

ちなみに、こんな偉そうなことを書いている私は、いまだに自分自身のユニークネスについて知らないことばかりで、これでもかと言うほど道に迷いまくってます。孔子は「四十にして惑わず」と言ったそうですが、あれは嘘です。たぶん。

画像8

4. 場外乱闘編まとめ

さて、今回の内容をものすごくざっくりまとめると、要するに「最適なキャリア戦略なんて金輪際存在しないから、そこはキッパリと諦めて、ひたすら自分に正直に生きようぜ!」といったところでしょうか。

前編で説明したとおり、就職はガチャです。後編で説明したとおり、キャリアは超ロングスパンです。そして、世の中は自分の思いどおりになど決してなりません。

それなら、各自が勝手に自分の好きなようにやりましょう。他人は他人、自分は自分。就職がうまくいったかいかなかったかなんて、長い人生と広い世の中からみれば鼻くそみたいなもんです。

良い意味で諦めて、自分のユニークネスと目の前の仕事に集中しましょう。うまくいかなかったら、メシ食ってウンコして寝てしまえ!

5. 余談

以前、データサイエンスを学ぶ優秀な東大生たちに、今回の内容のようなキャリア論を熱く語るという珍しい機会をいただいたことがあります(あれはおもしろかったので、もう一度くらい呼んでくれないかなァ…)。

講演の後の質問コーナーで「事業会社に行ってからコンサルに行くのがいいか、コンサルに行ってから事業会社に行くのがいいか?」という質問を受けて、思わず鼻水が出ました。キミ、さっきの私の話、聞いてた? 寝てたの? 大丈夫?

もしこんな感じで私に質問があれば、Twitter の DM などで適当にご連絡ください。期待どおりの愚問がくれば、ぶった切った後をこの note で晒しものにしてあげます。

====
・この記事を書いた藤田の Twitter は、こちら
・本稿は、「面白い文章を書けるようにするクラブ」のレビュアの皆さまからアドバイスをいただいて執筆しました。ありがとうございます。
クラブ楽しいよ!レッツ・ジョイン!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?