新卒が就職ガチャで当たりを引く方法~最適なキャリアを組み立てる戦略とは?<前編>
そろそろ新卒採用が本格化する時期ですね。
そこで、これから就職活動に突撃する若者の立場から、合理的なロジックとおっさんの経験に基づいて「最適なキャリアを組み立てる戦略」を考えてみました。
ガチャにもガチャなりの戦略がある
最初に無慈悲な前提を明らかにしましょう。
就職はガチャです。
上司・同僚に恵まれ、やりがいのある仕事を与えられ、楽しみながら能力をぐいぐい伸ばせる環境を運良く引き当てる人もいれば、それとは正反対のハズレ環境を運悪く引いちゃう人もいます。
どれほど熱心に企業研究をしようと、深く自己分析しようと、足を棒にしてOB訪問しようと、結局最後は運です。中途採用ですらかなりの部分でガチャですので、新卒採用に至っては95パーセント以上の部分がガチャです(主観的な感覚値)。
とはいえ、残りの5パーセントをじっくり考えて、ハズレを引く確率を下げることならできます。「結局最後はガチャ」なのですが、ガチャにもガチャなりの戦略があるのです。少なくとも、鼻くそをほじりながらサイコロを振ることだけはやめましょう。
どうやって「ハズレ確率」を下げるか
ハズレを引く確率を下げるためには、どうすればいいのか?
ここで「新卒採用サイトを熟読すること」と考えたアナタ!
頭の中がお花畑になっていることを、海より深く反省してください。
新卒採用サイトに書かれている内容は、すべてドリーミーなポエムです。見るなとは言いませんが、さまざまなオトナの事情が渦巻く漆黒の闇ですので全部忘れましょう。
例えば、みずほ銀行が「みずほをぶっ壊す新人」を期待している旨を新卒採用サイトでブチ上げ、全方位から突っ込まれたのは去年の話です。少し前まで学生だった新入社員にぶっ壊してもらおうと考える時点で、頭がどうかしています。壊したいならお前らが自分で壊せよ。
先輩社員がサイトを開くと目のやり場に困る……それが新卒採用サイトという闇です。間違っても「よーし、俺がみずほをぶっ壊してやるぞ!」などと腕まくりしてはいけません。
では、何を見てどう判断すればいいのか?
そう、数字を見るのです。数字は嘘をつきません。
具体的には、このあたりの数字を見ればいいと思います。
(1)その業界は儲かりそうか?
(2)その企業は儲かりそうか?
(3)その職種は儲かりそうか?
なぜなら、企業の一義的な目的は「利益を出す」ことであり、これを健全に達成できていない企業はハズレである確率が高いからです。
ただし、企業が利益を出すためには業界の構造に依存しますし、職種によってはうまく成果が出せず、肩身が狭いこともあります。そのため、業界と職種も慎重に検討しましょう。
要するに、儲かっている業界に属する、儲かっている企業で、儲かる職種に就くことを目指して、対象企業がこれに該当するかどうかを「数字で検証する」というのが基本的な戦略になります。
自分の人生がかかっているわけですから、裏アカや整形疑惑を嗅ぎつけるネットストーカー並みの調査力を発揮しましょう。
その業界は儲かりそうか?
最初に、その企業が手がける事業の業界全体の「儲かり度」を確認しましょう。業界全体が伸びていなければ、各企業がいくら努力しても構造的に儲からないおそれがあるからです。
業界の「儲かり度」を調べるためには、「産業別 市場規模 予測」、「産業別 成長率 予測」などのキーワードでググってみましょう。各省庁やシンクタンクが出している調査結果が参考になります。
例えば、新入社員によってぶっ壊される予定のみずほ銀行は、こんな調査結果を出しています。
この表によれば、対角線より斜め左上方向かつ水平線より上に位置する産業が、今後有望とされています。有望な産業が少なすぎて往生しますが、とりあえず、重電・不動産・建設あたりはやめておけというところでしょうか。
個人的には、飲食、小売、家電、福祉あたりも儲からなさそう(総じて利益率が低い)なので、やめておいた方がいいと思います。
その企業は儲かりそうか?
業界全体が儲かっていても、その企業自体が儲かっていなければお先真っ暗です。なので、企業の「儲かり度」を決算書で必ず確認しましょう。粉飾でもしていない限り、決算書はその企業の実態を丸裸にします。
決算書は上場企業であれば「会社名 決算書」でググればすぐに見つかりますし、未上場企業でも、TDB企業サーチ、官報決算データベース、四季報(未上場版)などで確認できます。
お金をかけてピカピカの新卒採用サイトを作っていても、裏の家計は火の車なんてよくある話です。エントリーする会社の決算書には、穴が開くほど目を通しましょう。
とはいえ、慣れていなければ、決算書から情報を引き出すことは難しいと思いますので、決算書の読み方を簡単に解説した本を読めばいいと思います。個人的には、このあたりの入門書がオススメです。
決算書の良し悪しは、「良い決算書 悪い決算書」でググれば一発です。優良企業とポンコツ企業の差は、決算書に明確に現れます。きちんと数字を読んで、猫をかぶったポンコツをふるい落としましょう。
また、上場企業であれば、株価の推移を確認することも重要です。数年のスパンで緩やかに上昇軌道に乗っている企業は、それだけで好印象です。
ちなみに、ヤフーファイナンスなどの株価情報には「会社情報」も同時に掲載されており、そこに「平均年齢」が記載されています。この情報も重要です。
例えば、平均年齢が高く、資本回転率が業界平均より低い企業では、秋ナスの漬け物みたいな顔をした高給取りのオッサンが、老眼と戦いながら窓際でゴミみたいな社内資料を作っているということです。
キラキラした新卒採用サイトに騙されて、そんな左前の企業にうっかり入ってしまうと、貴重な20代を棒に振ることになりますので近寄らない方が身のためです。
その職種は儲かりそうか?
業界全体・企業が儲かっていても、専門性がなく、誰にでもできる(代替が容易な)職種は儲かりません。例えば、事務系の職種はクラウドシステムの普及により下落圧力が強くなっています。
職種別の「儲かり度」は、転職エージェントなどが出している年収ランキングが参考になります。例えば、パーソルキャリア(doda)が出しているランキングは、職種分類ごとに平均年収がまとめられており、とても分かりやすいですね(※注)。
個人的には、業界の依存度が低い職種がオススメです。つまり、営業・財務・法務・人事など、業界をまたいでも活躍できる職種がいいと思います。
昨今はスペシャリストをもてはやす風潮があります。もちろん、専門性は大事なのですが、突き抜け過ぎた専門性は「それしかできない人」になりがちです。
そこそこの専門性・経験を1つ2つ軸として持っておき、隣接する職種も薄く広くカバーできるジェネラリストの方が、今後はニーズが高まるのではないでしょうか。
前編まとめ
繰り返しますが、就職はガチャです。
特に、就労環境を大きく左右する人間関係は、実際に入ってみなければ分かりません。
ですが、そもそも回さなくてもいい明らかなクソガチャは事前に排除できる可能性があります(とはいえ、結局入社してみなければ分からないことだらけですが)。幸運なことに、いまの時代はクリックひとつで有益な情報を手に入れることができますので、これを最大限に有効活用しましょう。
さて、次回はキャリアを中長期で考える方法を解説したいと思います。
待て!後編!
→ 後編を書きました
※注:歪んだ分布の「平均」であることに注意が必要です。極端な例を出せば、年収100億円のタイガーウッズと、年収100万円のパートのおばちゃん99人がいたとして、この100人の「平均年収」は約1億円になってしまいます。要するに、1つの異常値に平均値が引きずられてしまうわけです。「平均年収」は、その歪みを考慮して見る必要があります。
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