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大企業で起業家精神をどう活用するか:バイアスを持つ人たちの力を引き出す方法


イノベーション停滞の原因とは?大企業における起業家精神の重要性

大企業でイノベーションがうまくいかないという声を聞くことがありました。ここでいうイノベーションとは、全く新しい事業を立ち上げて継続的に成功させ、その影響で組織本体も良い方に変わっていくことです。

たとえば、社内ベンチャーを数百立ち上げても、大企業の中に組織が置かれたものはうまく行かず、スピンアウトして別会社となったものだけがうまくいったというのです。

このような状況の背後に、大企業特有の組織文化やバイアスがあり、起業家精神と実行力を持つ社員の本来の能力を十分に発揮できていない可能性があります。この記事では、大企業が起業家精神を持つ人たちをどう活かすかについてお話しします。

大企業が直面する意思決定の落とし穴

「バイアス」とは、無意識のうちに判断や意思決定に影響を与える認知の偏りのことを指します。

大企業では、長い歴史や慣習にもとづいて物事が決められ、新しいアイデアや挑戦にとってマイナスになることがあります。たとえば、「今までこうしてきたから、これからもそうするべきだ」という考え方には論理的な飛躍がありますが、現状維持バイアスの影響を受けているかもしれません。

一方で、起業家精神を持つ人たちは、新しいアイデアを思いつき、リスクを積極的に取っていきますが、その一方でバイアスを持っていることがあります。たとえば、「自分はこの仕事に対応できるだけの能力が十分にある」という自信過剰 (overconfidence)バイアスや、「きっと大丈夫だ」という楽観バイアスが強すぎると、リスクを軽視してしまうことがあります。


起業家精神を持つ人たちが直面するバイアスとその管理方法

Busenitz & Barney(1997)によると、起業家精神を持つ人たちは、一般的な経営者よりもリスクを低く見積もり、主観的な判断に頼りやすい傾向があります。このようなバイアスが、成功のための力になることもあれば、逆に失敗の原因になることもあります。
大企業では、こうしたバイアスを理解し、上手に扱うことが重要です。バイアスがイノベーションを推進する場合もあれば、逆に会社にとってリスクになることもあるので、その見極めが求められます。

大企業は、彼らのバイアスを理解し、リスクを最小限に抑えつつ、イノベーションを進める方法を見つけることが、成功に欠かせません。

バイアスを克服する方法:成功するイノベーションのために

実際の大企業では、起業家精神とバイアスを同時に持つ人材をどのように生かしていけば良いのでしょうか。たとえば、新しい事業を開発するために独立したプロジェクトチームを作ることが考えられます。

このチーム作ったのは、通常の組織から離れて自由な発想で新しい事業を開発することが目的です。しかし、バイアスを持つ人がチームを率いると、楽観バイアスによるリスクの軽視がチームの成功を危うくすることがあります。こうしたリスクを管理するために、企業はプロジェクトの進捗を定期的に確認し、外部の意見を取り入れることが大切です。

また、リーダーが自分のバイアスに気づき、それを克服するためのトレーニングプログラムを実施することも有効でしょう。
過去の成功体験に頼らず、柔軟な考え方を身につけるためのトレーニングです。これがうまくいけば、リーダーはより客観的な意思決定を行い、起業家精神を持つ人たちのバイアスも理解できるようになるでしょう。

起業家精神を最大限に引き出すために

バイアスを持つ起業家精神を持つ人たちを上手に生かすためには、まずリーダー自身が自分のバイアスに気づき、それがどのように意思決定に影響しているかを理解することが重要です。
これには、周りの人からのフィードバックを定期的に受け取ったり、外部の視点を取り入れたりすることが効果的です。また、楽観バイアスで軽視してしまうことを避けるために、しっかりとリスクを評価し、客観的なデータに基づいた判断をすることが必要となるでしょう。
バイアスを持つ起業家精神を持つ人たちの強みを最大限に引き出せれば、組織全体のイノベーションを進めることができるでしょう。

大企業でのバイアス管理とイノベーション成功の鍵

大企業において、バイアスを持つ起業家精神を持つ人たちをうまく生かすことは、イノベーションを進めるために欠かせません。人間のもつバイアスを理解し、それをリスクではなく可能性として捉えることが、企業の成功につながるでしょう。
自分の組織でバイアスに気づき、それを乗り越えるための取り組みを進めることができれば、より良い意思決定ができ、組織の活性化にもつながるでしょう。

企業・法人向けの認知バイアス講演などのご相談をお受けしています。下記のボタンからお問い合わせ下さい。

※本記事の無断転載・二次利用はお断りします。

文献

Busenitz, L. W., & Barney, J. B. (1997). Differences between entrepreneurs and managers in large organizations: Biases and heuristics in strategic decision-making. Journal of Business Venturing, 12, 9–30.

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藤田政博
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