「読みたいこと」ってなんだ?
今日は本を読んだ感想です。
書評というのではなくて、感想。評するなどおこがましい。
電通コピーライターとして24年、
自分が読みたいものを書くために
退職して「青年失業家」へ。
Web記事500万PV超、
Twitterフォロワー46000人超。
多くの支持を得るwebライター初の著書。
ということで、すでに話題の本をやっと読みました。
著者の対談などはいくつか読んでいて、これはなかなかの人だなと思っていたのです。
中でも、この対談は面白かった。
あ、noteだ。最近、面白いなと思うとnoteだということ多くないですか?
それはいいとして。
ではなぜこれだけ話題の本をなんとなく読みそびれていたのか。
その理由は、タイトルなんですよね。
舐めてますよね。「読みたいことを、書けばいい」って。
なんだと思っているんだと。苦心して書いているのにと。
多くのnoteクリエイターさんは思うんじゃないでしょうか。
そういうものじゃないんだ。我々が書こうとしているのは、とか。
しかも副題が「人生が変わるシンプルな文章術」。
何をいうんだと。変わらないから苦労しているんだと。
多くのブロガーさんは思うんじゃないでしょうか。
でも、この方自身が文章を書いて人生が変わったんだからしょうがない。
そういう本です。
総じて、筆者の電通の後輩になるという方が書いた通りです。
それだけならば、読み手になればいい、ということも、この本には書いてあります。誰かが自分が読みたいことを書いているならば、それ以上書くことがないならば、読み手であればいい、それもシアワセな人生ですよ、的なことを。
ですので、私が付け加えたいことを書きますね。
私は、この本を読む前に仮説を立てたんです。
この筆者のことは知らないけど、きっと「読みたいことのレベルが高い人」なんだろうと。
ネットで有名なコラムや随筆を書いている人をほとんど知らない私は(だいたい映画評などを読まない)、この方のことは最近よく読んでいる古賀さんとか糸井さんとか、その辺から漏れ見えてきていました。
こういう文字巧者(なんて言葉はないけど、なんとなく今作ってみた)が褒めるんだから、文章も達者なんだろうけど、このタイトルをつけるからには「読みたいこと」のレベルが高いから、その自分の求める読みたいことが書けるかどうかなんだ、というハイブローな話なんだろうなあ、と思ったのです。
だいたい、その人の文章は、その人が読んできたもので出来ているのではないでしょうか。読まないと、何を書いていいかわからないものです。
だからきっと、この人は、たくさん読んできた人で、だからこそ、書けるんだろうなということも想像できます。
その仮説と予想は、だいたい当たってました。
だいたい、というのは、私の仮説や予想の、さらに数倍上を行っていたからです。
さらに、電通のコピーライターを24年もやっていたということは、一言書く裏側に、どれだけの知識や情報を込めているかも想像できます。だって、そういう商売ですものコピーライターって。それを一線で20年以上できるということは成果を出してきたわけで、そういう人が見切りでいい加減なものを書けるわけがないのです。性分というか、習い性として。
糸井さんもコピーライターだった方だから、平易に書いているようで、そこに高度なロジックと幾重にも折り重なった配慮が垣間見える文章だと感じます。
この田中泰延(ひろのぶ、と読むそうです)さんも、書いてある文章の乱暴さに騙されると、この方の術中にはまります。いつの間にか引き込まれて抜けられなくなっている中毒性がある文章を書いています。
その「おもしろ文体」の合間に膨大な知識量と読書量、映画量を背景にした名言を織り込み、そして「物書きは「調べる」が9割9分5厘6毛」と文中でも述べているように引用と例証が打ち込まれているのですが、今、この本を読むべき人にとっては、さらに言葉の定義がなされていることが重要なのです。この言葉の定義だけでも、この本を読んだ価値があります。それが何かは、本を読んで探してください。
この本は、著者が冒頭に書いている通り「文章テクニックの本ではない」。
「書くことは、生き方の問題である」という一言を書くために、250ページ以上(文字が大きめなのとレイアウトのおかげで、文章量の割にはページ数が多いですが、この文字の大きさと行間の空きが、ありがたいと思う歳になった自分がいます)費やした本でした。
いくつか挟んであるコラムがお得感を醸し出しています。
すべての編集者予備軍とライター予備軍は、読んだ方がいいと思います。
【目次】
はじめに 自分のために書くということ -書いたのに読んでもらえないあなたへ
序章 なんのために書いたか
付録1 田中泰延が書いた記事10選
第1章 なにを書くのか 〜ブログやSNSで書いているあなたへ〜
その1 文書と文章は違うことを知っておく
その2 ネットで読まれている文章の9割は「随筆」
その3 書く文章の「分野」を知っておく
その4 定義をはっきりさせよう
その5 ことばを疑うことから始める
文章術コラム❶ 広告の書き方
第2章 だれに書くのか 〜「読者を想定」しているあなたへ〜
その1 ターゲットなど想定しなくていい
その2 だれかがもう書いているなら読み手でいよう
その3 承認欲求を満たすのに「書く」は割に合わない
その4 何を書いたかよりも誰が書いたか
その5 他人の人生を生きてはいけない
文章術コラム❷ 履歴書の書き方
第3章 どう書くのか 〜「つまらない人間」のあなたへ
その1 つまらない人間とは「自分の内面を語る人」
その2 物書きは「調べる」が9割9分5厘6毛
その3 一次資料に当たる
その4 どこで調べるか
その5 巨人の肩に乗る
その6 感動が中心になければ書く意味がない
その7 思考の過程を披露する
その8 「起承転結」でいい
文章術コラム❸ 書くために読むといい本
第4章 なぜ書くのか 〜生き方を変えたいあなたへ〜
その1 書くことは世界を狭くすることだ
その2 貨幣と言語は同じもの
その3 書くことはたった一人のベンチャー起業
その4 文字がそこへ連れてゆく
その5 書くことは生き方の問題である
付録2 田中泰延について書かれた記事5選+おまけ
おわりに いつ書くのか。どこで書くのか。
追記:これを読めば良い気もする
追記2:これを読んでからなら、書かなかった。
サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。