藤沢製本

滋賀県大津市にある藤沢製本公式noteです。創業60年くらい。主に、創業よりずっと、出…

藤沢製本

滋賀県大津市にある藤沢製本公式noteです。創業60年くらい。主に、創業よりずっと、出版社さんのご依頼で本を作る仕事をしています。工場には、カバの妖精が住んでいます。

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  • 60年続けた本業を撤退した話

    京都での創業から、今年で60年。“強くて、美しくて、使いやすい”本作りを出版社と一緒に追い求めてきた『株式会社藤沢製本』は、2023年11月末をもって、工場の製本ラインをすべて停止しました。 製本屋でありながら祖業でもあり本業でもある「本作りから撤退する」という結論を出すことになりました。 製本事業を退く経緯や感じていた構造的な問題、ここ数年で見つめ直してきた「藤沢製本としてのアイデンティティ」のありか、私たちが今後何を引き継いでいくかなどを、数回に分けて記しています。(全6回)

最近の記事

それは「みんなが幸せ」な状態ですか?──60年続けた本業を撤退した話(6)

2023年11月末、滋賀県大津市に本社を置く藤沢製本は、創業から60年続けていた製本事業からの撤退を決めました。 この連載は、そんな私たちの紆余曲折を記録に残し、次につなげるために始めたものです。特に第2回〜第5回までの4回で、歴史を大きく4つのフェーズに分け、起きたことや課題を整理してきました。 【第2回】攻めのアイデアと機械化で、拡大と成長 【第3回】ピークを超えた市場、浮かび上がる「問題」 【第4回】経営改革から、「製本」以外の事業化に挑む 【第5回】「製本を

    • 「製本をやめよう」と決断できた日──60年続けた本業を撤退した話(5)

      2016年ごろからの約6年は、再生支援を受けながら、さまざまな試行錯誤をし続けた期間でした。しかし結果として、「製本屋としてこの先も生きていける」という手応えを掴むことができませんでした。 2023年、私たちは何度も葛藤した末に、製本事業の撤退を決意します。藤沢製本の歴史を残す連載第5回は、悩み続けた最後の1年の話です。 【前回の記事】 全社員に、会社の状況を報告 藤沢製本は、メインである学生参考書の製本が春〜秋に集中することから、例年冬場に仕事が落ち着きます。それは

      • 経営改革から、「製本」以外の事業化に挑む──60年続けた本業を撤退した話(4)

        市場の縮小が始まるとともに、浮き上がってきたさまざまな課題。多品種小ロット化も進む出版・製本業界で、大規模な機械ラインに特化してきた藤沢製本では、2010年代以降、急激に経営状況が悪化していきました。 いよいよ資金繰りが苦しくなるなか、再生支援とともに本格化させたのが「内側の改革」と「外への発信」「新規事業の立ち上げ」です。連載第4回では、限られた期間で私たちに何ができ、何ができなかったかの試行錯誤を振り返ります。 【前回の記事】 生産工程、労務、値上げなどで「粗利の確

        • ピークを超えた市場、浮かび上がる「問題」──60年続けた本業を撤退した話(3)

          時代に先駆けた投資と発想力で、参考書業界の発展とともに、事業を拡大させた藤沢製本。しかし出版市場がピークを迎えると、徐々に苦しい時代が訪れるようになります。 それは私たちのみならず、製本業界全体が追い込まれていく歴史でもありました。藤沢製本の歴史を記す連載・第3回は、そんな1990年代〜2000年代に起きた変化を、自らの反省を含みながら振り返ります。 【前回の記事】 競争の激化と、高まり続ける品質要求 拡大を続けてきた出版業界ですが、1990年代に入ると市場が成熟し、

        それは「みんなが幸せ」な状態ですか?──60年続けた本業を撤退した話(6)

        • 「製本をやめよう」と決断できた日──60年続けた本業を撤退した話(5)

        • 経営改革から、「製本」以外の事業化に挑む──60年続けた本業を撤退した話(4)

        • ピークを超えた市場、浮かび上がる「問題」──60年続けた本業を撤退した話(3)

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        • 60年続けた本業を撤退した話
          6本

        記事

          攻めのアイデアと機械化で、拡大と成長──60年続けた本業を撤退した話(2)

          滋賀県大津市の南部、川や田んぼに囲まれた自然豊かなエリアの一角にある藤沢製本。長く学生参考書などの書籍を作ってきた私たちは、2023年11月末に、本業からの撤退を宣言しました。 このnoteは、そんな藤沢製本の歴史とこれからを記す連載です。 今回は、京都で創業した1960年代から、事業拡大を続けた1980年代ごろまでのお話。ここで藤沢の、“強くて、美しくて、使いやすい”本作りのベースができました。 <前回の記事> 京都で創業した藤沢製本 藤沢製本の創業は1963年。

          攻めのアイデアと機械化で、拡大と成長──60年続けた本業を撤退した話(2)

          藤沢製本は「製本」をやめます──60年続けた本業を撤退した話(1)

          京都での創業から、今年で60年。“強くて、美しくて、使いやすい”本作りを出版社と一緒に追い求めてきた『株式会社藤沢製本』は、2023年11月末をもって、工場の製本ラインをすべて停止しました。 紙の出版物の市場が年々縮小していくなか、6年ほど前に経営危機を迎えた藤沢製本。そこから「従来の受注・生産体制を見直す」「拠点を滋賀に集約する」など、できる限りの業務改革を行ったつもりでしたが、本業で未来が開けるほどの状況には至らず、製本屋でありながら祖業でもあり本業でもある「本作りから

          藤沢製本は「製本」をやめます──60年続けた本業を撤退した話(1)