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アルスナイトについてと、僕が今作りたい特撮ヒーロー

 僕が書いたシナリオ作品「アルスナイト」、その第一話になる「騎士、爆誕」、楽しんでいただけているだろうか?
 まだ読んでいない人、そもそもそれって何という人は、下記にリンクを貼っておくので、是非とも読んでいただきたい。

 そしてこの記事では、この作品を生み出したきっかけについて書いていこうと思う。
 

 この作品に登場するヒーローのアイデアが浮かんだのは、昔、とある知り合いから聞いた、「ウルトラマンがどう見てもウェットスーツを着た人間に見える」という意見からである。
 おそらくその人は、年相応に特撮番組を卒業し、CGをふんだんに使ったドラマや映画に慣れ親しんでいた人なのだろう。大人になっても、アニメや特撮のヒーローが好きな人からはあまり聞かれない意見だ。
 これを聞いて「お前はウルトラマンがなんたるかがわかってない!」などと怒る人もいるだろうが、僕はそれよりも、なぜそう感じる人がいるのかを考えながら、特撮技術に関する知識を、書籍や授業で深めていった。
 そして、これはもう仕方がないことだという結論に至った。それはなぜか?

 ウルトラマンが誕生した1966年当時、巨大怪獣が街を破壊するという映像は、ミニチュアを使った特撮技術で表現する以外、方法がなかった。巨大怪獣と戦う銀色の巨大宇宙人を表現するには、銀色に塗ったウェットスーツを着た人間がミニチュアセットで、スポンジとゴムでできた怪獣と戦う姿を撮るしかなかったのだ。
 しかし、技術の向上によって映像は鮮明で美しくなり、特撮も「スターウォーズ」の登場以降、コンピューターを使うことで、より自由に、よりリアルで、よりド派手な映像が作れるようになった。莫大な予算さえあれば、フリーのCGソフトでハリウッド映画レベルの映像を作れてしまう時代には、巨大怪獣と戦う銀色の巨大宇宙人を、自然な姿で描くことなど雑作もない。
 「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」の予告を観た人であればわかるだろうが、CGで作られたあの映像こそが、おそらく、今この現実世界に怪獣や巨大宇宙人が出現したとき、僕らが目撃することになるだろう、一番リアルな光景だ。

 そんな作品がポコじゃか生まれる世の中で、ウェットスーツを着た人間が精巧なミニチュアセットに立っていても、その映像を観た今の若年層には、言葉通りの姿に見えるのではないかと感じたのだ。
 特撮というジャンルの歴史的背景を顧みれば、「ウルトラマンがどう見てもウェットスーツを着た人間に見える」と言われるのは、遅かれ早かれ、当然の結末として定められていたのである。時の流れとは残酷なものだ。

 だが、多くの人がミニチュア嫌いになったというわけではないというのも、確信を持って言える。特撮番組を観ていなくても、おもちゃコーナーの精巧なミニカーや鉄道ジオラマに目を奪われる人は多いし、YouTubeには、そんなミニチュアやプラモデルの制作工程や、おもちゃで遊ぶ子供たちの様子を撮影した動画がいくつもある。
 特撮に関しても、単に着ぐるみの怪獣やヒーローが出てくる作品が少なくなったというだけで、CGを使うことが多くなったといえど、ミニチュアを使った特撮は、国内外問わず、多くの観客が気づかない形で今も使われている。
 人は今も何かしらの形で、ミニチュアというものに親しんでいるのだ。

 では、この現代において、ミニチュアセットに立つ人間を、街の中に立つ巨人として、多くの人たちに楽しんでもらうには、どうすればいいだろう?
 いくつかある答えの一つとして、僕がこれだ!と思ったのが、そのとき、僕らやその下の世代の間で人気を博していた、異世界系ジャンルの騎士や戦士が着ているような、西洋甲冑のような鎧を着せてしまうことだ。
 これなら、関節部の皺を造形物で隠せるし、たとえ隠せなくても「これは、巨人が自らの体を保護するために着けているもの」「力を抑えるための拘束具」という設定付けで逃げることができる。
 それだけなら「新世紀エヴァンゲリオン」やスーパー戦隊のロボットと同じような作品になるが、そこでさらに、今や一般的なものとなった異世界系ジャンルの要素も加えれば、特撮ファンや子供たち以外、それこそ、自分は特撮とはもう縁がないと思い込んでいる、アニメや漫画が好きな人を取り込むこともできるのではないか。

 ついでに、異世界系ジャンルの大半は、主人公がほとんど無敵という展開、いわゆる、「俺TUEEE」系が多く、その設定に違和感を感じるものも少なからずあるのだが、巨大ヒーローものならどんな世代の人でも、その展開を無理なく受け入れられるのではと考えた。
 よくよく思い出せば、この「俺TUEEE」系作品の展開は、初代の「ウルトラマン」にその原典がある。前世の記憶があるからとか、異世界自体の化学技術が遅れているみたいな設定にするより、画としてもシンプルな「神秘の力で巨人になれるからアイツは強いんだ!」にあえて戻すことで、まだ言葉も覚えていない小さな子供や、日本語が通じない外国の人にも理解できる作品になる。
 結果として、世界中の人たちに観てもらえる作品になると考えたのである。

 この作品に【アニメシナリオ作品】という名を付けているのは、今のところ、実写で作ることはほとんど想定していないからだ。
 想定としては、「SSSS.GRIDMAN」のようなアニメーション、もっと欲をいえば、実写で言うところの特撮パート(主に、怪獣との戦闘シーン)はミニチュア特撮、本編パート(人物が活躍する日常シーン)は、フィギュアのようなCGのキャラクターで表現した、特殊なハイブリット型のCGアニメにしたいと考えている。
 方法論としては、新しい方の「サンダーバード ARE GO」と同じになるのだが、ここで日本のアニメフィギュアの要素を加えてみたりすれば、「サンダーバード ARE GO」とも違う、面白い作品が作れるのではないだろうか。
 これが、僕が現時点で考えられる、僕なりの新しい特撮の魅せ方の一つである。

 「シン・ゴジラ」や「SSSS.GRIDMAN」のように、アニメや実写のCG映像に、ミニチュア特撮のエッセンスを取り込んだ作品が増えてきた。そんな作品はこれからも出てくるだろう。
 その流れと同じようで違う、面白い作品にしていけるよう、とことん励んでいきたい。

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