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成果目標のための行動目標

先日、個人単位、チーム単位での、設定した目標に対する振り返りを行う場に、複数回参加する機会がありました。適切な目標を設定し、目標達成に向けて取り組むことの重要性は、私たちのよく知るところです。しかし、それをやりきるのが簡単ではないということも、普段から感じているところです。

目標は、その大きさや時間軸の観点から、分解して設定することがよく行われます。例えば、最終的に達成したい「売上高10%増」のような目標をKGI(Key Goal Indicator=重要目標達成指標)とします。そして、その手前の目標を「販売数10%増」のようなKPI①(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)として設定します。

KPI①をさらに複数のKPI②「既存顧客の販売頻度10%増」「新規顧客〇人獲得」のように分解し、細分化された各KPIを実現させるために何に取り組むか決めて実行するやり方があります。

このような分解を、「最終目標」「中間目標」のような言葉で行われることもあります。このことを別の言葉を手がかりに、「アウトプット」と「アウトカム」という捉え方をすることもできます。

「アウトプット」とは「出力」のことで、「インプット」(入力)の反対語です。取り入れた知識や情報を吐き出して形にすることで、はじめて価値のあるものになるというわけです。

この「アウトプット」について、ビジネスシーンでは「成果」という意味合いで使われることもありますが、「アウトカム」と分別して捉えることがポイントだと思います。

英辞郎によると、言葉の意味について次のように訳されています。

アウトプット:生産(高)、産出(量)、生産活動

アウトカム:結果、結末、成果、所産

つまりは、「アウトプット」は、「正確には成果ではない」ということです。生産や産出は自分たちの意志で行えます。しかし、作っただけでは、社会的な価値はもちえていません。それを必要とする人のところに届けて、良さが認められ、使っていただくことで、価値となります。そして、最終的に相手(お客さま)がそれを買ってくださるかどうかの決定は、相手の意志によってなされるものです。自分たちが決めることではありません。

このように考えると、自分たちができる行動に焦点を当てたものがアウトプット目標と言えます。相手の意志決定が介在した上で、相手や社会にもたらした影響度合いに焦点を当てたものがアウトカム目標と言えます。ポイントは、次の通りと考えます。

「KPIや中間目標を、自分たちの意志や努力でコントロールできる行動レベルの目標まで落とし込む。普段の業務や取り組みでは、そこに集中する。」

「明日雨が降るかどうか」に焦点を当てても、何もやりようがありません。雨が降るかどうかは、最終的には天が決めることだからです。私たちにできることは、降水確率で各天気の可能性の高さを把握すること、把握した可能性の高さに応じて、何もアクションしない、折り畳み傘をかばんに入れる、雨天時のイベント切り替えの準備を万全にしておく、などを決めて実行することです。「雨が降ったらどうしよう」と考え続けても、何も結果は変わらず、ストレス要因になるだけです。

「売上高10%増」などのアウトカムも、「明日雨が降るかどうか」と同じ種類のものだと思います。そのこと自体を気にしても、身の回りの現場では何もやりようがないし、何も結果に影響を与えません。集中すべきは、生み出したいアウトカムにつながる高い可能性のアウトプットを定義し、その実行に取り組むことです。例えば、「新商品○○を〇社に提案する。そのロールプレイを〇回〇時間ずつ行う」などです。

そして、思ったようなアウトカムにつながらなければ、アウトプットを見直せばよいというわけです。例えば、新商品のどこが不十分だったのか仮説立てる、提案先のターゲットが合ってなかったか検討する、ロールプレイの内容を見直す、などです。

ある企業様では、「目標に対する日常のPDCA会議で、アウトカムの進捗状況のことは一切取り上げないし言わない。アウトプットのみ取り上げて議論する。「売上目標に対してこんなに来ている/これだけしかいってない」などアウトカムについて議論しても、不用意に慢心したり不必要に士気が下がったりするだけだから」と聞きました。このやり方が必ずしもよいとは限りませんが、ひとつの考え方だと思います。

冒頭の機会の多くでは、アウトカムのみに焦点を当て、「もっと頑張ろう」「気合を入れよう」などでとどまっている場面も散見されました。私自身も、自分の目標の振り返りではアウトカムの実現・未実現のみに終始してそこで思考停止してしまう、などになりがちです。悩むなら、自分にコントロール可能なことを定義し、それをどう実行するかに悩むほうが生産的だと思います。

<まとめ>

自分たちが取り組めるアウトプット目標を、的確に設定して実行する。

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