見出し画像

視聴率について考えてみた

1年にわたって放送されたNHK大河ドラマが最終回を終えました。いろいろなところで大河ドラマの振り返りを目にします。私の周囲でも、「今回の大河ドラマ視聴率低かったらしいね」「それは○○だからじゃないの?」という会話を耳にしました。

例えば、12月20日Web記事「「どうする家康」大河歴代2位の低視聴率も総局長が評価「素晴らしい作品」配信は歴代最高 多様な視聴形態」(スポーツニッポン新聞社 によるストーリー )では次のように紹介されています。(一部抜粋)

NHKは20日、東京・渋谷の同局で定例会見を行い、今月17日に最終回(第48話)を迎えた大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)について山名啓雄メディア総局長が言及。リアルタイムの視聴率は苦戦したものの「素晴らしい作品だったと思う」と評価した。

配信全盛の時代となったこともあり、期間平均の平均世帯視聴率11・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は大河歴代ワースト2位に沈んだものの、物語の舞台となった静岡地区(同16・0%)や名古屋地区(13・4%)は関東地区を上回る好調ぶり。同時・見逃し配信サービス「NHKプラス」は「どうする家康」が大河歴代最高視聴数を獲得した。

山名総局長は「朝ドラや大河が終わる度に所感を尋ねられているが、生活スタイルが変化していて、『どうする家康』はBS(午後6時から)や4K(午後0時15分から)で先行放送。NHKプラスでの視聴数が過去最高で、録画だけじゃなく、多種多様な形で見られていて、単純に過去の数字(視聴率)と比較できない時代になったと思う。素晴らしい作品だった」と絶賛、総括した。

視聴率は苦戦したものの、新解釈の作劇やデジタル技術「バーチャルプロダクション」を本格導入した撮影手法など“新しい大河”への挑戦には一定の評価があった。

知人に教えていただいて知ったのですが、12月22日は「視聴率の日」でした。テレビ視聴率レポート第一号が発行された日なのだそうです。

よく「同じ番組の視聴率が以前より下がった」「テレビ全体で視聴率が下がった」などという話になります。果たしてそうなのでしょうか。ここでは2つの視点から考えてみます。ひとつは、「視聴率」の言葉の定義を的確にもっておく視点です。

一般的に言われる「視聴率」は、テレビ放送を放送と同時にリアルタイムで視聴している「リアルタイム視聴率」を指します。これに対して、リアルタイムとは別の時間で見る、タイムシフトでのテレビ視聴を言う「タイムシフト視聴率」があります。番組を録画で視聴した場合や、同記事にもある同時・見逃し配信サービス「NHKプラス」などがこれに含まれます。

さらには「総合視聴率」というのがあります。リアルタイム視聴率+タイムシフト視聴率-重複視聴率(両者の重複影響分を差し引く)で求められる値で、実質的な視聴率と言えます。

例えば、同記事にもある「どうする家康」のタイムシフト視聴率につて、ビデオリサーチ社データを見に行くと、12月10日(日)の放送回(最終回前の第47話)で関東地方で世帯視聴率が6.9%となっています。リアルタイムの視聴率とNHKプラス等によるタイムシフト視聴率を加味した、関東地方世帯での総合視聴率は17.2%となっています。これは、同日の同時刻部門でも、週間のドラマ部門でもトップレベルです。

さらには、同記事にもある先行放送のBSや4Kに加えて、土曜日の13:05~の再放送は上記視聴率とは別番組扱いです。これらも加味すると、実質的な視聴率が20数%はあろうことが想定されます。テレビを設置している4世帯のうち1世帯程度が見ていることになり、それなりの影響力だというのが想像できます。

もうひとつは、番組を取り巻く配信環境(市場)全体を網羅的にとらえてみる視点です。

以前に比べて娯楽の選択肢が広がったことで、テレビ自体を設置していない家が増えていたり、テレビ以外のメディアの視聴時間が増えたりしています。しかし、ネット経由で配信されている番組の中には、限りなくテレビ番組と同じような構成で、媒体の手段がテレビという機械からPCかスマホという機械の経由に置き換わっているだけというものもあります。それらは、以前のテレビとほどんど同義だと言っていいと思います。

よって、視聴率の数値の推移だけをもってして、「テレビ自体が無力化している」「特定の番組がよくなかった」などと言った場合、それは本質ではないかもしれないと思います。テレビに加えてネット配信番組の存在なども踏まえると、「社会的な組織である製作者が、何らかの意図で作った番組を、一方的に配信して見てもらうという形態自体は、依然として相応の影響力がある」と考えられそうです。

もちろん、テレビ番組のCM枠を自社商品の最有力の広告手段としていた企業などは、テレビのリアルタイム視聴率という狭義の視聴率が下がることで、プロモーション戦略がうまくいかなくなるかもしれません。そのような場合は、リアルタイム視聴率は死活問題となり得ます。

「上がっている」「下がっている」「増えている」「減っている」といったときに、それをどのように評価すべきなのかは、それらの事象を取り巻く環境や前提を俯瞰的にとらえると少し違った見え方になるかもしれません。このことは、自身や自社に直接関係するデータや報告などを見る際にも、通じるものがある視点だと思います。

<まとめ>
何かに対する評価や意味づけをするにあたって、言葉の定義と俯瞰的な視野をもつ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?