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月例給:その他要素を考える(2)

前回の投稿では、通勤手当など給与の中の手当制度について考えました。今回もその続きで月例給について考えてみます。

前回までにで、給与の要素について下記のように整理し、うち1.~6.について取り上げてきました。

1.仕事の結果(業績・成果)
2.仕事の過程(業務プロセス)
3.仕事の種類(担当業務内容)
4.期待する役割
5.能力・行動特性・資質(発揮できる持ちものの大きさ)
6.実費弁済(法的義務は負わないが企業の判断で支払い)
7.業務自体とは直接関連しない属人的な要素

7.の代表格は、住宅手当と家族手当(扶養手当)です。厚労省の令和2年就労条件総合調査によると、住宅手当制度を採用する企業は全体の約47%、支給額は一人当たり約17,800円となっています。

住宅手当は、特異な性質のものだと言えます。なぜなら、衣食住のうち、衣食に関する手当はほとんどなされないものの、住に関するものだけ明確に存在しているからです。本来、その会社に勤務してもしていなくても、住宅には住んでいるはずです。通勤とは違って、その会社に勤務するから家賃が発生するというものではありません。

支払われている趣旨としては、どこに住むかまでを含めて会社が社員の雇用を丸抱えする考え方の表れだと理解することができます。かつての社会環境であれば有効だったかもしれませんが、今後についてはどうでしょうか。それでも、半数近い企業が依然として住宅手当を出していることを踏まえると、この支給項目へのニーズが高いか、廃止が難しいということが想定されます。

家族手当は住宅手当以上の採用率で、同調査では68.6%となっています。家族手当は大きく、就労していない配偶者、子供、それ以外の扶養者に対して支払われるものです。

家族手当を出す意義は何でしょうか。かつての社会環境では、育児中の女性が正社員雇用の職を見つけるのが難しく、世帯主である男性の収入で配偶者と子供をすべて養うモデルが一般的でした。しかし、今では育児中の女性も様々な形で職を見つけることが可能です。いまだに「女性活躍」と言われているぐらいですので、依然として育児中の女性が自分に合った雇用を見つけるのは難しさがあるのは確かです。しかしながら、家業に専念する(専業主婦・夫)かどうかは、社会的にそう決められているというより、個人のライフスタイルの選択になってきています。配偶者が就労しているかどうかで手当支給有無が変わることに妥当性があるかは、改めて考えてみてもよいかもしれません。

子供に対して手当を出すことはどうでしょうか。配偶者同様、子供が何人いるかは、会社にとっては直接関係ありません。会社にとっては、支給する(投資する)給与に見合った貢献をしてくれるかどうかです。同一労働同一賃金に徹するなら、子供の数で給与が変わるのは妥当でないでしょう。

これについても、会社によって考え方が分かれるところです。少子高齢化が進む中で積極的に子育てし社会に貢献する社員は会社として応援したい、だから家族手当を出す、という考え方の会社もあります。この考え方のもと、会社によっては配偶者手当を廃止し、子供手当を敢えて拡充する例も聞きます。社会環境の変化に沿った、一定の合理性がある考え方だと言えそうです。

前回から、6.と7.について考えてきました。
以上のように考えると、何に対して実費弁済と定義するのか、本来は業務と直接関係ない属人的な要素についてもどういう理由で支給対象としたいかは、社会環境の変化も織り込む必要があり、組織の考え方が表れるものでもあると言えます。そして、合理的に制度見直しができれば、企業にとってはコスト削減にもなることです。

小さなことではありますが、こうしたことをひとつずつきっちり煮詰めてメンテナンスしている企業は、やはり事業計画や社員の人材育成などに対しても対応がきっちりしています。大企業であっても、目的が不明確なまま昔の名残で手当制度が存在し、かえって社員の不公平感を生み出す要因になっていることがあります。そうした会社では、たいてい人材育成に対する考え方もポリシーや運用が定まっていません。

改めて、自社の諸制度について現状評価してみてはいかがでしょうか。

<まとめ>
属人的な要素に対する手当支給をするなら、会社としての考え方を整理するべき。

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