5月19日の日経新聞で「4月の貿易赤字、3カ月連続縮小 米欧経済減速に懸念」というタイトルの記事が掲載されました。財務省が18日に発表した2023年4月の貿易統計(速報)で、貿易赤字は4324億円となり、赤字額は3カ月連続で縮んだという内容です。資源高や円安が一服して輸入額が減った影響が大きいとしています。
同記事の一部を抜粋してみます。
先日投稿した「経常収支の黒字は続くか」では、貿易赤字が1月に単月として過去最大の3兆1818億円となったことを取り上げました。そこから4324億円まで急速に赤字額を減らしています。
貿易収支(財貨の輸出入)と、サービス収支(知的財産権等使用料、旅行など)、第一次所得収支(対外投資で得られる収益)、第二次所得収支(他国への援助など)の合算である経常収支が通年で赤字になってしまう状況は当面遠のいたようです。
しかしながら、資源高と円安が続く限り、輸入額を膨らませるという構図は続きます。米欧を中心とする経済も停滞が見込まれていて、今後輸出が増えていく見通しもたちにくい状況です。貿易赤字の構造は当面続きそうです。
同日付の別記事「一時1ドル=138円台後半 日本のデジタル赤字も一因」では、サービス収支の赤字要因について紹介しています。(一部抜粋)
デジタル収支の赤字は、10年前には1兆円以下でしたが、今では5.1兆円です。旅行収支(受取:外国人が日本で消費-支払:日本人が海外で消費)は、2019年のコロナ禍前のピークで年間約3兆円の黒字です。訪日外国人が日本でお金を落としてくれるインバウンド消費の好影響が指摘されていますが、現時点では旅行収支の黒字を上回るデジタル赤字が発生していることになります。
今話題とされている生成AIでも先行しているのは米系企業等です。生成AIなどを活用する流れは加速すると見られます。今後も赤字額拡大していき、かつその拡大スピードが速まっていくことが想定されます。
今後、経常収支黒字を維持できるかは、
・海外で稼いだ利益による国内への再投資
・外国からの対内投資の呼び込み
・訪日客が日本で落としてくれる旅行収支の拡大
・特定のエリアなどに過度に依存しない資源調達の確保
・IT競争力の向上
などにかかっていると考えられます。
通年で経常赤字となると、円通貨や金利の動きなどに日本の収支力の弱さを反映した新たなトレンドが形成され、ビジネス、生活に与える影響が大きいものになると想定されます。引き続き動きを見ておくべきだと言えます。
<まとめ>
デジタル収支の赤字が、経常収支の黒字を減らす大きな要因となっている。