経常収支の黒字は続くか
3月8日の日経新聞で、「経常赤字最大の1.9兆円 1月、円安・資源高で」というタイトルの記事が掲載されました。単月での日本の経常収支が、比較可能な1985年以降で過去最大となったという内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
経常収支=貿易収支(財貨の輸出入)+サービス収支(知的財産権等使用料、旅行など)+第一次所得収支(対外投資で得られる収益)+第二次所得収支(他国への援助など)です。
第1次所得収支では、日本側が得た利益は受取額、海外投資家が日本への投資で得た利益は支払額で、差し引きして受取額が多ければ黒字となります。第1次所得収支は、昨年度対比で黒字が増え続けているようです。日本は今や、世界最大級の第1次所得収支黒字国です。
一方で、貿易赤字額が大幅に増えています。エネルギーの輸入価格の増加や1月という性質や中国の時期的要因などがあるとはいえ、貿易赤字が常態化していることが改めて確認できます。かつての時代の日本は、日本で作った物を海外に輸出して売って稼ぐ加工貿易立国でしたが、今では海外投資での稼ぎで貿易赤字を埋め合わせる国となっていて、産業構造が大きく転換していることが分かります。
経常収支が長期的には黒字であることが、日本経済に対する評価につながっています。仮に通年で経常収支が赤字となりそれが恒常的になると、評価がひっくり返って、日本経済にとって激震となる可能性もあります。
日本は赤字国債の発行大国ですが、それがあまり問題にならずにきたのは、日本国内の膨大な金融資産もあってのことです。「日本の借金は日本国内で調達しているから、とりあえず大丈夫」などと言われるゆえんです。しかし、経常収支の赤字常態化は日本にある資産の海外流失の常態化を意味します。日本の国債が国内だけではまかなえなくなり、海外に買ってもらわなければならないという状況にもなり得ます。
日本国債への信認が下がると、日本国債(=日本国)を買うリスクが増えるということになり、円や国債の暴落につながる可能性など、その影響は計り知れないと想像されます。2月以降の経常収支に注目していく必要があります。
長期の傾向が分かりやすい季節調整値では、経常収支は黒字を維持しているとあります。しかし、黒字幅が縮小しています。今後黒字を維持していけるかどうかは、海外で稼いだ利益による国内への再投資、外国からの対内投資の呼び込み、訪日客が日本で落としてくれる旅行収支によるプラス、などが拡大するかどうかにかかっています。
<まとめ>
1月の日本の経常収支は、単月で過去最大の赤字である。
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