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オンラインレッスンの事例(3)

前回までの投稿で、オンラインレッスンとオンラインレッスンの事例について取り上げてきました。
今回は、それらの総括から得られる経営戦略上の視点を考えてみたいと思います。

レッスンのオンライン化やA社の事例から、経営的な視点で参考にすべき点を、4つ挙げてみます。

1.構造変化は永続的なもの
コロナの感染は、ワクチンや治療薬の普及、集団免疫の獲得とともに、いつかの時点で必ず収束します(それが「何年何月」なのかは、まだわかりませんが)。しかし、コロナ禍に対する社会・個人の対応によって、社会システムは完全にパラダイムシフト(ある時代・集団を支配する考え方が、非連続的・劇的に変化すること)しました。オンライン化された業態のほうが合理性・効率性のあることについては、感染収束しても元の業態には戻りません。改めて、コロナ禍が新時代に導いたと認識して、あらゆるシステムを見直していかなければならないと考えるべきでしょう。

2.オフラインとオンラインの統合
オフラインはオフラインならではの良さがあります。「今、ここ、皆による意識の統一」など、オフラインでなければ成立が難しい要素もあります。一方で、オンラインには、場所を選ばない、時間の制約を軽減できるなどの良さがあります。自社の事業、商品・サービスの特徴を改めて認識して、オフライン・オンラインそれぞれの長所をかけ合わせて、自社として何をどのように提供できるのが理想の状態かを見出していくことが、今後ますます求められるでしょう。

また、このことは顧客に対する商品・サービスの提供内容・提供方法以外にも、社内のマネジメントにも通じる視点です。上司・部下・同僚との打ち合わせや面談をオフライン、オンラインのどちらで行うか、広くはオフィス出社かテレワークか、両者をどのように組み合わせていくかについて、多くの会社で試行錯誤中のことと思います。この状況は当面続くと思われますが、自社なりの最適解を見出し、マネジメントのあり方として確立していく必要があります。

3.未来投資の重要性
業績が順調で経営資源に余裕がある時にこそ、外部環境の変化を予見し、未来投資をするべきです。A社幹部も次のように話していました。「オンラインレッスン事業がコロナ禍発生前に大赤字を出していた時には、『利益を生まないこの事業に経営資源を投入するのは会社としていかがなものか?』と思っていた。しかし、今となっては事業展開の重要な選択肢となっている。調子のいい時に新事業の仕込みはやっておくべきだというのを認識した。」

今回テーマにしたオンラインレッスンも、コロナ禍の発生によって急に生まれてきたニーズや市場ではありません。テクノロジーの発展によって、コロナ禍前からそのニーズは存在していたわけです。コロナ禍は「来るべき変化を早めた」きっかけに過ぎないと言えます。平時のうちに外部環境の変化を想定して先取りし、自社が何に取り組んでおくべきかを仮説立て、利益の一部を積極的に未来投資に回して来るべき変化に備えるべきでしょう。

コロナ禍では、危機的な局面に対応できるだけの十分な手元資金を確保する必要性を、経営に投げかけてきました。その上で、必要以上に資金の内部留保の積み上げに腐心したり、利益を必要以上に自社株買いに回したりして未来投資を怠ることもリスクとなることを、改めて認識すべきだと言えます。

4.事業の複線化の重要性
今回のコロナ禍を通した構造変化では、「不況→景気回復」=「全企業が総じて不調→総じて回復」というこれまでのサイクルとは性質の違いが指摘されています。「K字回復」や「K字経済」と言われているように、好不調の業種・会社が明確に分かれているということです。

三密・移動・不急といった要素が強い商品・サービスは、苦しい局面が続いています。一方で、そうした要素が少ない商品・サービスの需要は伸びています。以前は、「多角化経営は経営資源の投入先が分散するため、収益性の観点から非効率だ」と指摘されることもありましたが、今となっては特定の事業のみに収益源を頼ることはリスクが高い環境になったと言えるでしょう。複数の事業で収益源を確保することの意義と安全性を再評価すべきだと思います。

また、事業の多角化までは取り組めない会社でも、自社事業の市場をセグメント化してとらえて、複数のセグメント(区分・区切り)で収益源を確保する「複線化」は可能でしょう。A社の例では、英会話サービスという事業の本質は同じながら、教室事業と教育機関向け事業とで複数のセグメントで価値を提供しようする試みだと言うことができます。参考になる企業も多いのではないでしょうか。

<まとめ>
改めて、コロナ禍はパラダイムシフトをもたらしたと認識すべきである。


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