精緻な社員評価が後押しする最高益
10月29日の日経新聞で、「キーエンス最高益 「精緻な社員評価」強み 成果と行動、公平性を重視」というタイトルの記事が掲載されました。卓越したビジネスモデル、収益性、上場企業でトップを争う水準の給与などで話題になる同社について、人事評価の観点から考察している内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
(内情は存じ上げず記事内容だけによる印象ですが)概観してみて、事業戦略だけではなく、人事戦略とそれに基づいた人事評価の取り組みがしっかりなされている、それがあっての高収益、という印象を受けます。
成果にこだわっている会社というイメージから、財務的な業績部分しか評価対象にしないのでは?という勝手な偏見をもつと実態とはまったく違ってしまうようで、成果を生むためのプロセスや組織活動なども評価対象としていることが伺えます(成果にこだわった結果そうなっているのかもしれません)。
転職された方に「前の会社ではどのような評価制度でしたか?」とお聞きしても、「何かあったはずだけど忘れた」というような回答が多いものです。(記事中のOBのコメントが、全OB数のうちどれぐらいの割合で得られることなのか存じませんが)記事中のコメントが得られることからして、納得感が高くパフォーマンスを上げるうえで機能する制度になっているのだろうと、推察されます。
同記事から感じたことを2点まとめてみます。ひとつは、評価に魔法はないということです。
私たちが仕事(に限らず)で成果を上げる流れは、「考え方・意欲・能力→行動→成果」で表すことができます。行動しない限り成果は上がりません。また、やみくもに行動しさえすればよいというわけではなく、適切な考え方をもち、高い意欲で知識・スキルを身につけながら行動することで、成果につながる行動となります。ひたすら知識を身につけても行動しなければ何にもなりません。
上記のどれをどのようなウェイトで対象とするのかを決めて、評価項目や評価ルールを決めるのが、評価制度の設計です。
上記はどれも大切ですので、王道としては満遍なく評価対象とすることです。そのうえで、「うちは成果主義だから成果のみを対象にする」「うちは技術屋集団として評価は能力要素に重点を置く」などの判断が出てきます。
(さらなる細かい要素分解や別のまとめ方はあると思いますが)基本的に上記以外の方法はありません。キーエンスの例だと、成果6割、行動4割ということでしょう。(考え方・意欲・能力なども評価対象にしているのかもしれませんが)
「この方法なら評価問題は一気に解決」のような魔法はない前提で、上記のどの部分(何)をなぜ評価対象としたいのかを考えていくことが必要です。
もうひとつは、評価項目・指標など評価のルール(どのように)を、置かれた環境や人に合わせて調整するということです。キーエンスの例も、一律の評価項目・指標を全員に当てはめているのではなく、場所によって、担当している業務によって、適切であろうと考える評価項目・指標に変えているのが分かります。
「今のうちの部署は、こういう環境で、求められている組織の成果はこれで、その中であなたに今期期待されている成果・行動はこれで、だからこの指標で評価するのが妥当で・・」といったことを評価する側・される側が理解を深めながらすりあわせしていくのが、本来の目標管理なのだと思います。
これと逆でありがちなのは、一律のフォームやルールに沿って運用しようとした結果、無理やりな目標設定になってしまって納得感のないものになってしまう、などです。
考えられた設計・運用によって、評価に納得感をもたせながらパフォーマンスを後押しする。そのような評価制度の好例ではないかと、同記事から感じた次第です。
<まとめ>
何をなぜどのように評価するのかを、環境に応じて考える。
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