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取り組み課題の絞り込み

12月11日の日経新聞で、「日鉄、50年に排出ゼロ 水素利用や電炉導入」という記事が掲載されました。
同記事の一部を抜粋してみます。

~~日本製鉄は2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする方針を決めた。20年度中に作成する長期の環境経営計画に盛り込む。二酸化炭素(CO2)の排出を大幅に抑えることのできる水素製鉄法(総合2面きょうのことば)の導入を目指すほか、排出ガスの少ない電炉の活用を広げる。鉄鋼は製造業でCO2排出量が最も多い。最大手の日鉄が実質ゼロとする初の削減時期の設定に踏み切ることで、国内企業の脱炭素の取り組みに弾みがつきそうだ。

国立環境研究所によると、国内における19年度のCO2排出量(速報値)の10億3千万トンのうち、製造業は3億6400万トンを占めた。鉄鋼業は最も排出が多く、1億5500万トンを出し、日鉄は19年度のCO2排出量は9400万トンと国内企業で最大級だ。
これまで日鉄は温暖化ガスを実質ゼロに削減する時期を定めていなかった。
このほど日本経済新聞の取材で、日鉄の橋本英二社長は「政府が掲げる50年のゼロ目標に合わせて、鉄をつくる過程で発生しているCO2ゼロを目指す」と述べた。50年の実質ゼロに向けた目標を初めて設定し、削減の具体策を検討していく方針も明らかにした。

日鉄はJFEスチールなど鉄鋼大手や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で水素製鉄の実証プラントを稼働中。30年までに鉄を溶かす工程で出るCO2排出量を3割減らす技術の実用化を進める。

石炭を使用せず電気で鉄スクラップを溶かす電炉活用も進める。橋本氏は「安価に水素を調達できるインフラ整備など、国や業界を超えて総力を挙げた取り組みが必要になる」とし、民間の研究開発を支援する取り組みの必要性を強調した。~~

改めて注目すべきが、国内のCO2排出量における日本製鉄の割合の大きさです。国内計10億3千万トンに対し同社が9400万トンということですので、同社1社だけで実に1/10近くを占めることになります。つまりは、(他の条件が変わらなければ)同社がCO2排出をゼロにすれば、国内の排出量を1割程度削減できるというわけです。これは巨額の数値と言えるでしょう。記事の通り、官とも総力を結集し取り組む価値が十分にありそうです。

普段様々な企業の経営計画や事業計画を一緒に考える機会があります。その中には、問題や課題のテーマに対して、秀逸に考えられ的を射たものもあれば、そうでないものもあります。例えば、「取り組み自体は有意義だが、それをやることでどの程度問題解決に貢献できるのか?」の視点が欠けている場合があるわけです。

いくつかの取り組み課題が出てきた場合には、対応するべきターゲットを絞ることが重要です。中小企業は特に、経営資源が限られています。多くの課題に同時に取り組めれば理想ですが、なかなかそうはいきません。よって、基本は「マルチイシューではなく、シングルイシュー」です。可能な限り取り組み課題のターゲットを絞り込み、いかに「今期はとにかくこれだけ」にできるかです。

取り組み課題の絞り込みにあたっては、評価軸でレーティングすることを提案する場合もあります。例えば、下記のような軸の設定です。下記の結果、合計スコアが高い取り組み課題に絞り込むわけです。

企業目的との合致:その取り組みは、ミッション・ビジョン・理念などと整合しているか。
効果:その取り組みによって実際に見込まれる効果の大きさはどの程度か。
費用:その取り組みにかかる費用(ヒト・モノ・カネ・時間)はどれぐらいで済むか。
立場:その取り組みに自分たちが直接的に関与し影響を与えられる度合いはどの程度か。

冒頭の記事の例は、「効果」の観点からも、国の機関が優先的に関与・取り組む意義が大きいプロジェクトということができます。これが、国内のCO2排出量における日本製鉄の割合が微々たるものであれば、話も変わってくるでしょう(特定企業に国が特別に介在することの是非などは別の問題で、ここでは考え方として)。

経営計画や事業計画で「重点課題」と謳っていることの中で、効果あるいは上記その他の要素でスコアの低いと思われるものを目にすることがあります。そして、この考え方は、組織活動だけでなく、個人の活動にも当てはまるでしょう。

自組織や自身の普段の行動目標の中で重点課題としているものについて、本質的に重要なものであるのかを振り返ってみることも大切だと思います。

<まとめ>
取り組み課題は、評価軸を作ったうえで評価して絞り込む。


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