1on1ミーティングにおいての誤解(2)
前回は、BizHint記事を参照しながら、部下と上司が1対1で行う定期的な対話や面談、いわゆる「1on1ミーティング(以下、1on1)」に関する誤解について考えました。「誤解1:コミュニケーションがとれたら、1on1は大成功」「誤解2:1on1は数ヶ月に1回でもいい」に関連し、1on1がどうなったら成功というのか、どれぐらいの頻度で行うとよいのかは、目的の設定と相手の状況次第だろうとしました。
引き続き、BizHint記事による3つ目と4つ目の誤解について取り上げてみます。
誤解3:1on1を行えば、部下の本音を引き出せる
同記事でエール株式会社 櫻井代表は、「聞く」と「聴く」について、たいへん示唆的な定義をしています。(以下、一部抜粋)
管理職向けの研修等で、部下や他者の話に耳を傾けて丁寧に聴く「傾聴」の大切さとそのやり方について、よく取り上げられます。相手の話を待って受け止めるきき方で、カウンセリング的・コーチング的なきき方と例えてもよいかもしれません。
一方で、Judgementしながらきく、攻めのきき方も必要だというわけです。自由に出てくる話を待って受け止めるきき方だけでは不足となりえる理由は、大きく2つ挙げられると考えます。ひとつは、話題にしたいテーマについて相手が十分な成熟レベルに達していない場合は、本人発で必要なことを思いついて話せる状態にならないことです。
このことについて、櫻井氏は次のようなたとえで説明しています。
私たちは、知識や情報を持ち合わせていないことについて、取り出して話題にすることはできません。前回、SL理論(Situational Leadership=状況対応型リーダーシップ)という考え方を取り上げました。同理論では、部下が「能力低+意欲・自信高」という第1ステップの状態であれば、上司の有効な関わり方は「指示中心型(高指示+低支援)」になるということでした。
この段階で、「あなたはこの仕事でどうなりたいですか?どうしたいですか?」と自発性を引き出すような形の質問で問われても、その業務に関してその問いに答えるだけの知識・情報がないために、困ってしまうはずです。ですので、指導者の側としては指示命令に徹するか、上記で言うところの聞く(聴くではなく)、すなわち指導者側がJudgementしながらきくことで、しかるべき場所に導いてあげることが必要なのだと考えます。
このことは、若手社員だけでなく、ベテラン社員にも当てはまることです。ベテラン社員は、今までやってきた領域の仕事や、直接はやったことないが隣で垣間見てきた経験があり、それを活かして対応できることが多いはずです。一方で、ベテラン社員であっても自らがまったく見たことも経験したこともない新しい仕事もあるはずです。そうした仕事については、若手社員同様に上司に対して聞くべきことが自分では思いつかず、聞けていないという可能性が出てきます。
しかしながら、上司としては「社会人経験も豊富なのだから、何かあれば自分から言ってくるだろう」とそうした本人にとっての新領域についても、放置しがちになります。その意味では、むしろベテラン社員に対してのほうが、意識したほうがよい視点なのかもしれません。
もうひとつは、部下の性格的な面やコンディションの面で、「積極的に話すのは気が引ける」という可能性があることです。何かに行き詰まっている状況の人は、1on1の場でも本人発であまり話してはこないかもしれません。
あるいは、周りが見たら問題がたくさんあるものの本人はその問題を自覚していない状況の人は、「何も問題ありません」として本来この場で取り上げると有益な気づきとなるテーマを話題にしない可能性もあります。他にも例えば、上記ベテラン社員のような状況下であっても、本人の側にもベテランとしてのプライドがあり、「気づいていたとしても聞きにくい」という心理状態になるかもしれません。
1on1は基本的に部下のための時間(1on1の目的に適った面談になっている前提で)と認識すべきものですので、「with Judgementの聞く」の乱用は本来の趣旨に合わなくなる可能性があります。そのうえで、上司の側による多様な聞き方が呼び水となって、望ましい展開につながるのであれば、積極的に使っていくことも必要だと考えます。
続きは、次回以降取り上げてみます。
<まとめ>
「聴く」と「聞く」を相手やその場を取り巻く状況に応じて、バランスよく併用していく。
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