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1on1ミーティングにおいての誤解

3月9日(木)に「あなたの1on1が劇的に変わる。知るべき「4つの誤解と解消法」とは」というタイトルのBizHint記事が掲載されました。部下と上司が1対1で行う定期的な対話や面談、いわゆる「1on1ミーティング(以下、1on1)」を実施する企業が増えています。BizHintで実施されたアンケート調査の結果も踏まえながら、その1on1に関する「4つの誤解」について説明されていて、たいへん示唆的な内容になっています。

同記事で紹介されている、4つの誤解を順に見ていきます。

・誤解1:コミュニケーションがとれたら、1on1は大成功

成功かどうかを判定するには、何の目的でどうなったら成功と言えるのか、「成功」の定義が必要です。同記事では次のように説明されています。(一部抜粋)

目的、つまり「起こしたい変化」は複数あると思います。例えば、最近よく言われるのが「自律性を高めたい」「ワークエンゲージメントの向上」など。であれば、目的を達成するために、1on1にどのような「機能」を持たせたいのかを言語化することが重要です。機能は、主に5つあるといわれています。「情報共有」「問題解決」「経験学習」「関係構築」「動機づけ」です。

5つのどれが、最終目的(起こしたい変化)につながる1on1の目的(1on1の機能)となり得るのかは、状況と設定次第だと考えます。

ある部下に対しては、これら5つすべてについて、体系的・計画的な場を設定することで上司が介入し、支援することがよいかもしれません。一方で、別の部下に対しては、これら5つすべてについて新たな場を設定する必要がないかもしれません。

「コミュニケーションがとれたら、1on1は大成功」の「大成功」かどうかは、「コミュニケーション」が、どんな意味合いを持つかによります。そのコミュニケーションというのが、近況を話しただけであれば、「情報共有」は網羅できていても、他の4つは網羅できていないかもしれません。その1on1の目的が「情報共有」だけであれば、成功と言うことができます。

一方で、例えば「情報共有は普段からいろいろな機会に上司と話すことでできている。計画的に1on1を設定するこの時間は、自分の行動の振り返りから具体的な気付きを得て、成長を早める機会としたい」と部下が考えているとしたら、場の目的としては「経験学習」を求めていると言えます。だとすると、近況の共有だけでは、その1on1は成功していないと言うことになるわけです。

目的の明確化、成功かどうかを決めるのは部下であること、この2点がポイントになってきそうです。この場で何を目的にしたいのか、そのために上司にどうかかわってほしいのか、ということ自体のコミュニケーションを、まずとる必要があるとも言えそうです。

この観点は、コーチングに通じることがあります。コーチングでは一般的に、そのセッションの時間をどのように使って、どんな状態になるまでを目指したいのかを、冒頭で確認することを行います。そのイメージではないでしょうか。

誤解2:1on1は数ヶ月に1回でもいい

普段経営者やマネジメント層とお話していると、頻度に関する質問を時々受けます。「1on1はどれぐらいの頻度で行うとよいのか」「一般的にはどれぐらいの頻度で行っているものなのか」といった具合です。この問いに対する決まった正解はありませんが、改めてそのことを示唆してくれています。要は、目的次第ということです。

例えば、まだよく知らない者同士の「関係構築」を目的にするのであれば、週1回などの高頻度で行うのがよさそうです。一方で、入社以来よく知る者同士の「関係構築」は、あまり頻度は必要ないでしょうし、そもそも目的にする必要もないかもしれません。何かのテーマの「問題解決」を短期間で行いたいなら週1回で行い、重要だが緊急性が低く重いテーマの「問題解決」をじっくり考えるなら月1回がいいのかもしれません。

これら2つの誤解を見て思い出すのが、「状況対応型リーダーシップ」の考え方です。

リーダーシップ理論の中に、SL理論(Situational Leadership=状況対応型リーダーシップ)という考え方があります。任せた業務に関する部下の成熟度に合わせて、上司の関与の仕方を調整しようという考え方です。SL理論によると、部下の成熟度に対する有効な上司の関与の仕方は、下記のようになります。

<部下>           <上司>
1.能力低+意欲・自信高    指示中心型(高指示+低支援)
2.能力低+意欲・自信低下   指示・支援型(高指示+高支援)
3.能力高+意欲・自信不安定  支援中心型(低指示+高支援)
4.能力高+意欲・自信高    委任型(低指示+低支援)

おそらく2.の場合が、最も高頻度で部下にコミュニケーションをとろうとすることになるでしょう。4.の場合は、低頻度のコミュニケーションとなるでしょう。どのような頻度で関わるとよいかは、置かれた状況によって変わるというわけです。

やり方によっては、会社側がそうしたい趣旨を明らかにしたうえで「月2回以上の1on1実施を推奨」など、一律にルールを決めて運用するのもありかもしれません。しかし、そもそも全員同じルールを適用する必要があるのかを、改めて考えてみてもよいと思います。

実際に、そうした一律ルールで運用されている会社で、同じ上司のもとにいる別々の部下で、異なる印象になっている話を聞くことがあります。ある人にとってはとてもいいミーティングになっていると言い、別の人にとってはそうでもない、という具合です。一律の運用ルールにする必要もないのだと思います。

例えば、1on1自体は社をあげて全員行なうこととするが、何を目的にしたいかは部下によって変えてもよい、目的は全社共通とするが頻度は部下の状況に合わせて変えてよい、といったイメージです。

続きは、次回以降考えてみます。

<本日の一言>
1on1がどうなったら成功というのか、どれぐらいの頻度で行うとよいのかは、目的の設定と相手の状況次第。

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