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学生の生活費の現状を考える(2)

前回は、8月18日の日経新聞記事「学生、自給自足の「推し活」 バイト代、30年で1.5倍 仕送り減でも購買力」を参考に、学生の生活費の現状について考えました。

同記事の範囲内から想定してみたこと3つのうちひとつは、是々非々で買うものを選別する消費スタイルが今後さらに強まっていくのではないかと、いうことでした。

2つ目は、ひとつ目にも関連しますが、今後さらに消費が「マス」から「個」へ向かうのではないかということです。

同記事では、アーティストのライブを楽しむ学生の例を挙げながら、優先させる支出として、音楽フェスなどの「参加型イベント」を選ぶ人が10代後半、20代で増えているという消費者庁の調査結果を紹介していました。こうした参加型イベントや推し活は、1人で楽しむか、同じ趣味を持つ少数の仲間と楽しむという形態が多いと想定されます。

大局的なのが、同記事で紹介のあった、みんなが行こうとするスキー場に自分も行く、みんなが欲しがるようなタイプの車を自分も欲しがるなどの、マス的な消費です。以前に比べて減っているという指摘でした。「他の人も買うから自分も買う」「大勢の人と一緒に行動する」よりも、「個人的に買いたいものを買う」「1人か、目的を共有できる少数で行動を共にする」というところかもしれません。周りに左右されず、自分に合ったお金や時間の使い方を、自分目線で追求していこうということです。

ただし、スキー場や車が求められないというわけでもないと思います。「これは」と感じるメッセージを受け取り、自分に刺さる何かを見出せれば、どんなものでもそれを求めたい人がいるはずです。そのうえで、「1種類のメッセージさえ発しておけば、多くの人が食いつく」といった大衆消費的なアプローチは、ますます通用しにくくなるのだろうと思います。

例えばマイナビニュースのサイトで紹介されていた、2023年3月のBIGLOBE調べの結果が目にとまりました。「上司との飲み会にできるだけ行きたいか」という質問について、20から24歳のZ世代の回答の4割が「上司との飲み会はできるだけ行きたい」(「あてはまる」「ややあてはまる」の合計)だったそうです。この割合は、25から29歳では約3割、30から60代では約2割となっていて、Z世代が最も「上司との飲み会」を望んでいるという、一般的に言われていることの想像からは意外な結果になっています。

「同僚との飲み会にできるだけ行きたいか」の設問に「行きたい」と答えた回答割合も、30~60代の31.0%に対して、20~24歳は46.4%とやはり高い結果になっていました。

もちろん、年上の世代は子育てや介護をしているなど仕事外の事情も増えやすく(≒飲み会に行く余裕がない)、この結果のみをもってして「年少者ほど上司と飲みたがっている」などと結論付けるのも不適当だとは思います。その一方で、「若者は飲みたがらない」と一括りにするのも的を外すかもしれません。

これは想像ですが、「自分が一緒に飲みたいと思う人とは飲みたい」「自分が楽しそうだと思える場なら飲みたい」「気が乗らない、集まるだけなどのような飲み会は行きたくない」といった志向が、よりはっきりしているのかもしれないと思います。「飲む」ということ自体にニーズはある一方で、「飲み方」は「マス」より「個」が進むなどの変化が想定されるかもしれません。

3つ目は、消費の二極化がさらに進むのではないかということです。

同記事で紹介されていたデータは、平均値です。学生の中でも、ビジネスをしてもっと稼いでいる人もいる。親世代自体も二極化が進み、仕送りが多い人も少ない人も、以前と比べるとばらつきが大きくなっているものと想定されます。(データを調べにいくまではしていませんが)

このことは、当然ながら支出や消費行動にも影響を与えます。商品・サービスの種類にもよりますが、相対的に低額なものや高額なものはより選ばれやすく、中間的な価格帯は選ばれにくくなるかもしれません。

例えば、商品・サービス戦略で中間的な価格帯を目指すのであれば、選ばれるためにこれまで以上のシャープなメッセージや、買い手にとっての便益を明確に打ち出すなどが必要になるかもしれないと考えます。

以上、今後さらに、

・是々非々で買うものを選別する
・消費が「マス」から「個」へ向かう
・消費の二極化が進む

という3つの可能性を想定してみました。未来の消費を担う学生の消費動向は、今後の商品・サービスで選ばれるために必要な視点の参考になるのではないかと思います。

<まとめ>
今後ますます、消費が「マス」から「個」へ向かうかもしれない。

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