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方針と目標との一致の重要性

先日、地域に根差した金融機関で働く若手職員の方とまとまった時間お話する機会がありました。学校を卒業後数年間そちらに勤めているということでした。普段あまりお話する機会のない属性の方ですので、いろいろ興味深く聞いておりました。

その方は、就職活動期からメガバンクは受けず、地域密着の金融機関を選んで受けていたということです。大きな会社相手のダイナミックな取引も魅力的だが、自身は地場の会社経営者や住民の方と密着しながら一歩踏み込んで仕事をするスタイルのほうが、やりがいが感じられそうだからという理由でした。優れた自己分析だと思います。

実際、週に2~3回同じお客様に会いに行くこともよくあるそうです。こうした営業活動は、メガバンクではあまりないのではないかというお話でした。仕事で楽しさを感じられるのはどういう場面か聞いてみたところ、例えばお客様の会社の内部や経営者の生活などに関する踏み込んだ話になり、何らかの関与ができて力になれた時だということでした。自己分析の結果にも一致していてよいと感じました。

他方、仕事や組織の課題について聞いてみたところ、いろいろな答えが返ってきたのですが、私なりにその話の中では大きく2つ感じ取りました。

・組織が目指していることと日々の活動目標との間にギャップがある。
所属している金融機関では、お客様にトータルソリューションを提案・実行できる存在になっていくことを、目指す方向性として掲げているそうです。つまりは、よろず相談窓口として、預金や借入以外の些細なことも含め、「何かあったら○○に聞いてみる」のような存在を目指すということです。そのために、新しい取り組みもいろいろ打ち出していこうというのがスローガンになっているそうです。

妥当で魅力的な方向性だと見受けられますが、日々の活動目標がそれに伴っていないようです。例えば、普段の仕事の中で重視されるのは予算額やその達成状況、目標値(ノルマという言い回しは組織として使わないが実質的にはノルマ)であり、上記の方向性を意識する場面があまりないということでした。評価で純金利マージン(貸付け・運用金利-調達金利)は重視される一方で、例えば手数料収入(例:地場の人同士をマッチングさせることによって発生するものなど)は軽く見られていてあまり評価されない(少なくともそう感じる)というお話でした。

組織の目指す方向性からは、後者も相応に評価されるべきでしょう。これでは、組織が目指す方向性に職員を導くことは難しいでしょう。

・機動力が発揮しきれていない。
お客様に対してフットワーク軽く機動力を発揮し価値提供することが、中小企業として、そして地域に根差した金融機関としては重要なはずですが、なかなかそれも難しいようです。お客様とのやり取りはすべて電話です。メールやSNSなどは使えず、名刺にもメールアドレスの記載はありません。

電話も、基本は支店の固定電話を通じての通話です。差し迫っている場合は携帯電話から発信することもあるそうですが、その場合も非通知設定。お客様に番号を伝えることはないそうです。コミュニケーションをとるのにひと手間かかります。テレワークなどはなく、日々の行動も直行直帰はあり得ないということで、効率性を求める活動という面でも課題がありそうです。外出の際は常にバッグと身体とをチェーンでつないでいるそうで、身の回りの持ち物にも神経を使われています。

商売柄セキュリティー確保は最重要ですので、このあたりのことは一概に否定できるものでもないでしょう。その上で、もっと柔軟に対応できる方法があればよいのだが、なかなか見つからない、というお話でした。

上記の2つは、すぐに解決できる特効薬があるわけでもないでしょう。しかし、大切なのは、「そのような課題があること、解決につながる方法を考えていくことが重要であること」という認識を持ち続けることでしょう。

その方は、そろそろ初めての異動がかかる時期だと思うので、次の支店に行ったらそれぞれの支店の比較もしながら、改善できることに取り組んでいきたいと言われました。このような職員が増えていけば、課題も改善していけるはずだと思います。

<まとめ>
組織が目指していることと日々の活動目標とが一致したメッセージとなっているか、振り返ってみる。


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