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ストレスマネジメントについて考える

先日ある方との対話の中で、「不安をなくすにはどうしたらいいか」という問いかけを受けました。この問いに対する決まったひとつの正解はないだろうと思いますが、私なりの答えは「不安がなくなることはない。不安に対して自分がどうしたいか決めることに集中する」です。

不安がなくならないのは、不安を感じるのが生物の本能のひとつであるためです。

私たちは可能な限り生き延びようとしますので、自身に対して生命の危機を感じさせる存在に敏感になることは、生物として自然な反応のはずです。ですので、物事がうまくいかなければ当然不安になるし、うまくいっても「このままで本当に大丈夫か?」と不安になります。個人差はありますが。

先日、ある企業様でストレスマネジメントをテーマにした研修のご依頼があり、担当いたしました。ストレスのテーマで、皆さんと考えた主なポイントは次の3つです。

1.何がどの程度自分にとってのストレッサーになるかを把握する。
2.そのストレッサーに関する「自分の課題」と「自分以外の課題」とを分ける。
3.「自分の課題」についてやるべきことを決めて取り組む。

1.に関連して、「ストレッサー」と「ストレス反応」を分別して捉えることが大切です。

ストレッサーとは、私たちにストレスを与える何らかの刺激のことを言います。

NIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)が提唱する「職業性ストレスモデル」を参照すると、ストレス反応は次の4つの要因で決まります。

・仕事でのストレッサー要因
・仕事以外でのストレッサー要因
・個人の特徴による要因
・緩衝となる要因

仕事でのストレッサー要因は、仕事の量的な負荷、質的な負荷があります。量的な負荷は作業量の多さなどですし、質的な負荷は難易度の高さなどです。そうした仕事そのもの以外に、上司・同僚等の職場での人間関係や、自分にどれだけ裁量が与えられているかなどの環境設定もストレスを感じる要因となり得ます。粉塵や騒音など物理的な環境もストレッサーになります。

日本版SRRS(社会再適応評価尺度)によると、ストレッサーとなり得る要素のうち、仕事上のものとして次のことが挙げられています。

会社の倒産、会社を変わる、多忙による心身の過労、仕事上のミス、キャリアチェンジ(職種転換)、単身赴任、降格(左遷)、会社の立て直し、会社が吸収合併される、収入の減少、人事異動、労働条件の大きな変化、配置転換、同僚との人間関係、上司とのトラブル、抜擢に伴う配置転換、同僚とのトラブル、顧客との人間関係、仕事のペース・活動の減少、部下とのトラブル、仕事に打ち込む、課員が減る、職場のOA化、同僚の昇進・昇格、仕事のペース・活動の増加、自分の昇進・昇格、職場関係者に仕事の予算がつかない、職場関係者に仕事の予算がつく、課員が増える

そして、上記に加えて、仕事以外のストレッサーも加わります。
仕事以外でのストレッサー要因は、家庭を含めた個人的な人間関係、借金、健康問題などが挙げられます。

そのうえで、同じストレッサー要因でも、ストレッサーにはならない人、ストレッサーになる場合でも受けるストレス反応に程度の差があります。何に対してどの程度ストレッサーだと感じるかが人それぞれだからです。

例えば、難易度の高い仕事を任されたような場合に、「チャレンジングな仕事は張り合いがあるし、苦にならない」としてストレス反応にはほとんどつながらない人もいれば、「プレッシャーを感じてしまう」として相応のストレス反応につながる人もいます。これが、個人の特徴による要因です。

上記で挙げたような要素のうち、

・自分の特徴から、自分にとってどういった要素がストレッサーになりやすいか
・そのストレッサーから、実際に今どれぐらいストレスを感じているか

を自覚する、つまりはストレス反応についての現状把握をすることが、ストレスマネジメントでは大切になってきます。

しかしながら、普段私たちはそのようなストレッサーやストレス反応の大きさの現状に対して無自覚なものです。私の周囲でも(私も含めて)、普段から上記のような視点でストレスに対して自分を俯瞰して見ている人は、なかなかいません。

まずは、自分の特徴と自分を取り巻くストレッサーの現状について把握することを、意識的に行ってみるとよいかもしれません。

続きは、次回以降に取り上げてみます。

<まとめ>
自分の特徴と自分を取り巻くストレッサーの現状を把握する。

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