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賞与データの推移

6月18日の日経新聞に、「中小3割、夏季賞与「増額」」という記事が掲載されました。ちょうど今、複数の企業様で賞与制度の見直しに関わっていますが、全企業の賞与水準の動向は意識するデータになります。
同記事の一部を抜粋してみます。

~~エン・ジャパンが中小企業を対象にした調査によると、2021年度の夏季賞与を支給する企業のうち、28%が前年から「増額予定」とした。新型コロナウイルス禍の長期化に対する懸念が和らいでいる。景況感回復への期待からボーナスを増額する傾向にはずみがついたようだ。

調査は6月1~14日にインターネットで実施。同社の情報サイトを利用する従業員299人以下の企業280社から回答を得た。回答した中小企業の80%が夏季賞与を「支給予定」と回答。うち78%が「2020年と同等以上の金額を支給する」とした。「減額予定」は21%だった。

増額予定の企業の31%が20年夏季賞与から10%以上の増加を見込む。理由(複数回答)は「社員の意欲向上」が67%で最も高く「業績が好調」(59%)、「離職・退職の予防」(23%)と続いた。~~

データを見る時は、「縦」と「横」の視点が大切です。
「縦」の視点とは、当該データの推移を時系列で追うことです。「横」の視点とは、関連する他のデータも合わせて観察し、比較・考察することで仮説立てることです。ここでは、「縦」の視点で考えてみます。

同調査の2020年度分を追ってみようと思いましたが、検索してもありませんでした。2020年度の冬季賞与、2019年度の夏季賞与、それ以前の同調査結果は検索すると見つかるものの、2020年度夏季は出てこないのです。まずこのことから、昨年の今頃は調査どころではない混乱した環境だったのだろうという推察と振り返りができます。

上記記事にある2021年度夏季賞与の詳細と、検索して出てくる2020年度冬季賞与、2019年夏季賞与を比べてみます。

2021年度夏季賞与
・80%が「支給予定」→20%が「支給しない予定」または「わからない」
・28%が前年から「増額予定」
・21%が前年から「減額予定」
・「社員への賞与支給に関して、悩みや課題をお教えください」の問いに対して、「新型コロナウイルスによる業績への影響の長期化」という回答が31%

2020年度冬季賞与
・82%が「支給予定」→18%が「支給しない予定」または「わからない」
・18%が前年から「増額予定」
・42%が前年から「減額予定」
・「社員への賞与支給に関して、悩みや課題をお教えください」の問いに対して、「新型コロナウイルスによる業績への影響の長期化」という回答が44%

2019年夏季賞与
・81%が「支給予定」→19%が「支給しない予定」または「わからない」
・29%が前年から「増額予定」
・10%が前年から「減額予定」

このことから、次のように言えそうです。

・コロナウイルスにより賞与を支給できない企業が、依然として一定数見られる。しかし、その割合は減ってきている。

・増額予定が減額予定を上回ってきている。景気の波が大企業に遅れて来ることになりやすいと言われる中小企業でも、増額予定が上回ってきていることからも、企業全体の業績は徐々に回復しているのではないかと推察される。

・他方、「前年から増額・減額」予定であるため、全体の支給額としては最高額を更新しているわけではない。まだ2019年並みに戻すのが見えた状況程度だろう。

・「支給予定」の企業割合は、ほとんど動いていない。景気後退直前の好景気下にあった2019年夏季でも約2割が支給していない。ちなみに、2017年夏季を見ても支給予定の割合は82%でほぼ同じ。このことから、中小のベンチャー企業を中心に、賞与制度という概念・仕組み自体を採用していない企業も一定割合ありそうだと推察される。

日本企業で長らく、賞与は業績連動で金額が変動するものの、一方で生活給の一部のような扱いにもなっていました。しかし、そうではない企業(年俸制などを含め)が2割近くあるかもしれないわけです。賞与という季節の風物詩自体が、今後どんどん形を変えていくのかもしれません。

<まとめ>
データを「縦」の変化で追うと、見えてくることがいろいろある。


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