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東京ガーデンシアターでの女性用お手洗いの工夫

4月7日放送のテレビ番組「がっちりマンデー」で、住友不動産商業マネジメント株式会社による東京ガーデンシアターでの取り組みが紹介されていました。女性用お手洗いの行列をなくすための工夫です。

その工夫というのは、「男性用お手洗いと女性用お手洗いの壁を可動式にし、当日のイベント内容に合わせて位置を変える」です。

東京ガーデンシアターは、2020年 6月17日にオープンした施設です。公式HPを参照すると、次のように紹介されています。(一部抜粋)

東京の中枢にほど近い、湾岸エリアの一角“有明”。 ここに日本のミュージックシーンを牽引する新たな殿堂が誕生。

先進の舞台機構、上質さを追求した音響、 そして東京屈指の広がりを見せる大空間。
国内はもとより世界のアーティストたちと 8,000人のオーディエンスがひとつになる限りない高揚感がここから生まれる。

さらに、コンサートや各種ショーイベントだけでなく、 国際会議や各種セミナーをはじめ、アワード受賞式や展示会などの あらゆる催事にも対応可能。

「東京ガーデンシアター」は、 世界に誇るエンターテインメントホールとして、かつてない臨場感、経験したことのない感動を人々に提供する。

同番組によると、利用者の7割は女性客だそうです。加えて、男性アイドルの時は利用者のほぼすべてが女性客となるそうです。

このことを踏まえて、当日のイベント内容から女性客比率を予測し、壁を隔てて男性用と女性用に分かれているお手洗いの使用領域を、開場前にスライドして調整するというわけです。男性アイドルの公演日には、お手洗いによっては壁を取っ払って、看板も男性用を外してダブルで女性用看板にし、一角すべてを完全に女性用にするのだそうです。

同番組で映像も見ましたが、確かに女性用お手洗い前にまったく列がありませんでした。可動式の壁を動かしている映像を見て、こんな発想・やり方があったかと、目から鱗が落ちる感じでした。

女性用のお手洗いの混雑については、以前の投稿でテーマにしたことがあります。「女性用お手洗いと男性用お手洗いは、面積が同じ。また、各地の女性用お手洗いで設計者の多くが男性だったために、面積が同じ場合女性用に列ができる結果になるという問題に気がつきにくかったと言われている」「面積の観点からは「平等」であるが、実践の観点からは「公平」ではない」ということを取り上げた内容でした。

東京ガーデンシアターの取り組み例は、実践の観点からの公平を目指したものと言えそうです。

同取り組みからは、2つのことを感じました。ひとつは、物事の推移を予想した上での工夫の余地はいろいろあるということです。

上記の東京ガーデンシアターの施設紹介内容からは、多くのイベントで女性客が多勢になりそうなことが想定できます。そこから、多くの施設でお手洗いの行列問題が起こっているという既存の情報を重ね合わせて、住友不動産商業マネジメントと認識共有したうえで、オープン前に対策に取り組んだことが想像できます。

壁を可動式にするのは、既存の会議室などでも既に見られる工法で、特殊な技術が必要というわけでもないと思います。とはいえ、上記の例はできあがった後から話を聞くとシンプルな仕組みですが、思いつく人がいなかったわけです。お客さまの「顔」と利用シーンを、オープン前の設計段階からお客さま目線で考え抜いたからこその、気づきと工夫に至ったのではないかと想像します。

このことは、自分も取り入れたい視点だと思いました。

もうひとつは、こうした工夫がビジネス機会の拡大にもなるということです。

お手洗いの時間が短縮されることで、飲食やグッズ販売、その他同施設の利用にかけることができる時間が増えます。それによって、ひとりあたり客単価が少しでも変われば、×利用者数×営業日数で、全体では少なくない売上増に貢献することができます。

お客様満足度を高める、提供できることを増やす、そのために工夫できることを考えて取り組む。同様のことは、身の周りにもたくさんあるのではないかと考えます。

<まとめ>
お客さまの「顔」と利用シーンを想定する。


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