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先行指標の変化を見る

先日、賞与の最新動向(第535号)というタイトルで、遅行指標(発生した物事について後追いで説明するデータ)について考えました。
https://note.com/fujimotomasao/n/n862d08a25ecc

今日は、先行指標をテーマに考えてみたいと思います。
7月13日の日経新聞で、「工作機械受注額1~6月、71%増 「コロナ前」超え」という記事が掲載されました。同記事を一部抜粋してみます。

~~日本工作機械工業会(日工会)が12日発表した2021年1~6月の工作機械受注額(速報値)は前年同期比71.2%増の7021億円だった。自動車や半導体で設備投資が膨らんでおり、新型コロナウイルスがまん延する前の19年1~6月(6819億円)を上回った。すでに前週末に安川電機が22年2月期の業績予想を上方修正。需要回復による業績期待から12日は関連企業の株価が高騰した。

1~6月は海外向けが95.1%増の4907億円と拡大した。中国に続き、欧米でも景気対策やワクチン接種加速を追い風に投資が増えた。「中国などでスマートフォンのカメラレンズ向けに超精密加工機の受注が入っている」という。電気自動車(EV)や高速通信規格「5G」など新技術の普及も追い風だ。

6月単月は1321億円と前年同月比96.6%増えた。8カ月連続で前年実績を上回り、単月として18年12月以来、2年半ぶりの高水準だ。内需は91.5%増となり前月比では3カ月ぶりにプラスに転じた。日工会の担当者は「政府のコロナ対応の補助金を背景に中小事業者の投資が増えたとみられる」と説明した。~~

工作機械も含めた機械受注の動き全体は、内閣府が発表する機械受注統計で確認できます。同統計を単月ベースでみると、2018年まではほぼプラスで推移していたのが、2019年1月2月3月で-2.9、-5.5、-2.7と3か月連続マイナスとなっていました。その後プラスマイナスを繰り返し、8月に-14.5と大きなマイナスとなりました。

機械受注は6か月後に実態となって表れる景気の先行指標と言われたりします。経済活動では、機械メーカーが機械を製造して他社に売り、その機械を使って作られたモノが市場に出回って、売買されることになります。市場でたくさん需要がありそうなモノがあれば、そのモノを作る企業に注文が入る、その企業はモノを作るための機械が必要になって機械メーカーに注文する、ということで、経済の流れの最上流に位置するというイメージです。最上流の動きのため、最終商品の流通量増減などこれから起こる経済の動きを先行して表す先行指標という位置づけになるのもうなずけます。

ある企業の管理部長のお話では、景気指標の中でもこの機械受注統計結果を、自社で注目して動きを押さえるべき指標と定義し、結果を社員にも共有していると聞きました。同社様では製造業の生産活動に関連する事業を行っているのですが、同社様への製造の注文量に先行して動くのが、この機械受注統計だからだそうです。このような先行指標の意味・動きを社員間で共有し、先のことを考えながら仕入れや人のやりくりなどの生産活動を組織が一体となって行うのとそうでないのとでは、組織力として大きな差になると思います。

上記の工作機械や機械受注の統計からは、コロナ禍発生前の19年半ばには景気後退を表す先行指標が既に出始めていたことが確認できると言えるでしょう。コロナ禍は、その動きを加速させたに過ぎないかもしれません。逆に、今は先行指標・遅行指標とも強い結果が出ていることから、景気拡大が予想されるということになります(今後のワクチン接種の広がり度合いや、新型株が想定を超えた広がりになるかどうかなどに、大きく影響受けますが)。

身の回りにも様々な先行指標は存在するはずです。そして、先行指標には数値化が可能な定量的なものだけでなく、数値化しきれない定性的なものもあるでしょう。例えば、離職者の多発(離職率増加)は、組織にとって好ましくない変化が起こってしまったことを表す、遅行指標と言えます。先行指標としては、例えば次のようなものが挙げられるかもしれません。

・組織診断サーベイで特定の項目の結果が悪化している
・飲み会での話題の割合で、上司や同僚に対する愚痴が増えた
・職場内で交わされる挨拶や会話の数が減った
・メンバーが全体的に、以前に比べて張り切って仕事をしているように見えない

職場にとって重視する先行指標を定義しておき、アラートが出たら現状確認・取り組むべき課題を設定して改善を図る。こうしたことを行えば、以降の状況の悪化を緩和できることにもつながります。

この考え方は、個人にも応用可能でしょう。
例えば私の場合、ストレングスファインダーというツールによる分析の結果「内省」という資質が上位に出ます。この結果はとてもうなずけるものです。私にとっては、物事をじっくり考えることができる、一人になれる時間が、自分のコンディションと生産性を維持するために人一倍重要だと感じている自覚があります。平日でも土日でもよくて、対応が必要な企画や宿題を進めながら、自分の考え、現状を整理して当面のやるべき仕事などを改めて煮詰める時間を必要としているわけです(性格の一部と言ってもよいものでしょうから、こういう時間はそれほど必要ないという人もいると思います)。

その私なりの、自分のコンディションに関する遅行指標と先行指標のひとつの例が、以下です。

遅行指標:家の中や一人でいる時に大声をあげる。
→私は感情的に安定しているほうだとよく言われ、自分でも割とその自覚もあり、人前で大声をあげるようなことはほとんどないと思います。ただし、家の中や、外でも周りに誰もいない時は別です。大声をあげてしまう瞬間があったら、既に疲労や、考えるべきこと・引き受けたことが多すぎて混乱してしまっている状態が多いです。

先行指標:向こう2週間のスケジュール帳の中で、半日以上連続して一人になれる時間がない
→上記になってからでは遅いのですが、当面のスケジュールが詰まりすぎているというのが、コンディション悪化を予知する先行指標としてあります。内省して自分を整える時間がとれないことの予告だからです。この状態が続くと高い確率でコンディションが悪化してしまうため、スケジュールの入れ方を調整するということをしています(常にうまく調整できるわけではありませんが)。

完全に私の経験則になりますが、上記をするのとしないのとでは、コンディションづくりと生産性を高める上で、大きな差が出ると感じています。

組織活動や個人の活動にとって、拠り所にするべき先行指標を決めて行動に反映させることは、よい状態をつくる上での有力な処方箋になると思います。

<まとめ>
見るべき先行指標を定義し、結果を行動に反映させる。

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